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異世界の地、七光りの冒険  作者: 三笠 珠
初めての冒険編
13/69

12.ゴブリン退治3

 怜央よりも一回り、いや、二回りも大きい変異体ゴブリンは、ターゲットを目の前の怜央に絞る。

それを察した怜央はジリジリと横に動き絶妙な間合いを保つ。

しかしここは木々が生い茂る森の中。

そうそう動き回れることもなく、怜央はついに木と接触し、追い込まれてしまう。


 怜央は細く息を吐き、ピッタリと木に背中を付けた。

それを見た変異体ゴブリンは観念したと感じたのか、両手の剣を大きく持ち上げ、カミキリムシの様に勢いよく切りつける。

その破壊力は凄まじく、巻き上げた砂埃で辺りが見えなくなる程だった。


「怜央!」

「地味男!」


 パーティーメンバーの死を覚悟した2人は喉が張り裂ける勢いで叫んだ。

砂埃が晴れてくるとその凄惨な死体が顕になる。

そう覚悟していた2人は別の意味で驚くことになる。


「「!?」」


 そこには抉れた木と、無傷の怜央そして、折れた剣を持つ変異体ゴブリンの姿があった。

変異体ゴブリンは何が起きたか理解できないという様子で、ただ呆然と手元の剣を眺めていた。

 そしてその瞬間をチャンスと捉えた一同は一斉に攻撃を加える。


「今だ!」


 コバートの合図を皮切りに集中攻撃を受ける変異体ゴブリンは、先程の様に剣で捌くこともできないため、両手で顔や体を守っていた。

最終的にやけになったのか、全力でのタックルを敢行する変異体ゴブリン。


 その様はまるで重戦車。

その速さで動けるのかというくらい俊敏な動きで捨て身の一撃を繰り出した。

 そしてそれを真っ向から受けたのはテミス。


 テミスは突如として目の前に現れた暗い異空間の中に手を突っ込むと、『Benelli M4(ベネリ) Super 90』というショットガンを取り出した。


 流れるような無駄のない動作で伸縮式ショルダーストックを伸ばすと、変異体ゴブリンに狙いを定める。


 テミスの構える武器の恐ろしさを知っていたのなら、普通は逃げたであろう。

それでも変異体ゴブリンが逃げなかったのは奢りか、或いは誇りからか。

どちらにせよその判断が間違いだったということは、すぐに気付くことになる。


 テミスは変異体ゴブリンをギリギリまで近づけると、情け容赦のない7連射を決める。

全弾スラッグという圧倒的火力を脅威的な速度で。

変異体ゴブリンの腕は1発、また1発と受ける度に肉が弾け飛び、4発も喰らえばもはや腕など無くなっていた。

残りの3発は無防備になった顔面へと打ち込まれる。


それはオーバーキルも甚だしかったが、この場にいる誰もがそんなこと気にしなかった。

変異体ゴブリンは即死。

それでも慣性で、テミスの横に滑り込むように崩れ、倒れた。


「やった……!」


 アリータの口から思わず喜びの言葉が漏れた。

それはコバート・怜央にも伝染し、2人も雄叫びを上げて歓喜する。


「うおおおおおお! やったぜテミス嬢!やったああああ!」

「っしゃあああああ!」

「これくらいで喜んでどうするのよ。あっ、そうだ怜央。貴方弱いから()()あげるわ」


 そう言うと手に持ったベネリを雑に投げ渡す。


「うおっとと。いやありがたいけど……弱いってそんな……」


 歯に衣着せぬテミスの物言いに、怜央は間違っていないとわかりながらももやもやした。


「いいじゃねえか。貰える物は貰っとけよ!」

「……じゃあありがたく」

「しかし、思った以上に汚れたわね。さっさと帰ってお風呂にでも入りたいわ」


 アリータは服の汚れを払いながら帰還を促す。


「怜央にも色々聞きたいところだが……落ち着いた所での方がいいか」

「決まりね」


 皆がスマホで帰還の手続きを行うと、先程この世界に来た時よりも簡単に、瞬時に元の世界へと帰ることが出来た。

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