魔法界からの使者
あたし、大野麻衣には壮大な夢がある。
絶対、ぜーーーったいなりたい夢がある。
なんだと思う?
それはね。
魔法少女になる事!!!
幼稚園の頃に見た魔法少女アニメ。
ステッキひとつでいろんな事ができる、空だって飛べる。そんな魔法少女に憧れた。
その主人公と同じ年齢になれば自然と魔法界から使者がやってきてあたしに力をくれる。
ずっとずっと信じてきた。
小学生5年生にもなり周りはアイドルや恋バナやスポーツの話で誰も小さい頃夢中になった魔法少女アニメの話なんかしない。
先生も『将来の夢』の作文に書いた魔法少女の話を見て失笑してた。
さらにそれをクラスメイトにみられて、みんな、みんな笑ってた。
それでもあたしは魔法少女を諦めなかった。
絶対叶うって信じていた。
そして今日。11歳の誕生日がきた。
もうそろそろ魔法少女にしてくれる使者がきてくれてもいいんじゃない?
学校の友達から祝ってもらった昼間。家族からお祝いとプレゼントを貰った夜。
そして0時を迎えようとしている今。
(もう!はやくしないとお誕生日終わっちゃうじゃん!!!)
魔法少女になれれば。
最高の誕生日になるのに。
でも・・・。
ほんとうはわかってる。
魔法少女は架空で、なれないってこと。
でもどうしても諦められない。
あのアニメの主人公の子が11歳の誕生日を迎えた夜に魔法界からの使者がきたように。
あたしにも来るんじゃないかって。
(おねがいします・・・かみさま!!!)
でも、そんな都合のいい事なんてあるはず・・・
そう思いながらぎゅっと拳を握った時だった。
部屋の窓ガラスが勝手にカタカタ音をたてながら開いた。
まっくらで、しかも2階の窓なのに
開いた窓から見えたその子は光って浮いていた。
ポカン。あたしの開いた口は塞がらない。
そんな様子をまじまじとみながらその子はゆっくり口を動かした。
「おい、あほ面さみーから中に入れろ」
・・・夢にまで願った魔法界からの使者は口が悪い男の子だったのだ。