プロローグ
時は100年前に遡る。
突如として世界に異世界の「扉」が出現した。
扉より現れたのは人類や建物などに危害を加えようとする化物の群団であった。
いつしか化物たちは、『魔物』と呼ばれるようになる。
人類の抵抗は虚しく、奴等には歯が立たなかった。
あわや破滅かという時、全身を武装した七人の集団が『魔物』たちを次々と倒していった。
彼等は自分達のことを『武装機関』と名乗った。
人類は『武装機関』に協力を借り、少数ながらも、全身武装、フルアーマーを使いこなす者が現れ、『魔物』に対抗していた。
扉が生まれた五十年後、全身武装が可能な『心器』を宿す子供達を育成するための学園が創立された。
現在、「心器」を持つ者は、高校に上がると同時に、専門の機関に入らなければならない。
心器とは、心の中に存在する魂の名称であり、心器を核とし、具現化したものが全身武装である。
全身武装にも色々な種類があり、
スピードに特化した「俊敏型」
攻撃に特化した「特攻型」
守りに特化した「守備型」が主である。
しかし稀に、どの型にも当てはまらない「異端型」というのが存在する。
そして、心器はすべての人間に備わっているわけではない。
心器を持つ者は、人類の一割も満たさないと言われている。
そういう事情もあり、今年の春から『帝竜学園』に編入してきたこの男、刀鞘大和は、新しいクラス2年C組のクラスメイトから好奇な目で見られていた。
編入など前例がないため
まあ…それは目立つ。
「半端なく居心地が悪い…」
そんなことを大和は、呟くことしか出来なかった。
クラスメートは、どうやって話を聞こうか迷っているときに、学園に響くチャイムの合図。
そこへやって来たのがスーツを着こなし、威圧的な雰囲気を醸し出す女教師だ。
「今すぐ席に着け!HRを始めるぞ!」
その言葉が効いたのか、皆急いで自分の席に座る。
「(助かった…)」
内心で安堵する。質問攻めは勘弁願いたいものだ。
「貴様らも今年で二年生だ。上級生らしい生活態度を送り、新入生の見本になるよう心掛けてもらいたい」
良いことを言うもんだと、俺の中で先生の評価が上がる。
「貴様らも知っての通り、今年から編入し、我々と学びあう者が一人増える。
刀鞘、自己紹介をしろ」
「……はい…」
これは避けようもないので手短に済まそう。
「今年から編入してきた刀鞘大和です。
えー…これから仲良くしてください」
頭を下げて自分の席に座る。
…え、これで終わり?
早くない?
もっと聞かせてよ~
周りから続けてほしいの声がザワザワと上がる。
正直話すことなんて特にない。
好きな食べ物とか言えば良かったのか?
一人で悶々していると
「静かにしろ!
刀鞘のことが気になるなら
…HRが終わった後にでも聞けばよいだろう!」
シーンとするクラス内。まさに鶴のひとこえだ。
「…よし。それでは配布物を配ったら体育館に集合の後、『心体テスト』を行う」
「心体テスト?」
聞きなれた言葉だがどこかニュアンスが違う。
「転校生もいるので説明するが、心体テストとは心器と体力を能力値を測ることだ」
心器とは『全身武装』を可能とするための器うつわのようなものだ。
つまり心器を測るということは、自分の武装の力を測るとも言い換えられる。
そして、体力とは全身武装を行うために肉体的にも強くなくてはならない。そのためにも、元となる体も測ると言うわけだ。
「この心体テストはこれからの授業のカリキュラムにも影響が出るため、各々が全力で取り組むように」
「「「はい!」」」
皆が声を揃えて返事をする。
やる気は漲ってるようだ
「最後に、貴様らの担任となった酒見千里だ。一年間よろしく頼む。
そして、君達には期待している。
転校生、君にもだ」
「は、はい!」
いきなり呼ばれ驚いてしまった。
「では、これにてHRを終了する!すぐに体育館に移動するからついてこい!」
そして歩くこと三分、意外と近くにあった。
この学園はかなりの大きさで、下手をすると迷ってしまいそうなくらい広いのである。
そして、体育館に入る。
「かなり広いな、サッカーが出来そうだ」
体育館もかなりのデカさであった。
見回すと二百人近くはいるんじゃないかと思うほどの生徒がテストに挑んでいた。
体力のテストは走る、投げるや握力などの身体能力を測るだけのようだ。
心器の方は能力を測るために専用の器具を要するために、体育館の端に見える白いカーテンの内側でやってるのだろう。
「では、まず体力のテストを測ってもらう」