病弱姫
鏡で自身の姿を見たことによって完全に理解した。
私は、ロードという少女に生まれ変わっている。
それも生まれ変わって10年になって漸く気付いた間抜けだ。
いやしかし、今の私にはロードとして過ごした10年間の記憶が無い。
これは転生、と言うべきなのだろうか…
そして不安な事が一つ、このロードという少女は、見るからに、前世の私と対を成している。
先程女性から聞いた情報からするに、今の自身は精々広場の庭を歩く程度で疲労困憊になる、軟弱な肉体らしい。
身体に広がる筋肉痛は、昨日歩いた証だろう。
健気に鏡をロードに向けたまま待っていた女性は、驚嘆の表情をしていた。
「驚きました…」
「何にですか…?」
「ロード様は、鏡がお嫌いなのかと思っておりました」
「私がですか…?何故…?」
女性は一瞬躊躇ったが、ジッと見据えると、観念したのか口を開いた。
「いえ…ご自身の病弱な姿を、見る事がお辛いのかと…」
ロードはそんなに病弱なのか…
私はスポーツや武道など、身体を動かす事が好きだ。
一時期は可愛らしい女の子に憧れた時期もあった。
だがそれと前世にしていた鍛錬は別だ。
鍛錬は、言わば私のルーティーン。
なくてはならないものであり、ロードという正反対の少女になったからといって、無くすわけにはいかないのに…
「私の身体は、もう治らないのですか…」
「!?そんなことはございません!
宮廷医師からは8歳の頃に、体調はこれより回復の兆候があるとお墨付きをいただいております!
事実、お披露目パーティーでは、あの広大な庭園をロード様のご意思で歩いて回ったのですよ!」
「じゃあ、これから頑張れば、人並みに健康になりますか?」
「もちろんです!」
女性はグッと両手でガッツポーズをした。
良かった…そこまで悪くないのか、私の身体は…
遅れがあるとはいえ、まだ10歳だ。
5年も肉体改造もすれば、前世みたいにとはなくとも一般人程度にはなるだろう。
ロードは安心して、これからの毎日を…主に肉体改造の計画を練ることにした。