ぜろ.
むかしむかし、あるところに妖怪たちの住む世界がありました。
妖怪なんていないって?
見えてないだけさ。ほら、すぐ近くに…
ごめんごめん、怖がらせる気はなかったんだ。
話がそれたね。
妖怪たちも、夢を見るんだ。
世界を征服したい、とかじゃなくてね、精神世界の話さ。
君も夢を見るだろう。
さあ、君の見てるものは現実か、夢か。
物語のはじまり、はじまり
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息苦しさを感じて目が覚めた。
私は死んだ。
理由だなんて、たいそれたものはない。
ただきっと、私には合わなかった。
それだけのことだ。
ふと、手首を見やる
例えるならばそう、うねる大蛇のように、
幾度となく傷つけたであろう傷があった。
病んでるだなんて馬鹿馬鹿しい。
生きている証明が欲しかった
ああ、でもこれこそが病んでいるということなのだろうか。
肌に触れる風が冷たくて、私は身震いした。
それにしても、このままここにいては死ぬのではないだろうか。
いや、もう死んでるから良いのか?
しかし、この寒さは本当につらい。
ちらちらと雪も降り始める。
いやまて、冷静になれ私。
普通に考えて、死んだのにおかしい。
なぜ意識があるんだ。
そろりと視界を開けてみる…
と、あたりは一面真っ白だった。
どこだここは。
目の前にあるのは灯りのともった一軒の家。
誰かがいる気配はなさそうだが、不法侵入で捕まるのだろうか
しかし、ここにいて寒い中死ぬのもごめんだ。
わけのわからないところで二度目の死は迎えたくない。
なら、こたえはひとつだろう。
重厚感のある扉をゆっくりと、ゆっくりと開けた。