起動しますか?
書くのに時間がかかりました。戦闘って書くの難しい。
ガキッと俺の手元から鈍い音が響いてくる。左手に持っている刀を見ると、鞘から1mmたりとも抜けていない。
ちょっと待て、抜けないってどういうことよ・・・
何度も走りながらもう一度刀を抜こうと試みるが、一向に抜ける気配はない。その間も走り続けていた俺の前には、猿の背中が迫っている。
このときになって猿が背中側にいる俺に気づき、一瞬こっちに顔を向けた。
俺の睨む目と猿の狂気の目が合った。
―――その瞬間から、俺には巨大な赤毛猿しか見えなくなった。周りの音も風景も女性のことも頭の中からサッパリ消え、周りがスローモーションになったかの如く猿が右腕を上げる動きもゆっくりに見える。猿の太い右腕が、俺を捕らえようと裏拳を振るかのように持ち上がり始めているが、このタイミングなら届く前に俺の方が少し先に到達できる。
刀が抜ければ切れたかも知れない…だが抜けない。
俺は意識を切り替え、走る速度を緩めることをせずむしろ足に力を込めて前へスピードを上げ、右肩を前に出し飛び出す―――
「うらっ!」
俺の全身の力を使って猿に体当たりをぶちかます。
猿は背中に俺の体当たりを受け、木を何本か巻き込みながらボールのように数メートル吹っ飛んだ。猿の重さなどから考えて普段ならありえない威力である。だが俺はこの世界に来てから身体能力が異様にあがっているからだと思う。
しかし計算外だった・・・猿の体毛が思っていたより硬く、体当たりした時はまるで金属の塊に体当たりしたかのように感じた。流石に俺の体の能力が上がっているとはいえ、元は人間の体である。体当たりをかました二の腕当たりから少し血が出る破目となった。
それでも運が良かったほうなのか、痛みが若干ある程度で腕が使えないほどではない。血のドロッとした赤い液体が腕を伝って気持ち悪く、少し気になる程度である。
俺の全力の体当たりで赤毛猿は数メートル飛ばされたにも関わらず、巻き込んで圧し掛かっていた木をどけ何もなかったの如く起き上がってきた。
アレでも殆ど傷なしか・・・どうする?刀が抜ければ何とかなる可能性もでてきたが素手じゃ―――
「あんたバッカじゃないの?そんな何も装備していないとこで体当たりするなんて……体毛が金属のように硬くて武器ですら切りにくい相手なのよ!」
突如横から声をかけられた。俺の頭ではスッカリ忘れていた女性が不服そうな顔で、いつの間にか横に立っていた。
「それにアンタさっき逃げたんじゃないの?何で戻ってきてんのよ!……いやまあ、助かったんだけどね……」
プイっと横向きながら女性は恥ずかしそうに続けて喋ったが、最後のほうは小さくてよく聞こえなかった。
「知ってれば体当たりなんてやってないさ。さらに戻ってきたって言うには、ちょっと違うかな?逃げてたんだけどココに戻されたって言ったほうがいいかな?」
赤毛猿は起き上がったが、また戻ってきた俺を警戒したのかこちらの様子を伺っているようだ。
「戻された?ってことはこの一帯に結界が張られているだわ。」
「結界?」
「そう結界。封域結界ってやつね。右に行ってたはずなのに、いつの間にか左から帰ってくる破目になるっていう結界。ここに迷いこんだ誰かを留まらせるための物よ。」
「んじゃ出れないのか?ここから。」
「結界を維持するための物が何個か置いてあるはずだけど、無理ね。時間がない、来るわよ!」
赤毛猿はこちらに向かって真っ直ぐ突進することを選んだようだ。
俺達は左右に飛び避けたため、赤毛猿を間に挟む形になった。
猿は迷うことなく俺に向き襲い掛かってくる。なぜ俺ばかりを狙うのサッパリ分からんが…
―――見える。右からくる燃える拳、押しつぶそうとする太い腕、口から吐く炎、全て分かる。更に目だけじゃなく、体も俺のイメージ通りに素早く動ける。猿の攻撃をヒラリヒラリと紙一重でかわし、たまに左手に持っている刀を鞘ごと殴りつけ反撃する。
素手だと猿の装甲を打ち抜くのは無理だろうしな。こいつが使えれば、今の俺なら勝てる可能性があるんだが…
チラッと俺の左手に持ったままになっている黒い刀を見た。
猿の攻撃を避けながら、ダメもとで俺は右手でもう一度抜いてみる。
ガキッ
やっぱり抜けない。
無理か…
そう俺が諦めかけたとき―――
「認証完了。起動しますか?」
突如どこからか声が聞こえてきた。
???先ほどの女性は、俺とは離れた位置で背中に無数の氷の杭が浮いており、こちらに向かって手を開き、照準してるいるかのように―――マズイ。左の刀でカウンター気味に反撃し、そのままその場所から離れる。
その直後女性の氷の杭がこちらに向かって襲い掛かってくる。猿は口から炎を吐き1個はかき消したが、とっさに迎撃はそれだけしかできなかったようで、杭の何本かは猿の腕や腹に刺さり、あとの杭は地面へと突き刺さる。
あぶなっ!先ほどの場所から離れたとはいえ、撃つのタイミングが早すぎるよ!狙いも大雑把すぎるよ。3本ほど俺にも刺さりそうになったが、先ほどの見切りのようにギリギリで避け脱出。
これで猿も瀕死か?と思ったが、猿に刺さった氷は一瞬のうちに溶け、刺さっていた場所から緑色の血があふれ出していたが、それもすぐに収まり、腹や右腕に穴は開いているがこのくらいはかすり傷と言うみたいにまたしても起き上がり、今度は女性のほうを睨むが、何を思ったか最後にはまた俺のほうを向く。
はぁ~~タフだな、あの猿。そこまで頑張らなくたっていいと思うのに…
「起動しますか?」
やっぱり聞こえた。
どうもにゃあプーです。読んでくださった方ありがとうございます。ぼちぼち更新していこうと思いますので、よろしくお願いします。
今のところ戦闘ばかりですが、文章が下手なもので、もうちょっとかかる予定です。