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得体の知れない黒い物体

冗談じゃねぇ!なんつー威力だ、あの火炎弾。当たったら確実に死亡コースじゃないか!あつっ!

完全に燃えている木の脇を走って通過しながら、俺と猿の鬼ごっこがまた再開した。


しかし今更ながらあの赤毛の巨大猿のありえなさに気づく。あんな巨大な赤毛猿、誰からも聞いたこともなく、辞典とか映像ですら見たことない。さらに火の玉を放つなんて地球じゃ完全にありえない。

俺はテレポートをしたんじゃなく、白紙って野郎に異世界もしくは違う惑星に連れてこられたんだな。ここ地球じゃないんだな。


時々猿は先程と同じように火の玉を飛ばしてきたが、その都度俺は方向転換をしながら何度も避け続ける。だがそんな鬼ごっこも終わりを迎えていた。

俺は木に根に足をとられ躓き、猿に背後にまで近寄られ、今俺の目の前で猿の燃えている腕が振り下ろされようとしていた。

ネメシスのことも何も分からず、俺の人生はこんな猿に殺されて終わるのか…。スローモーションで振り下ろされる腕を見ながら俺はそう感じていた。


だが突然飛来した何かによって、あたり一面が白く霧になった。飛来した物のおかげか、振り下ろされた腕は俺を外し、霧の中から現れた誰かに襟首を持たれ、いつの間にか俺はひきずられて走っていた。


「何してんのよ!」

霧でよく見えないが、近くから凛とした女性の声が聞こえてくる。返答しようにも襟首を持たれひきずられて動いているので、首が絞まって喋れない。

くっ、苦しいぃ。こんな窒息死なんて嫌だ、死ぬらなさっきの方が幾分かマシだ。


俺の襟首をひっぱてる腕を必死に叩いてアピールすると、相手も気づいたようで霧を抜け少し開けている場所に、俺を放り投げた。変な状態から投げられたため、

「グへッ・・・」

受身などとれず背中から地面に落ちる。


背中いてぇ~

「けほっけほっ、くそっ、何すんだよ、てめぇ。」

「それが助けた恩人への返事なの?まあいいわ。貴方はとっととココから消えなさい!邪魔よ!」

確かにこの女性が助けてくれなかったら、俺は今頃猿によって潰されて殺されていた。それは確実だっただろう。


俺を助けた女性は目は少しつり目のキツイ感じだが顔は整っており、体はスラッとしていて綺麗な人だった。髪は金色のストレートをポニーテールにして身体には銀色の軽装を装備しているし、腰には片手剣、背中に何故か黒い刀を背負ってる。この黒い刀が異様な存在感を醸し出しているので、無ければ凛々しい西洋の女性騎士っぽく見えるのに、なんともちぐはぐというか…調和がとれていないというか…黒い刀が雰囲気をぶち壊してる。


「ちっ、一応言っておく、ありがとう助かった。これであの猿から逃げきれる。」

「ふん、いいわよ。人として当然のことをしただけだわ。それより逃げるなら早くしなさい。さっきの私の労力が無駄になるじゃない。」

この女性の指した方向を振り向くと、先ほどまでの霧は跡形も無く消え、あの赤毛猿がこっちを睨んでいるのが見えた。

このくらい距離が開いていれば、また鬼ごっこになっていずれ逃げれるかも知れないが…今はこの名前も知らない女性がいる。残していくには罪悪感があったが、俺がいても役に立たないし逃げることにする。


俺が背を向けて走りだすと、猿は俺しか見ていないのかこちらに向かって走ってきたが、俺と猿の間に名前の知らない女性が割り込む。俺の背後から金属が何かに数回ぶつかるような音など聞こえたが、俺は前だけ見て全力で走り続けた。


しばらく森の中を一人で走っていると

「どうしたんです?そんなに一生懸命走って。もしかして現実逃避行中ですか?ケケケケ」

走っている俺の左の上空にいつの間にか黒い猫が飛んでいた。

突然の乱入者に俺は足を止め、右に軽くステップし、空中に浮いている猫と距離をあけて観察する。

よく見れば猫じゃないな。空を飛んでいる時点でまず普通の猫ではないし、目が赤い宝石が埋め込まれたように輝いている。さらには尻尾が狐みたいにモフモフとしていて大きいが3本も生えている。

「なんだお前?」

「おっと、気づきませんか。私、黒髪くろかみと申します。白紙と対になる存在でして、こちら側の案内人ですよ。ついでに中身は同一なので黒髪が呼びにくかったら白紙でも構いませんよ。ケケケケ」


白紙…一瞬首絞めてやろうかと思ったが、今更ながら白紙についても殆ど何も知らないし、こっちの知識も何もないのでこいつが言ってることが、真実かどうか判断する材料がない。ので保留。一応本当ことを言ってると思うとするか・・・

「お前もここに来れたのか?いやお前が俺を運んだんだから来れるわな。んで今まで何してたんだよ!こっちは巨大な猿に追われてたんだぞ!」

「貴方はネメシスのこと、知りたかったのではないのですか?あんな猿で驚いていてはこの先思いやられますね。ケケケケ」

「あんな猿って十分非常識な猿だろアレ。」

「でもアナタにあの猿を倒して貰うのが一番早く理解してもらえる方法なので…ほらそこに落ちてる剣を拾ってちゃっちゃと倒しちゃってください。」


白紙が尻尾の1本でさした先を見ると刀が落ちていた。少し距離が開いていたが、森の中でなぜが見つけやすいように刀の周りだけが草1本も生えておらず、土の地面に落ちていたので簡単に見つけられた。

何でこんなとこに都合よく刀が落ちている?

近くに行きよく見れば、柄頭に小さな赤い宝石がついている黒い刀が落ちており、コレは先ほど俺を助けた女性が背中にしていた物である。この刀は女性の雰囲気をぶち壊していて俺の印象に深く残っていた。


「何故こんなことにコレが?」

「ほら来ましたよ、とっとその剣を抜いてあの猿にブスリっと刺しちゃってください。」


何が来たんだよ、遠くのほうから金属の音などが聞こえるから、なんとなく予想ができるが…。そういって目を向けるとそこには先ほど俺を助けた女性と俺に背中を向けている赤毛猿が戦っていた。


んー何かおかしい。俺は猿に対して背中向けてまっすぐ森を走ってかなり距離を稼いだにもかかわらず、それなのに猿と女性は俺の前方からあっさりとやってきた。


それに猿は俺に背を向けてて全く気づく気配がないし、戦っている女性も俺には気づいた様子はない。俺からハッキリ見える位置に女性と猿はいる、つまり相手からもハッキリ見える距離だというのにだ。

さらにしばらく俺がここにたたずんでいるにもかかわらず、全くどちらも気づかない。いくら戦いの最中でもこちら側を向いている女性ぐらいは気づいてもいいだろう。


「どうしたんです?今チャンスですよ?猿は背中を向けて気づいていませんし、剣を拾って真っ直ぐ向かえば、あの背中に簡単に刺せますよ。ホラ早く!ホラホラ」


なんかこの黒猫もどきが出てきてから状況がおかしい。もしこの刀で猿を刺しにいったとしても、その一撃で死ぬとは思えないし、俺は反撃をくらって死亡なんじゃないか?この黒猫もどきは俺を抹殺しようと企んでんじゃないか?


そんなこんな考えている間にキンッと金属特有の高い音が鳴ったと思ったら、女性の剣が猿のよって遠くに飛ばされてしまっていた。俺を助けた女性が命の危機に陥っている。

―――クソッ

なんか誰かのシナリオどおりになる感じもするが、目の前で命の恩人――ついでに女性――が死にそうになっててるのを見ておけねぇ。

地面に落ちている刀を拾って、まだ気づいていない赤毛猿の背中に向かって走る。

間に合え!と心の中で叫びながら刀に手をそえ、抜く―――


ガキッ


えっ・・・


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