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ありすインワンダーランドで守護天使ごっこ

青い空、戦に踏みにじられて赤い大地。うずくまり嘆く人、絶望する人。


雲がたなびき、土煙があがる中、悪の象徴として描かれている大柄の・・・たぶん悪魔(・・・角があるのさー)


・・・その悪魔と対峙している一人の少女が毅然と顔を上げてこちらを見ていた。髪の一筋まで詳細に描きこまれている。


それは、天使と悪魔の黙示録。


青空に映える、紺色の軍服、翻る紺色のチェックのスカート。右手に剣、左手に旗。


紺色の軍服ブレザーにはところどころに金糸銀糸がちりばめられて、ぱっと見、制服だなんてわからない。


実際あたしだって良く見なきゃわかんなかった。


どっかで見たような(毎朝鏡で見てるわぁっ!)平凡な顔立ちの少女が、センター張ってるんだよ、AKBもまっさおだね!


その少女が悪魔を見据えて長剣を突き立てているんだ。


踏みつけられてる(・・・)悪魔は哀れなくらい怯えきった目で黒髪の少女を見上げてる。


見覚えのある顔の少女は、羽はしょってないけど、後光が射していた。


ふるり。


ふる、ふるる。


背中をむずがゆいものが走り抜けていく。だって、後光だよ!? 


なにこれ、なにあれ、ありえねええええええ!!!


「・・・は、ぁぅぅ・・・」

胸の中渦巻く言葉は、がんばっても声にならなかった。


この勘違い天使どもをどうにかしないと・・・主に「あたし」の精神構造がやばいことになる。


あたしのノーマル平坦な日本人顔がかなり美化されていた絵画を見上げた。


「・・・う、あはぁぁ・・・」


・・・良くぞ、ここまで妄想したもんだ。


でも、褒めてなんかやんないぞ!


あたしはあんなに妖艶に笑ったりしないし、何より、制服の胸ボタンがはち切れそうなほど胸盛ってない。


よく見なさいよ、どこにあんなたわわなものが存在するの?


ないとは言わないけど、あんなチョモランマじゃないもん。う、う、う・・・悔しくなんか、ないもん!


・・・それから最後にもぅひとつ。

絵師様は、むっちりした女性がお好みなんだね、胸も腰もぼんきゅっぼんがお好みなんだろうよ。

しかも限定むっちりした腰から尻、太ももにかけての稜線がベストと思っているむっつりに違いない!


だがしかし、それはそれ! 何でさ、何で顔や胸は美化してるのに、足の太さはそのままなんだよ・・・!


真珠の粉をはたいたような色彩の、むき出しの太ももは、ほのかに朱が乗せられていてとてもきれいだったけどさ、どうしてもっと美化修正されてないの? 色塗る前になんかあるだろ、あるはずだろ、ほかに!


それこそ作者権限発揮して、チョモランマ妄想する前に、小鹿のバンビ妄想しろよおおおっ! 




「良く描けてるだろう?」


ニコニコと朗らかなおじいちゃんを恨みがましく見上げた。


「・・・ありす?」


じっとりと辛気臭い顔で見つめてやれば、おっさんが、少し引いた。


「おや? 実にいい出来だと思っていたのだが・・・特に、あの悪魔を踏みつけてる足とか」



すこーんと脳内で小鹿のバンビの後ろ蹴りを食らった気分だった。



・・・・・・・・・・・・元金髪天使、むっつりはあんた達か。




 *********



・・・ええと、話題を変えよう。


全力であの絵は見なかったことにするんだ。そんで、さっさと首輪外して帰るんだ。


わんこが「捨てないで」とばかりに見上げてくるけど、情に絆されてはいけないのよ、ありす!


「えーと、えーと、そ・・・そういえば、おじいちゃん、跡継ぎ沢山いるのに、まだ現役なの?」


玉座にしがみついている様な、権力大好きな俗物には見えないのに。


むしろ足が洗えるなと喜んで王座を明け渡しそうだ。


八十近いのよね? 隠居してもいい頃よね。

孫やひ孫に囲まれて、円満な老後生活。

レッツエンジョイシルバーらいふ!


「・・・実質、国の実権は、このディノッソが握っているよ」

「人聞きの悪い。傀儡だとでも言うつもりですか、」

「ふふ。若い者に任せるのが一番なんだよ。老人は表舞台から去るべきなんだ」

「だが、引きずりおろそうとするやつらが多くてね・・・」

「仕方なく王のままでいるのさ。・・・次期を殺されちゃ叶わんから、指名もしない」


「国璽が、やつらの手にあるんだ。渡せといっても引き下がらなくて。挙句に王位継承順に暗殺されかかった。やつらを炙り出そうと行動しても、臆病なねずみは隣国の神殿の奥深くにもぐりこんで出てこない。・・・しかも出てくるときは狂犬を引き連れて、だ。いい加減いやになるよ」


ほー。ではまだ対立してるんだ? 相当しぶといんだね。


「ああ。王権の譲渡が出来ずに困っていたんだ。・・・でもありすが現れてくれたから、これでいつでも王位継承式ができる」


「・・・・・・ん?」


ニコニコとうれしそうなおじいちゃんとおっさんふたり。


「王家の守護天使が臨席する式なんて、建国以来初めてだろうなあ、ディノッソ」

「そうですねえ」


おじいちゃんと叔父様の傍目で見ればにこにこと和みのひと時。


しかし、あたしは不穏な空気を感じちゃったぞ。何だ、何だ、この悪寒は!


「やつら、王位継承はありえないと思っているだろうから、くく、慌て様が目に浮かぶようだ」

「まったく!」


「王冠と、王錫は手元にあるし・・・天啓を授ける巫女の役に大神官、審議官・・・これだけ揃えば誰も口が出せなくなる」


「「・・・ねえ、ありす。」」


目を合わせて微笑むじーちゃんとおっさんから、あたしは必死で目をそらした。


目を合わせるな!


合わせちゃまずい!


なんか、これ以上かかわっちゃ帰れなくなるぅぅ。


「ありす、父は見てのとおりいつ儚くなっても仕方が無い老人だ。その老人のたっての願いを、どうか受けてやってはくれまいか・・・?」


「・・・ありすに会えた今、私の心残りはこの国の、行く末」


「「父上!」」

「「大叔父上!」」

「「おじいさま!」」


・・・うわ、メロドラマだ。

いつの間にか周りにには、元金髪わんこが勢ぞろい。


さめざめと泣く筋肉だるまだったり(にあわねえ)、眉間にしわ寄せる太マッチョだったり(暑苦しい)、憂いを込めてあたしを見る細マッチョだったり(捨てられる子犬の目・・・ずきずき)、スレンダーな沈黙の筋肉だったり(そー言えば、さっきから一言も話さないわねあんた)。


・・・筋肉しかいないのか、この国ぁっ!


しかも女性だって、スレンダーな体型をキープするために鍛えているのか、ウエストが恐ろしいほど、くびれてる!


そんな中、厳かに行われた、大家族の中心的人物の病床におけるお願いという名の最終兵器!


「ありす、お願いだ・・・守護天使として、王位継承者に祝福を与えてはくれないか?」


・・・ダメージポイント、計り知れず・・・。



おまけ。



・・・いや改めて見返すと実に良く描けとる! 絵師殿に金一封! とくにあの、むっちりした足と腰の絶妙なバランスを良く描ききった!あの時もありすは回し蹴りを敵に食らわせての!惚れ惚れとしたものじゃ!(じじい・・・)


なんの、叔父上!いとこ殿! わたくしの一押しは、ありすの、ほのかに赤く染まった膝蹴りです! あの至福の一撃です! 出来ることなら自分で受けてみたかったあの、膝蹴り! あの時、背後に守られ、見えそうで見えないスカートの絶対領域に、幼心にはあはあしました!(・・・・・・おやじ・・・)


まあ! おじいさまったらずるいですわ! でもでも、わたくしなんか、ありすねえさまと同衾しましたのよ!(きゃっ)とてもいい香りがしましたの・・・(うっとり)・・・あら。

何を睨んでいますの、ディオったら。


(・・・)


ふん、もう少し言葉にしないと、伝わるものも伝わりませんわよ! ま、わたくしが美しいのは当たり前ですから、それ以外の賛辞をお願いしますわね!


(・・・やれやれ)・・・・・・ジン、が。


え、?

おや?

うん?


・・・ジン、がありすを連れて行ったぞ。


そ・・・それを早く言いなさいよおおおっ! おねえさま! ありすねえさまとのうれしはずかし初めてのきゃっは、わたくしのものよ!


小娘ごときに同衾させるとでも!?


・・・じ・・・爺の最後の願い・・・(ごーほごーほ)


なんの!われらの切なる願い!


(・・・その前にその筋肉でアウトだと思う・・・)


ディオ!言いたいことがあるならはっきり言え!


・・・むっつりすけべ。

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