脳は時々嘘をつく
短編です
ある日の休み、中学の頃の友人とばったり出会った。
「わ、久しぶりじゃん!」
「わぁ!元気だった!?」
高校も別々で全然連絡が取れなかったのに、偶然にも町中で出会うなんて、なかなかないことだ。俺も友人も予定が特になかったから、ファミレスにでも行こうと意気投合して、中学生の頃、よく行っていた安いファミレスに足を運んだ。
最近どう過ごしているかとか、彼女が出来たかとか、そんな他愛もない話をしていると、次第に話題は中学生の頃に移って行く。
「あんときの先生の顔!」
「めっちゃびっくりしてたよな!」
「あ、そう言えばさ、覚えてる?夏休みに、夜、学校を回って肝試ししたとき」
「あー!あったあった!あれは俺もビビったよ~!なんせ本物が出てきちゃったんだもんな」
中学の頃、学校主催の肝試し大会があって、夜の学校を二人組で歩いて、決められた場所ごとのスタンプを集めて最後にアイスを貰って帰るというイベントがあったのだが、その時のペアがこいつだった。
下駄箱から始まって、各階のポイントスタンプ台が置いてあって、ソレを押しつつ夜の学校内を散策する。
最後のポイントの、音楽室から出たあとに、俺たちは本物の幽霊を見た。
暗がりの中にぼんやりと立っていた様子があまりに怖くて俺たちは慌てて逃げかえったんだっけ。
「あれ凄かったよな・・・女の幽霊」
「いや、男の幽霊だっただろ」
「は?女だよ!髪長かったじゃん!」
「違うって!髪は長かったけど、おっさんの顔してたよ!」
「ワンピース着てたから絶対女だって!」
「服は覚えてないけどおっさんだったはずだよ!」
途中までは同じ記憶だったはずなのに、俺たちの意見はココだけ急に食い違ってしまった。
「そんなに言うなら、思い出保証センター行こうぜ」
「あぁ、いいよ。俺の記憶は間違いないから!」
俺たちはファミレスを出て、すぐ近くにあった、思い出保証センターに駆け込んだ。
「では、お二人の思い出、お調べいたしますね」
看護師のような恰好をした、美人なお姉さんに言われ、俺たちは頭に装置を付け椅子に座った。
看護師さんが機械を操作すると、頭につけた機械が「ウーン・・・」と唸りだし、俺たちはあの日の記憶を順に思い出していった。
「なるほど、この幽霊を見たあたりが、お二人の記憶だと食い違ってらっしゃるんですね」
お姉さんんはそう言うと、記憶の照合の為に一旦席を外した。
「絶対女だったって」
「いーや、男だったね!幽霊だからって女とは限らない!」
「髪の毛長かったし、ワンピース来てたんだから女に決まってんだろ!?」
言い合いをしていると、お姉さんが戻ってきた。
「お疲れ様でした。一度こちらをご確認ください」
お姉さんにモニターを向けられて、俺たちは競い合うように画面を見つめた。
音楽室から出てきた俺たちが、立ち止まる。目の前には白いふわふわとしたワンピースが映る。次第に顔が見えてきた。髪の毛は確かに長い。俺の記憶が間違っていたのか?
顔がはっきり映ると、その顔は確かにおっさんの顔だった。
「ほらやっぱり!おっさんじゃん!」
「でも髪長いしワンピース着てるじゃん!・・・・ってかこいつ、足あるよな」
「確かに・・・幽霊じゃ・・・ない?」
おっさんは俺たちに気づくと慌てた様子で走って逃げていった。それを見て俺たちも走って担任と他のクラスメイト達が待つ下駄箱に逃げる映像になって、動画は終わった。
「以上が照合された思い出です」
俺たちは顔を見合わせた。
——コレ、校長じゃね?——
校長は引率にいなかったよね・・・。




