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第八話:黒い魔獣との戦い

 黒い瘴気が村の広場を覆った。

 しかし、セイとミーナの周りだけは神々しく光っていた。


「セイちゃんのおかげなの?」


(僕もよく分かってないのでなんとも……。そもそもまだしゃべれないし……。)


 ミーナもセイの潜在能力に気づけず驚きを隠せない。


 そして、ロウは大剣を構えたまま、一歩前へ踏み出す。

 その背中は、いつもの穏やかな父ではなかった。


「……。ミーナ。セイを頼む。」


 短い言葉。

 だが、その声には「覚悟」が宿っていた。


 ミーナは唇を噛みしめ、セイを抱きしめる。


「ロウ……。絶対に、無事で戻ってきて。」


「もちろんだ。俺は父親だからな。」


 ロウは構えていた大剣を大きく天に突き上げ、その瞬間に大剣は双剣へと変わっていた。


 ――シャキン。


 双剣の銀色の刃が、黒い瘴気を切り裂くように輝く。


 黒い魔獣は、ロウを見下ろしながら低く笑った。


「邪魔をするか、人間の戦士よ。その子を差し出せば、痛みは少なくしてやる。」

「ふざけるな。セイは……。俺の息子だ。」


 ロウの声は低く、静かだった。

 だが、その一歩には「殺気」が宿っていた。


「ならば――。死ね。」


 黒い魔獣が飛びかかる。

 地面が砕け、黒い爪がロウの喉元を狙う。


 だが――。


 ロウの姿が、消えた。


「……。っ!?」


 魔獣の目が驚愕に揺れる。


 次の瞬間、背後から声がした。


「遅い!」


 双剣が閃いた。


 ――ギィンッ!!


 黒い瘴気が弾け、魔獣の腕が切り裂かれる。


「ぐっ……! この速さ……。人間の域を超えている……!」


「俺はただの農夫じゃないぞ。」


 ロウは双剣を構え直す。


「おまえが予言とやらで言っていた。暁の風のもととは、俺のことでもある。」

「俺は暁の風の一人、戦士ロウだからだ!」


 その名を聞いた瞬間、魔獣の動きが止まった。


「……。暁の風……!?魔界を退けた五勇星の……。生き残り……!」


「よく知ってるじゃねぇか。」


 ロウの足元の土が、わずかに沈む。


「なら――。覚悟しろ。」


 ロウが地を蹴った。

 その瞬間、空気が爆ぜた。

 双剣が左右から同時に襲いかかる。

 魔獣は瘴気の壁を張るが――。


「甘い!」


 ロウは双剣をクロスさせ、一気に叩き割った。


 ――バキィィン!!


 黒い瘴気が砕け散り、魔獣の胸に深い傷が走る。


「ぐああああああっ!!」


 魔獣が後退しながら叫ぶ。


「なぜだ……!なぜ!時を経ても……。ここまでの力を……!」


「そりゃ、おまえさんが守り神と生きてきたのと同じく、俺にも守りたいものがあるからだ。」

「農夫として、隠れながら生きていたが、鍛錬は積んできたし、固有スキルもある。」

「それが俺の持って生まれし力、守護覚醒のチカラだからな。」

「憑依されてしまったことは悔やむ。」

「だからこそ敬意を表して楽になってもらおう!」


 ロウは息を整えず、さらに踏み込む。


「俺は――。家族を守るためなら、何度でも立つ!」


 双剣が光を帯びる。


 ミーナが息を呑む。


「ロウ……。その技は……!」


「ミーナ、目を閉じてろ!」


 ロウが叫ぶ。


「双閃・暁の黎閃(あかつき れいせん)!!」


 双剣が弧を描き、光の軌跡が黒い魔獣を包み込む。


 ――ズガァァァァン!!


 爆風が広場を揺らし、黒い瘴気が吹き飛んだ。


 煙が晴れたとき――。

 黒い魔獣は片膝をつき、息を荒げていた。


「……。さすが……暁の風……。だが……我らの使命は終わらぬ……。」

「予言の子は……必ず……魔界へ……。」

「させるかよ。」


 ロウが双剣を構え直す。


 だがその瞬間――


 魔獣の目が、再びセイを見た。


「光の子よ……。いずれ……。世界はお前を求め……。そして……。「魔界の鬼王」あのお方を恐れるだろう……。」


 黒い瘴気が渦を巻き、魔獣の身体が崩れ始める。


「待て!!」


 ロウが踏み込むが、間に合わない。


 魔獣は瘴気となって消え去り、 地面には黒く焼け焦げた村の守り神の亡骸だけが残った。


 静寂。


 ロウは双剣を収め、深く息を吐いた。


 ミーナは震える手でセイを抱きしめる。


「ロウ……。セイは……。本当に……。」


「ああ。間違いない」


 ロウはセイを見つめる。


 その目には、恐れでも絶望でもなく――。

 「決意」が宿っていた。


「セイ。お前は……。世界に希望をもたらす『光』だ。」


 幼いセイは、ただ父の瞳を見返すしかなかった。


(俺……。総理大臣になり損ねた、中年で、むっつりでアニメが大好きだがオタクになりきれなかった、中途半端なおっさんなんですけど。)


 だが胸の奥で、確かに何かが応えた。


(……。俺は……。)


 世界の「気配」が、大きく揺れた。


(――俺は、逃げない。)


 こうして、セイの運命は静かに動き始めた。

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