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巫女さんが優しすぎて、受験に集中できない件  作者: 波浪


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6/6

最終話 合格発表、そして約束の再会

合格発表の日は、朝から落ち着かなかった。


 スマホを何度も見て、時計を見て、深呼吸して。

 落ち着こうとすればするほど、心臓の音がうるさくなる。


 ――結果発表、開始。


 画面に表示された受験番号を、指でなぞる。


「……あった」


 一瞬、現実だと理解できなかった。

 もう一度確認して、もう一度見て。


「……受かった」


 声に出した途端、膝が震えた。


 すぐに思い浮かんだ顔があった。

 報告したい人が、ただ一人。


 その日の午後、俺は久しぶりにあの神社へ向かった。


 鳥居をくぐる。

 境内は変わらず静かで、でも、どこか懐かしい匂いがした。


「……澪さん」


 もちろん、返事はない。

 それでも、自然と笑ってしまう。


 拝殿の前で手を合わせ、深く頭を下げる。


「合格しました」


 風が吹き、鈴が鳴った。


 そのとき――


「おめでとう」


 背後から、聞き覚えのある声。


 振り返ると、そこにいた。


 白石澪さん。

 巫女装束ではなく、柔らかな色のコートを着て立っていた。


「……どうして」


「今日は、引き継ぎの用事で来てたの」


 偶然なのか、約束なのか。

 どちらでもよかった。


「よく、頑張ったね」


 そう言って、澪さんは俺の前に立つ。


 俺は、逃げなかった。


「約束、覚えてますか」


「うん」


「受験が終わったら、ちゃんと話すって」


 澪さんは少し驚いてから、静かにうなずいた。


「……好きです」


 言葉は、自然に出た。


「受験中、ずっと。

 優しすぎて、集中できなくて……でも、頑張れました」


 澪さんは、しばらく黙っていた。


 やっぱり、無理だったかもしれない。

 そう思いかけた瞬間。


「私ね」


 澪さんが、ゆっくり口を開く。


「ずっと、言えなかった」


 一歩、距離が縮まる。


「巫女としてじゃなくて、一人の人として……君のことが、好きだった」


 世界が、音を失った。


「だから、距離を引いたの」


 澪さんは少し照れたように笑う。


「卑怯だよね」


「……ずるいです」


 二人で、同時に笑った。


 夕暮れの境内。

 もう“受験生”じゃない俺は、一歩踏み出す。


「これからは」


 澪さんが、優しく続ける。


「逃げなくていいよね」


「はい」


 手が、そっと重なる。

 指先が、確かにあたたかい。


 鈴の音が、祝福みたいに鳴った。


 ――巫女さんが優しすぎて、受験に集中できない件。


 その答えは、もうはっきりしている。


 優しさは、恋になって。

 恋は、未来へ続いていく。


(完)

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