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閑話 パンケーキと、世界の説明書

朝。

今日の我が家は

――焦げパンケーキと、悪魔の紅茶の香りがした。


「ルキくん、ちょっと焼きすぎちゃったかも〜」


「問題ない。焦げも“理”の一部だ。」


「焦げパンに哲学持ち込むな!!」


フライパンの前でエプロンつけた悪魔がドヤ顔してる。

……朝からツッコミ疲れる。


「火が強ければ焦げる。それも世界の“理”だ。」


「理万能すぎんか!?それ言っときゃ何でも正解みたいになるな!」


母さんは笑いながら紅茶を注いでくる。


「理って、難しい言葉ねぇ〜」


「母さん、それ今さらだよ!!」


ルキは紅茶を一口飲み、真面目な顔で言った。


「“理”とは、この世界の動かし方だ。」


「ほう。」


「空が青く、火が熱く、人が死ぬ。それは全部“理”に従っている。」


「うん、さっぱり分からん。」


「つまり、“世界の説明書”だ。」


「おお!?説明書!?ようやく分かる単語来た!!」


ルキがうっすら笑う。


「人間はその説明書を読めない。だが、我々悪魔は少し読める。」


「え、じゃあお前チートどころか、運営サイドじゃねぇの?」


「正確には、“システム管理者”だ。」


「うわーまじか!運営権限持ちの悪魔!絶対めんどくさいやつ!!」


母さんが紅茶を置きながら頷く。


「じゃあ人間はプレイヤーなのね?」


「おお、母さん分かってる!」


「魔力って、つまり“遊ぶためのスタミナ”ってことかしら?」


「分かってるのか分かってないのか分かんねぇよ!」


ルキは苦笑しながら言葉を続ける。


「君たちはゲームの中にいるようなものだ。“理”は、そのゲームを動かしてるコード――つまり“裏側の仕組み”だ。」


「そして稀にそのコードの一部が壊れる事がある。」


「壊れてるって……どう壊れるんだ?」


「たとえば、“夜なのに太陽が沈まない”。“人がいないのに声がする”。本来動かないものが、動く。」


「バグじゃん!!ホラーじゃん!!」


「そう。世界がバグることがある。」


「お前さらっと怖ぇこと言うなよ!!」



母さんが焦げパンを差し出す。


「理が壊れていなくても、ご飯は焦げるのね。」


「それは母上の、プレイヤーの腕の問題だからな。」


「結局プレイヤー次第かよ!!」


ルキは小さく笑った。


「“理”があるから世界は回る。“理”がズレれば、世界は止まる。焦げるのも、崩れるのも紙一重だ。」


「……なあルキ。」


「なんだ。」


「理が壊れるって……つまり、世界が焦げるってことか?」


「だいぶ雑だが、だいたい合ってる。」


「うわぁ……分かりやすいけど縁起でもねぇ!」


ルキは紅茶を飲み干し、静かに立ち上がる。


「君は、焦げないように生きろ。」


「ざっくりすぎるアドバイスだな!!」


母さんが笑う。


「焦がさない生き方って素敵ね〜」


「母さんまで!?」


ルキは何も言わず、静かにカップを置いた。

紅茶の香りが広がるキッチン。


その平和な朝の奥に、

ほんの少しだけ――焦げた世界の匂いがした。


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