風の翼
リオナ様と大河の無双
リオナは険しい表情を、すぐにぱっとキラキラと輝くような笑顔を咲かせた。
「さあ、その前に――
せっかく日本に来たんだから、お買い物しなきゃ。
天海ちゃん、あなたも付き合ってね。」
「……私が?」
天海は片眉を上げる。
だがリオナは悪戯っぽく微笑んで、立ち上がった。
「ええ。あなたなら買い物したあとの手配スマートだもの!そして――千佳!」
ぐっと千佳の手を握り、まるで舞台に引き上げるように立たせる。
「もちろん、お姉様があなたの服を選ぶわ。」
「え、えっ……?」
千佳は戸惑い、視線を泳がせる。
大河は額に手を当て、低く唸った。
「……勝手に決めるな。」
だがリオナは振り返り、真っ直ぐに笑みを投げる。
「大河、あなたの番なのはわかってるわ。でも妹の衣装選びは、お姉様の特権よ。」
天海は静かに、くすりと笑う。
「Queen Liona……嵐のように場を変えていきますね。よろしいでしょう、私もお供しましょう。」
千佳は小さく肩をすくめながらも、握られた手の温もりに逆らえなかった。
「……お姉様、よろしくお願いいたします」
リオナは嬉しそうに唇を寄せ、千佳の耳元で囁いた。
「任せなさい、妹。あなたに似合う最高のワンピース、私が見つけてあげる。」
ーーーー銀座のブティック街。
少し歩けば、リオナの手はすぐに千佳の腕を取って引き込んでいく。
「これ! このワンピース、絶対に似合うわ!」
「お姉様、待って……!」
次から次へと運ばれる紙袋。
天海は涼しい顔でそれらを抱え、スタッフに流暢な英語とフランス語で配送の手配を指示していく。
一方、リオナは嵐のように千佳を着せ替えていく。
ドレス、ワンピース、カジュアルなコート――
鏡の前でくるりと回る千佳は、戸惑いながらも楽しそうに笑った。
「……随分と楽しそうだな?」
後ろから低い声がして、千佳は顔を向ける。
大河が腕を組んで立ち、わずかに口元を緩めていた。
千佳は照れくさそうに笑う。
「うん……私、姉妹っていなかったから。ずっと憧れてたの。
……大河さん。あのね…」
頬を赤らめ、視線を伏せながら小さく呟いた。
「さっき……英語話してた大河さん、かっこよかった。」
大河は一瞬だけ目を細め、そして口元に笑みを浮かべる。
千佳の耳元に顔を寄せ、低く囁いた。
「You are my everything… I love you.」
そのまま頬に柔らかく口づける。
千佳は目を見開き、耳まで赤く染まる。
次の瞬間――ブティックのスタッフからどよめきと歓声が巻き起こった。
「きゃあああっ!」
「素敵すぎる……!」
抱えた商品を取り落として失神する店員まで現れる始末。
リオナは振り返り、両手を腰に当てて笑った。
「……ふふ、やるじゃない、大河。映画のワンシーンみたいよ。」
天海は荷物を抱えたまま、優雅に肩をすくめて言った。
「……お二人とも、観客の心臓に負担をかけすぎですよ。」
千佳は恥ずかしさに声を詰まらせながらも――頬に残る温もりをそっと指で確かめた。




