短編文学集
やんわりと怪我の表現があるので気をつけてください。
私は友人のHと酒盛りを約束していた。とはいえ、学生同士なので大したものは用意できないのだが、脂の乗った旬のカツオを堪能したり、気色の悪い吸盤に翻弄されながら烏賊を捌いてみたり、そうしながらレモンサワーやビールを飲み干し、なかなかに楽しい時間を過ごした。ギリギリ若者らしいことを若者が楽しんだのち、丑三つ時には静寂が訪れていた。
翌日、私とHは出町柳でRとSと落ち合い、西宮まで阪急で出かけた。
(以下過激なシーン)
私は高校生の頃からガーデンズによく遊びに来ていたが、大学に入ってからは久しいので西北駅で降りた時は非常に懐かしく思われた。建物に入ると、私たちはまっさきにドトールへ向かってコーヒーを奪取し、一息ついたところで2人ずつに分かれてアウトレットを見て回った。
買い物が済んで、さあ帰るかといったところ。Rが私とじゃれあっていて、私を突き飛ばした瞬間、反作用でSにぶつかり、そのまま階段下まで転落していった。私は青ざめていたが、次の瞬間には周囲の人に叫んでいた。
「清潔な白いハンカチを持っている人おらんか!おいR!はやく救急車呼ばんかい!」
私の藍のデニムは、開いた傷から溢れた紅で染まり始め、横たわる人は意識が戻らない。しかし、彼が救急救命士であったからなのか、はたまた運が良かったのか、頭部への損傷はそれほど深刻なものとは思われなかった。そして、私の推測通り、頭骨内に血が溜まっている状態であったので、緊急手術を施され、Sは無事意識を取り戻した。その間Rは青ざめたまま西北駅で立ち尽くしていたとかなんとか。水曜日には私がRを連れて精神科に行ったが、誰かの夢はここで終わった。
人命救助はいつやらなければならなくなるのか分からない。その時のためにも、今ひとつ本を読んでみても良いのかもしれないという天啓だったように思える。夢の主は正夢とならないことを祈って、今日も仕事へ出かけて行った。