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代わりにVtuberやってもいいよ、その代わり私の呪い代行業やっておいてね

紺式ねねが所属するVtuber事務所は、この動くタイプのVtuberをメインにしている。


動くVtuberには二種類あり、イラストを動かしているもの、3DCGで作られたモデルを動かしているものがある。

昔からイラストタイプが主流であり、3DCGタイプは少ない。

昔は非常に儲かっている事務所の稼ぎ手に投資する意味も込めて、3DCGに変えるというようなことが行われていたが、現在ではもう少し敷居が低い。


昔は3DCGモデルを作ると膨大な時間を、頼めば数百万円要求されたが現在では3DCGモデリングソフトが使いやすくなり、キャラクターを作りやすい環境になったことで、ぐっと導入レベルは下がった。

しかし3DCGにすると衣服が捲れて意図せず露出してしまう問題や、マテリアルという3DCGモデルに対する光沢や色付けの指定の作業、カメラワーク、書き出し時の画質など問題は山積みだ!


故にイラストタイプが多い。

ではイラストタイプに問題点はないのかというとあるといえばある。

動くイラストの技術は特許であり、特定の企業に金を払い続ける必要がある点、動くイラストはある程度の表情やポーズの指定は出来ても、不自然になりがちな点。

そのほかにもたくさんあるが、基本となるイラストを一枚用意し、それを切り抜きツールでまぶたや目、口、前髪などに切り分け、専用のソフトに入力することで、動くイラストタイプのVtuberになれるのだから、簡単とは言わないが難しくはない。

一般人でも頑張ればなんとかなる範囲だ。



紺式ねねはVtuber事務所、鐘鶴ファクトリーの新人である。事務所内で4期生と言われるグループの一人だ。

1年毎にとは言わないが、数年に一度纏めて、数人の新しいVtuberを発表する。

紺式ねねがデビューするまでに事務所からは30人のVtuberがデビューし16人が何かしらの理由で引退した。


Vtuberは寿命が短い、鐘鶴ファクトリーはまだ創業して10年も立っていないがプロデュースしたアイドルたるVtuberは半分以上やめている。これは鐘鶴ファクトリーが特筆して悪い訳ではない。


普通のアイドルは、『私、アイドルになる!』という目指してアイドルになる人物や、『俺スカウトされたわ、まあイケメンだし?そういうこともあるよな』という精神的に人の目に晒されることに覚悟や一種の強さを持つ人物が多い。


ところがVtuberは中身は素人である。

"面白そうな一般人"や"声はいい一般人"を拾って来て、Vtuberという皮を被せてプロデュースする。

人気が出て、可愛い、かっこいいと褒められても『可愛いのはVtuberの皮であるイラストの方、私は可愛くない』と褒められているのに精神を病むということもよくある。


紺式ねねは設定上は世界を旅した旅人で、カラテでギャングと戦って兄弟として認められた過去を持つ……というなんか凄そうな肩書きを持つ。これはVtuberとしてのキャラ付け、のプロフィールあるが、中身は一般人である。

だいたいのVtuberは最初こそ、キャラクターの設定を守ろうとするが、段々はっちゃけてきて最初とは似ても似つかないものになる。


中の人である春田雪菜は普通の高校生だ。読書が好きで世界のお祭りとか風習についてちょっと人より詳しいだけの女子高生であった。


春田雪菜は真面目とは言いづらい性格をしていたが、キャラ設定を守り続ける稀有なタイプのVtuberだった。

自分の得意な世界の話をネタに雑談したり、ファンと会話する中で教えてもらった行事についてVtuberの配信外の時間に調べて勉強するなど、学校の勉強はまともにやらなかったが配信者として精力的に活動をして来た。


春田雪菜には誇るものがない。彼女自身がそう思っているのだ。容姿はブスだし、歌は苦手、ゲームは下手だし、配信映えする過剰な反応は出来ないし、可愛い悲鳴は出せない、トークは面白いかどうか評価は分かれるし、得意分野の世界の行事についても詳しい人には敵わない。

だからこそ、努力が必要だと思っていた。


容姿はブスでもVtuberなら関係ない、歌とゲームが下手ならそれ以外をやって他のVtuberと差別化すれば良い、過剰な反応や、かまととぶって可愛こぶるなんて吐き気がするぜ!


春田雪菜は努力と勉強によって紺式ねねというVtuberを完成させた。


同期がチャンネル登録者が30〜50万人いると考えるとかなり低めだが、リピート率、視聴率は一番高い。

事務所でもトップクラスである。


登録者数15.3万人の紺式ねねのチャンネルの動画は毎回の配信が再生回数10万回を超える。これは動画が相当面白いということだ。

近頃は海外ファンが増えてきたことにより着実に登録者数も伸びている。


紺式ねねは日本語で話しているし、中の人も日本語で話している。高校生なので英語は必須だが話せない。

何故海外人気が出たのかというと切り抜きという、他コンテンツに寄生するタイプの動画配信者によって拡散されたことが原因だ。


切り抜きとは他者の動画を無許可で勝手に編集し、様々な言語の字幕をつけてインターネットに掲載する行為であり、そこで得た収益を頂くのが切り抜き師と呼ばれるプロだ。

最初はVtuberに寄生しているように見られていた切り抜き師も、寄生元を有名にし自分の動画を見てもらう為や、はたまた沢山の人に推しのVtuberを知ってもらいたいという狂信からか、英語字幕にSNSや海外掲示板での宣伝活動などを行い、Vtuber事務所の代わりに広報を行うようになった。


今やVtuberと切り抜き師はアブラムシとアリの関係のように共存関係にあるのだ。


熱狂的ファンが多い、紺式ねねにもアリ……ではなく切り抜き師が存在する。

アブラムシがアリに守って貰うため、甘い蜜を与えるように、Vtuberも専属切り抜き師が離れて行かないようにやり甲斐を与える必要がある。


紺式ねねとして配信活動できない平日には、東に切り抜き師あればDMに行って媚を売り、

西に厄介ファン同士のいざこざあれば割って行ってそれを仲介し、

南に紺式ねねのファンをやめるとわざわざ公言する人物あれば、行ってff外から感謝と共にお別れのメッセージを送り、

北に自称専門家現れれば、行って無知を装い他人がイラつくほど過剰に褒め称え、ファンとアンチの暴言で暴言を洗うレスバトルを起こし華麗に立ち去る。


SNSでの対策が最初は分からなかった春田雪菜はVtuberを初めてすぐに現れたアンチに何故こんな酷いことを言えるのだろうと疑問に思った。

そしてコイツは私の何を知っているのだと思い、頭に来た。


春田雪菜には友人は何人もいる。

しかし親友は何人もはいない。

アンチや何となく苛立ちをぶつけるために、DMで暴言を送りつけてくるやばい人に精神的にやられていた時に助けてくれたのが、幼馴染で同い年の雛木絵麻(ひなきえま)だった。

雛木絵麻は、『正論とか疑問で返すのは良くない。

Vtuberになったんだったら図太く行くべきだと思うよ』と助言した。


自称専門家がお前の知識は間違っているというなら、

『へぇ!凄いですね!私、ちょっと人から聞いたりしただけであんまり詳しくなかったんです!○○っていう本に書かれついたことを鵜呑みにしてました。やっぱり専門家の人っていろんなことを知っているんですね!本にも書かれていないようなことを知っているなんて尊敬します!もっと教えてください!』


と過剰に褒め称え、皮肉を浴びせるように誘導したのは雛木絵麻であった。


雛木絵麻はレスバトラーではない、ただ職業柄自称専門家に絡まれ安く、褒めることがこそが最大の防御にして攻撃手段であると学んだのだ。

アンチに困っているとの親友の相談に、私もやっているんだから雪菜もこうすれば言うと思うよと、レスバトラー流派の一つ褒め煽りを伝授したのだった。


褒め煽りとは、相手を褒めつつ相手の無知を皮肉を使って指摘する高等テクニックである。

相手が純粋なら褒められたと勘違いするし、相手が煽られていると感じてキレたら、褒めたらキレるヤバい人指定をして相手にマイナスイメージをつけることが出来る攻防どちらにも優れたテクニックだ。


また過剰に褒め称えることにより周囲の人間のヘイトを、褒められてる相手に集め、炎上させることも出来て一石二鳥である。


春田雪菜はよくも悪くも普通ね人間であり、そこまで深く考えていなかった。雛木絵麻から教わった方法でアンチを褒めると黙るか、周りが擁護してくれるなぁ。と単に思っていた。


天然のレスバトラーとして頭角を表しSNSでアンチを炎上させまくる熾烈さに惹かれるという人もいる。


SNSでの異常な行動や言動が目立つVtuberには事務所から指導が入るのだが、今のところ紺式ねねには指導が入ったことがない。


それはSNSでのレスバトルも彼女の魅力であると認識されているからである。



さてそんな外道テクニックを伝授した親友は春田雪菜から超大切な話があるとの呼び出しをうけ、彼女の自宅まで来ていた。

雛木絵麻は匿名で活動する呪術師である。

叔父から継いだ呪い代行や、護符の販売という非常に怪しげな商売を営んでいて暗い性格の少女から思いきや、非常に明るくポジティブな考えの持ち主だ。

最近は何処かの占い師に弟子入りして街角で占いをしているらしい。


本当は今日も朝は占い師の元で修行、夜は呪術代行をしようとしていたが、超大切な話とやらが気になり急いで来たのであった。

これで下らない話でも、別に怒らない。

友人ならぶっ飛ばしたかもしれないが、親友とは血の繋がった親類と同じように、非常に大切に扱うものだというのが雛木絵麻の哲学だ。


また精神的に病むようなことが起きたのかと、春田雪菜を心配しつつインターフォンを押す。


雪菜から絵麻が来ることを知らされていたのか、すぐに家の中から足音がして雪菜の母に出迎えた。

彼女の部屋まで案内された絵麻がドアを開けると、絵麻が久しぶりとの声を上げる前に土下座をして、叫んだ。


びっくりする絵麻をよそに額をフローリングにつけ、体が床につきそうなほど身を屈めて土下座していた。


「私の代わりに紺式ねねとして合宿に行ってください!!お願いします!」


開け放たれたドア、おいおいとんでもねーこと言わなかったかこの子は、という表情を浮かべる雪菜母。

ちょっとぼうっとして、頭の中で春田雪菜になり切って行動することを巡らせる雛木絵麻。


絵麻には状況がわからなかった。

しかし、反射的に「うん、まあいいよ。」と返事をしていた。



親友が困っていたからという部分と、相手に同意を得てなり代わって行動してみるのは楽しそうではないかと、思っていた。

絵麻は妄想する。

何処かのタイミングで、自分が春田雪菜ではないと気づいたVtuberの同期がお前、彼女を何処にやった!と問い詰めてくる光景を。

そこで意味深に笑い、さて何処かななどと囁くのだ。

探偵気取りで絵麻の犯行とやらを暴く、雪菜の同僚ないし事務所の人間を鋭いアッパーで、顎をぶっ飛ばし、雄叫びを上げてガラス窓を突き破って山小屋から脱出するのだ!


妄想から覚めた絵麻は、とんでもないことに気付いた。

"『占い師に基本毎日、私の元に来いよ!』って言われてたなと。

それから叔父に『絵麻チャン、現代社会には呪いたい奴が沢山いるらしいヨ、困っちゃうネ!おじさん繁盛しすぎて忙シ忙シですから、手伝ってネ』と言われたんだった。


親友の春田雪菜は土下座した。何でもしますからとは言わなかったが土下座というのは服従しているようなものである。

心苦しいが、私にも用事があり彼女の用事とも、どちらを選ぶこともできない。心苦しいが彼女に私の仕事を代行してもらおう。"


そこまで雛木絵麻は考え口を開いた。






現時点でのキャラクタープロフィール

春田雪菜(主人公)

身分:高校生2年生

職業所属:鐘鶴ファクトリー4期生

職業:Vtuber 紺式ねね

趣味:面白い動画を作ること


雛木絵麻(主人公の友人)

身分:高校生2年生、占い師の弟子

職業所属:呪術代行業者

職業:呪術師、祈祷師、見習い占い師

趣味:妄想、友人にログでもないことを教えること

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