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第3護衛隊群奮戦せり  作者: レイチェル大尉
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プロローグ

「まいったな…」

 海水で重くなったり使えなくなった装備品を身体から剥がしながらオルドリッチ・スミス上等兵は海岸に座り込んだ。海岸には見渡す限り同じように濡れ鼠になった兵士が上陸、というよりは漂着していた。

 そして、沖合からはまだまだ多くの兵士たちがこの海岸を息も絶え絶えになりながら目指している。何かを手伝ってやりたかったが、そうできないほどオルドリッチは疲弊していた。


 1942年8月、アメリカ合衆国軍による最初の反攻作戦として立案実施されたウォッチタワー作戦は、驚くべき損害を強いることになるとも知らずその幕が切って落とされてしまった。

 ほぼ無血の状態で上陸に成功し、付随するツラギ島攻撃にも成功した米軍だったが、翌日以降の日本軍の反撃によって参加艦艇のほぼ全艦を失ない、輸送船の大多数も荷揚げに手間取っているうちに攻撃を受け海没してしまった。人員の多くはほとんど身体1つで海岸に辿り着くのがやっとという状態で海岸に命からがら辿り着いただけだった。オルドリッチも身につけた官給品は背嚢や水筒だけで武器と呼べるものは何もなかった。小銃や弾薬などは海に飛び込む前に遺棄してしまった。それらを後生大事にしようとしたものは既に水底に沈んでしまっていた。


 上陸作戦が開始された翌日に襲いかかってきた日本海軍の強襲部隊は、16隻からなる連合軍艦艇のほとんどを撃沈し、護衛を失った輸送船に容赦なく襲いかかった。そうして、輸送船は重装備のほぼ全数、弾薬食料を揚陸する前に撃沈または撃退されてしまった。支援を行うはずだった空母機動部隊からは1機の支援も来ず、部隊は10000名以上の兵士を単に上陸させたに過ぎなかった。

 日本軍の反撃前に攻撃目標のガダルカナル飛行場はほぼ無傷で手にいれたものの設備や物資は炎上・遺棄されており、米軍が得られたものは完成しかかった野戦飛行場のみだった。


 夜戦によって壊滅的な被害を被った上陸支援部隊に加えて機種不明機の夜襲によって後方にいた61任務部隊が攻撃され空母サラトガ炎上中破、エンタープライズ、ワスプが撃沈、ノースカロライナ炎上大破という大損害を受けていた。連合軍は、豪軍・米軍ともに巡洋艦以上の大型艦の殆どを失い残った艦は後退せざるを得ない状態となった。

 ガダルカナル周辺には上陸部隊を葬り去った水上部隊の他にも(誤報だったが)有力な機動部隊が進出しつつあり艦上機による支援が受けられず、有力な水上艦のほぼ全てを失った以上残存艦艇は引き返させざるを得なかったためだ。

 ミッドウェイで逆転ホームランを打ったアメリカ軍は、アメリカ人が誰も知らないここガダルカナルで再び大量失点してしまったのだった。


「集合!集合!」

 上級指揮官らしき人物が大声を上げたが、それに機敏に従う者は誰もいなかった。

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