第一歩
エルフの里を出たみらいは行く当てもないので、ひとまず近くの深い森に入る。
この森を抜けた先に広い世界が待っている。
「いやもうみらいにかかれば伝説の樹なんて楽勝よ、あっちゅう間に見つけてとと様をびっくりさせてやるわ。もうあれよあれ、ギャフンと言わせてやるんだから」
森から山に入って大きそうな樹を探してみる。伝説と言われているだけあってどんな形をしているのかまったく分からないからだ。
「外の世界には危険なモンスターもいっぱいいるって聞いたけど楽勝ね」
などと言いながら散策すること五分。
「はい、はい。来ないで来ないでどうしてこっちにくるの?」
猪に追いかけられて逃げ惑う。
雪のように白い肌には汗が浮かび水色のポニーテールは左右に揺れた。蜂蜜色の瞳で地形を探りながら転ばないように走る。
山道は傾斜もありでこぼこしていて転ばないようにすることで必死だ。
「やっばぁ。なんであんな凶悪なモンスターがいるの」
体調五メートル近い猪に追いかけ回されて逃げ回る。障害物を盾にして逃げるのだがものともせず破壊しながら一直線に迫る。
「はい、はいはぁい。あいたぁ! 痛っつぅ。ぎゃあ待った待ったタイム、タイムだってばこっちこないでぇ」
ジャンプして突進を避けたのだが、着地した瞬間に獣要の罠に嵌まってしまい、足を怪我してしまう。
あと五メートルといったところまで迫っており、このままでは突進されて身体が粉々になってしまいそうだ。
「こら!」
パァン。銃弾の音が響く。
「ぎゃうぅん!」
すると猪は慌てて急旋回して上の方へ逃げていった。
「どないしたん、大丈夫か~?」
人間の男性が銃を持ったまま近付いてきます。
「ひっ」
恐ろしくて悲鳴を上げるのですが、男性は気にせず近付いてきました。
「あんれま~、罠にかかってもうたんか。痛かったろう。どれ、今外したるからな」
男性は罠を外すと傷口にハンカチを当てて縛って止血してくれました。
みらいは感動したのですが、嬉しさと痛さでお礼を言うのを忘れてしまいます。
「そんじゃ気ぃ付けてな」
そして男性は名前も名乗らずに山を下っていきました。
「あ……」
お礼を言えなかったことが心残りとなり胸がチクりと痛みます。
ここまで読んで下さりありがとうございます、それではまた次回でお会いしましょう。