旅立ち
「とと様。一体どうしたのですか」
見た目十歳前後に見える水色髪の小柄な少女が呼び出した父親に用件を問う。実際にはハーフエルフなので見た目通りではなく二百十歳なのだが。
しかし長命なエルフ族からするとまだまだ子供だ。
「じつはエルフの里始まって以来の暖冬で雪がまったく降らん。これでは来年の作物などに影響が出るのじゃ」
「そうなのですか。たぁしかに。最近雪だるまも雪合戦もできないと思ってたんですよ」
独特な発音で言ってくるが、なぜこんなにも独特に育ってしまったのかと父親は頭を振った。
「そこでみらい。お前が旅に出て伝説の楽器ネルーシェを探してくるのじゃ」
みらいと呼ばれた水色髪の少女は父親の言葉に瞳を輝かせた。
「あの伝説の……」
「そう。そしてネルーシェでアイシクルーと呼ばれる精霊雪の民を惹きつけ雪を降らしてもらうのじゃ」
「みらいがネルーシェを。そして雪の民を感動させないといけないんですね。分かりました」
「いや別に感動させる必要はないのじゃが」
「任せて下さい。きっと洗脳したみたいにぞろぞろ引き連れてきますよ」
そう言って父親であり、長老の部屋を出て行く。
「大丈夫かのぅ、あの子は早とちりと勘違いが激しいから」
「さぁ、みらいの冒険が今始まるわ!」
決意して瞳に炎を宿した。
こうしてみらいの冒険が今始まった。
「みらい、みらい」
と思ったら母親に引き留められてまだ始まらなかった。
「なんですか、かか様」
「これを」
保存用の包みに包まれたおにぎりを手渡される。
「わぁ、ありがとう!」
「それとこれはみんなで作ったのよ」
ツウィルと呼ばれる里を象徴とする青と白の美しい花があるのだが、それを模した髪飾りを母親が飾り付けてくれた。
「元気でね。決して無理はしてはいけませんよ」
「は~い。頑張ってくる!」
母親に手を振って、今度こそ本当にみらいの旅が始まった。
かなり不定期で、文量は少ないんですがかなり書く速度が遅く、次回はいつ投稿するのかも未定です。済みません。