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第九十四話 刀




 こうして俺の頼んだ刀は無事回収し、結果としては、製作してもらったがあまり使う機会のないものとなってしまっていた。申し訳ないが、この王国を知るためには必要であったために許してほしいことだ。


 「刀2本ありがとう。2人も疲れただろうし、今後刀を製作するのは好きな時でいいから今はゆっくり休んでくれ」


 「ありがたいですけど、多分もう少し仕事をする必要があるのでその後にゆっくりします」


 「ん?何か予定が?」


 「はい、今から――」


 ニアが話の続きを言おうとした時、その用事がなんなのかを理解するには十分な情報が目の中に飛び込んで来る。後ろにある扉がお淑やかに開けられ、その先から鍛錬を終えただろうルミウとフィティーが入ってくる。


 先程話をした時よりも倍以上汗をかいており、それでもブレない気派や立方、表情は成長の異常さを改めて分からされる。


 バケモノだよな……。


 「シルヴィア、ニア、刀を取りに来た」


 「おー、ルミーナイスタイミング」


 久しぶりでもないのに、目を輝かせるのは友達としてのいつもの挨拶のようなものだ。ルミーという愛称で呼ぶのは、聞いてる俺からするととても気に入っている。


 「あれ、まだいたんだね」


 そんなルミウは俺を見てほんの少し目を大きくする。


 「ルミウたちか。てっきり変な人たち(リベニアの剣士)にも刀を製作してるのかと思って嫉妬で泣きそうだったわ」


 「……入室早々に意味が分からない」


 呆れる速さもだんだんと短くなっている。俺に飽きてきたのだろうか、悲しすぎてバブちゃんのように泣くぞ?


 「フィティーのオリジン刀と黒真刀はこれ」


 「ルミーのはどっちもこれだよん」


 それぞれ製作した刀を紹介する。ルミウは俺がリベニアの黒奇石で製作した刀を持つなら私はいつも通りでと頼んでいたらしいので、紛れもないヒュースウィット製の刀。


 フィティーは、我儘かもしれませんがどちらの王国の刀も触りたいと言っていたらしいので合計4本。馴染む方を使うだろうが、絶対にヒュースウィットに軍配は上がるだろう。


 ってかいつの間に頼んだか知らないが、合計5本と3本を製作したってことは半端ない労力がかかっただろう。これは本格的に釣り合うことがない。返せないぞ。


 まぁ、今思えば4ヵ月で2本は少ないもんな。よくも5本をこの時間で仕上げたものだ。シャルティ・ニア。やはり特異な人間だな。


 「うん、いつも通りだよ。ありがとうシルヴィア」


 「いえいえ」


 ルミウは吸い取られても慣れているなら顔に変化は1つもない。しかし、本格的な刀を握ったのが今回が初めてだろうフィティーにも変化がないのはおかしい。


 リベニア、ヒュースウィットの刀を合計4本握るが、どれも苦しい表情はしない。俺でも吸い取りには変顔をしたのに余裕で耐えるのは……やはりおかしい。


 とはいえ、傍から見れば美が4人も揃って美味しすぎる空気だが、特異存在の4人だと思うと、容姿の良さに関係なく圧で押されるものだ。まるで俺に弱体化が入ったような。


 「苦しくないのか?」


 「うん。聞いてた通り吸い取られる感覚は気持ち悪いけど、思ってたよりって感じ」


 「そうか。やっぱり王女は違うな」


 「そう?」


 「そう」


 無意識に同調したのか、何食わぬ顔で刀を握る姿は信頼出来るほど堂々としていた。嬉しそうに感謝を伝えながらも、意識はすぐに刀へと行き、口角を上げたまま隅々まで見ている。


 1度刀を製作するにはその人の気派を調べる必要がある。そのためフィティーの体を調べたのだろうが、その時にニアも驚いただろう。どの刀を握っても完璧に使いこなせるほど全くブレのない気派に。


 「あー、とりあえず依頼された刀は製作し終わったよ」


 背伸びをしながら達成感に浸る。


 「そうだね。私たち刀鍛冶もようやっと役に立てたって感じー。今日からはゆっくり寝れるし、なんならイオナの隣で寝ても許されるよね?」


 「……俺は最高でも10分しか寝ないんだけど」


 「えー、労う気ゼロ?」


 「……仕方ない、寝てる時に俺を解体しないなら」


 「いぇーい!」


 強制的に目が覚める10分が限界だが、ここは目を瞑って我慢してあげよう。正直疲れはどれほどのものか具体的に把握はしていないが、俺ら剣士で考えるとレベル6の魔人と2連続で戦ったようなものか。ニアの気派がだいたいそれほど集中力を失っていると言っていた。


 ならば付き合ってあげるのもありだな。美少女なんだし俺にデメリットは解体以外ないからな。


 それにしても、やはりフィティーでもリベニアの黒奇石は合わなかったな。ヒュースウィットの刀を選んでいたので、おそらく気持ち悪さには勝てなかったようだ。それを難なく使いこなす慣れた剣士は褒められたものだ。


 「そういえばリベニアに来てから1度も魔人を相手にしてないが、問題ないのか?」


 ここに住んで指導するために、約束として魔人討伐も決められていた。しかし魔人出現と聞いても飛び出す必要はなく、神傑剣士が終わらせていると聞く。


 「最近、魔人が2日に1体に戻ったと聞いたよ。何故かは解明されてないけど、何かしらの変化が起きてるのかも。そのウェルネスとかいう組織も関わってたり。だから対応は間に合ってる」


 「そうか。でも妙だよな。短期間でそんなに変化するものなのか?」


 「いや、最近増えたと思ったらすぐ戻ったのに加えて、これが私の知る限り今回初だから、何かの予兆かもしれない」


 んー、多分ウェルネスとかいうやつらは少し関係していたりするだろう。それに御影の地でも何か異変が起きてるっぽいしな。

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