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第八十九話 救いの手




 「それは君が1番分かってるんんじゃないかい?呪い人を殺める組織――ウェルネスのミスト」


 「ああ。そう言えばそうか、俺はもう有名人だったな」


 全く忘れてないくせにとぼける様は見ていてイラつくな。どう見ても歳は30超えてるのに、子供のような立ち回り方には若干引く。


 「すんなり捕まって、色々吐いてくれると助かるんだが?」


 「そんなことするわけないだろ。俺もちゃんと使命持ってこの役割を果たしてんだよ」


 「そうか、ならば無理矢理捕まえるしかないかな」


 「あんたにやれるかな?」


 ミストもここにいるのが第1座だと言うのは知っている。だがそれでも捕まらないと確信している。慢心ではない、確かな理由を持っているようだ。俺にはそれが掴めないから無理に手出しは出来ない。


 こういうやつは最悪人間を巻き込むことも簡単に考える。人質を取られても問題ない速度で動いて助けることは可能かもしれないが、相手が神託剣士であり速さに特化した剣士なら絶対とは言い切れない。


 やっぱり何もかも調べてから決着をつけるべきだな。教訓教訓。


 「さぁ、来いよ」


 挑発されても行かないのは考えているからだろう。ミストがなぜこんなにも時間をかけてここに戻ってきたのか、そして第1座が居ると知ってもなお退くことはせず挑もうとするのかを。


 見たところ隠している刀はない。小細工も何もしていないようだ。その上でのこの態度。頭を使うことはルミウ担当だからな……分からん。


 「あんたが行かないなら俺が行くぞ。いくら指示を待つとはいえ、この機を逃したいとは思わないからな」


 「待ってくれ。周りを見たら分かるだろう?ここには人が多すぎる。神託剣士と刀を交えればそれだけで周りに被害が及ぶ。それに神傑剣士と神託剣士が刀を交えるとこを見たら不安に思うだろうからここでは抜けない」


 「……ここで張り込んだのはあんただろ」


 そもそもここにはバレないように張り込んでいたのだが、もう事を構えるタイミング云々よりも、出会ってしまったので対処するしかない状態になってしまった。


 予想外の展開にリベニアの第1座故に迷っているのか。ホントに気まぐれだ。


 マークスの言う通り、激しい戦闘になるのは確実である。いくら一瞬で勝負をつけれるからと言っても、戦闘時間が短縮されるとその分強力な剣技で済ませる必要があるので早かれ遅かれ被害はそんなに変わらない。まぁ、俺以外はな。


 「仕方ないから被害出さずに捕まえてやる」


 「何を言っている?君がどんなレベルの剣士か知らないが、それなりの力があれば周りを吹き飛ばすのは目に見えているだろう?」


 「安心しろ、そんな迷惑かかる剣技は使わねーよ」


 レベリングオーバーがあれば、ササッと解決可能かもしれない。周りの被害を最小限に抑え、なおかつ視線も集めない程度の剣技。心技を使い、それらをレベル6にすればいい。


 「まぁ、否応なしにやるけどな」


 「おいおい、マークスじゃなくてお前かよ」


 お前じゃ相手にならないという面持ちだ。ムカつくが、この顔をボコボコにする未来が見えるので憤りを顕にすることはない。ただ、ワクワクしてくる感情は抑えられなさそうだ。


 「速くしないと手遅れになるぞ」


 「いや、大丈夫だ。すぐ捕まえる」


 その場で鞘に手を添える。ミストとの距離は20mほど。この距離なら居合で十分なほどに峰打ちを決め込める。峰打ちじゃなくて、ちょこっと傷つけても良いんだが、遊ぶ暇は無いだろう。


 仁王立ちの隙だらけ。この男はホントに逃げ切れると思っているようだ。脳筋の俺にそれが何かなんて見抜けるわけもなく、それならさっさと終わらせた方がいいとまで思っていた。


 そして腰を低くし、重心も落とすと同時に発動する。


 「居合」


 音速より若干遅めのスピードで一瞬にして詰め寄る。既に鞘から抜け出た刀は返されて峰打ちコースへ一直線。ミストの目はこちらになく、俺が近くに来たことに気づいてすらいなかった。だからこれは決まった、慢心恥ずかしいな、と思っていた。


 しかし、次の瞬間キンッ!と刀同士のぶつかる音が耳に響いた。瞬時にその刀を受け止めた男の顔を見る。もちろんはじめましての顔で、しっかりと難なく受け止めてるところを見るに神傑剣士で間違いはないだろう。


 我ながら短時間でここまで理解したのは珍しく、成長が垣間見えて嬉しい。


 「はじめましてばかりで名前を覚えるだけで疲れるが、お前の名前は?」


 まだ刀は交わっている。力はさほど込めてはいないものの、ピクリとも動かないのはどちらが引くかのプライドバトルをしているから。


 「久しぶりに腕が痺れるほどの剣技を受けたから、それどころではないが教えてやろう。俺の名はザーカス・フェルナンド、この王国の第2座に就く神傑剣士だ」


 「ご丁寧にどうも、俺は名乗らないけどな」


 「そうか」


 まだ引かない。このまま死ぬまでこうしてやっても良いんだが。


 それにしても王国の第2座がミストを助けるってことは、そういうことなのだろう。この王国の未来が真っ暗すぎて心配になってきたぞ。


 「それよりミスト、俺が駆けつけるのが遅かったら死んでたぞ」


 「でもこうして来てくれたじゃないですか」


 「ったく……」


 俺に構わず目の前でイチャイチャされるのは気分が悪い。このまま蓋世心技でも放ってやりたいわ。

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