表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/258

第八十八話 リベニア第1座の気派




 それからすぐに追いかけること5分ほど、無意味な往復を繰り返した俺はマークスのもとへと着いていた。場所はやはりミストの拠点とする我が貴族家。いっそここをぶち壊してしまえばいいのでは?なんて楽なことを考えるが、実際そんなことをしては周りの国民が野次馬となり人質になる可能性もある。


 まぁ、呪い人にだけ殺しにかかるのなら他の国民は安全かもしれないが。一応は常に、だからな。


 「なぁ、なんで見失うんだ?それでも神傑剣士かよ」


 マークスだけの気配を追えばいいと思い、集中して見失わないように追いかけてきた。しかし、残念なことにこの男、すぐ近くで追いかけれるはずだったのに見失って最終的にここに辿り着くだろうという曖昧な決めつけでここにいるのだ。


 「逃げ方が上手くてね。私も全力だったんだが、それでも逃げられてしまった。私の落ち度だ。すまない」


 「いや、別に謝られたくはないけどな。国務なのはあんただし、むしろあんた自身の方が被害大きいだろ。よくそんな平気でいられるものだな」


 「ミスはしても今まで国務の失敗はしていない。国民を国務の件で殺したこともない。だから落ち着いているんだよ。それに見失っても拠点を押さえれば少なくとも何かを得られることは可能だからね」


 「都合のいいこと言ってるが、これが最初の失敗にならないことを祈るばかりだ」


 正直どうでもいいことだ。イカれた国(リベニア)の国務なんて魔人関係がほとんどだろうし、遂行したとしてもまた同じような国務を渡されるだけ。たった1つの剣技だけで人生を謳歌しろと言われているようで、俺には耐えられない。


 でもなぁ、フィティーが関わっちゃってんのよ。


 まじでフィティーが国王並みに上から目線の天上天下唯我独尊で、ドSの自己中のブスで、好き勝手生きるクズなら適当にこの件を終わらせるか、無視するかの二択だが、その真逆だからなんとかしないとって気持ちが浮き出てくるんだよな。


 顔も性格も美少女は半端ない。


 「どうする?このまま張り込み続けても俺は嫌だぞ」


 「いいや、その心配はいらないよ。そろそろミストが戻ってくる」


 「……何を以ってそんな確信してるんだよ」


 「気配だよ。ここに何回も来たが、少し淀んだ空気感がミストがいる気配なのは君も分かる通りで、その気配が貴族家内に充満するんだ。それがミストが戻ってくる気配だ。それが今感じれるのだから間違いなく帰ってくる。だからもう少し待っててくれ」


 嘘は全く言ってない。いや、正確性を欠く判断であるが故に嘘かは見抜けない。しかしそれでも信じるに値するほどにはこの男の気派を読むことは出来た。


 しかし、淀んでるのはこいつの気派も同じだ。これまで18年と少し生きていて、こんなに読みにくい気派を見たことはない。それは一定間隔でズレたりするのではなく、完全にあべこべ。


 感情の起伏があればそれ相応の流れが変化するが、こいつはそんなことがなくても一定ではない。まるで呪い人だった俺の……いや、思い出すのは止めよう。


 「分かった」


 様々な感情が複雑に混じり合った一瞬を経て、俺は待ってやることに賛成した。暑くも寒くもない気候には唯一の感謝を。薄っすらと風が吹くと、疲れも流れていく気がして心地いい。


 ――そして2分後、マークスは動き出す。


 「来たね」


 「だな」


 その場にサッと一瞬で立ち上がる。しっかりと刀に手を添えているのは神傑剣士らしい。俺はまだそんなに危機を感じてないので周囲に発を散らしているだけだ。


 ミストが近づいたからかグッと空気感に変化が訪れる。それを感じ取れるのは俺とマークスだけなので、そこらを歩く国民には感じ取れない。特異存在すぎる俺らのせいで忘れがちだが、大体がレベル1の剣士にもなれない人たちなのでそれが普通である。


 「あんたの指示に従うが?」


 「いいのかい?気まぐれなんだが」


 「あんたの国務だからな。俺がどうこう言ってミスしたら最悪だろ」


 ミスしても謝るだけで反省はしないがな。


 わぁお、俺ったらいつからこんなに性格悪くなっちゃったのー。


 「それもそうだが……その心配も杞憂らしい」


 「……まぁ……探しに行く手間が省けたならそれでいい」


 今から行動を起こそうとした俺たちの前に、張り込み場所を知っていたようにミストから顔を見せてくれた。初めて見るが、うん、なんとも言えないイケメンでもブサイクでもない中途半端な顔だ。


 どこに行って戻ってきたのやら、ホルダーを持たず腰に下げた刀一本で俺たちの前に堂々と立っていた。ルミウにボコされそうになったのにそれでも自信は消えず、むしろ生き生きしている戦闘狂のようだ。


 戦闘狂はデズモンドで十分だって。あいつも呆気なかったし、戦闘狂=呆気ないの方程式成り立つからやめてくれ。


 「これはこれは、見ない顔と第1座じゃないですか。マークスさん、あなたのお弟子さんかな?」


 「何言ってるんだよ。どう見ても師弟関係結んでないだろ。俺の方が強いし」


 「ということで君の予想はハズレだよ」


 この第1座、ノリは良いらしい。


 「ははっ、そうですか。――んで?俺の家の前で何してるんだよ」


 ガラッと話し方を変えて戦闘モードにでも移行したかのように目をギラギラさせている。


 おい!こいつキマってるって。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ