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第八十三話 貴族家偵察




 「君は途轍もない猛者だと思えるが初めて見る顔だ。リベニアの民では無いのかい?」


 ミストを追うために王城を出て早々、マークスはコミュ強を発揮している。正直こいつと会話をしても得られるものはなにもない。なら無視するのが1番だが……正面や耳元まで迫って嫌でも聞こうとしてくるので回避不可。


 よって答えるしかないのだ。


 「ああ、ヒュースウィットから来たんだ。それ以外は答えられない」


 「なるほど、あの剣技に長けた剣士の多いと言われるヒュースウィットか……その神傑剣士でもやっているのかい?」


 「……あんた言語を覚えた方がいいぞ。答えられない、そういったはずだが?」


 「いいではないか。今は仲間なのだろう?目的地へ向かう間は話を弾ませようではないか」


 俺の嫌いなタイプだ。俺を鏡で見るよりも5倍増しでウザく感じる。ジジイってとこがさらにウザ味を増加させているな。


 案内される方角に走りながら向かうも、息切れすらないのは流石といったところか。俺もそれなりに速く走っている、いや、嫌がらせで疲れる程度には走っているつもりだが全く落ちる気配もなく付いてくる。


 神傑剣士第1座ならば当然も当然かもしれないが、ルミウと同等がそれ以上の体力を持っているのは俺が悔しい。きっとこれを聞いたルミウも握りこぶしをゴリラ並の握力で握るだろう。


 「俺は無意識にあんたの国務を手伝ってる設定だ。だから勝手に付いてきてるだけの変人と会話をするつもりは毛頭ない」


 「ははっ、ひどいこと言うな。力を持つ者同士、仲を深めたいと思わないのかね」


 「俺はあんたに興味はない。もっと力をつけてから再度、仲を深めに来てくれ」


 「なるほど、自分より弱い相手とは仲間にならないと?」


 「違うな。認めるか認めないかで決まるんだよ。どんなに強くても慢心してたり、浅はかな部分が1つでもあるなら仲を深めに至らないってことだ」


 「ほう、中々面白い考えだ」


 何も、普通のことを普通に言ってるだけに過ぎない。仲間なんて結局は相性云々の話だ。やはりこの男が何故、1人で解決出来る力を持っていながら俺に接近してきたか、それを知る必要があるかもしれない。


 曇天になり始めた天候。まるでこれから先の俺を示しているようで気になるな。


 「君と話していると時間の進みが早く感じるのか、君の走る速度が異次元なのか、どちらにせよもうすぐで目的地だ」


 「そうかよ」


 まだ王都内であり、ここから離れたとしてももうすぐならば隠れ家としては役に立たないほど人目につく場所だ。そんなとこが目的地なのかと不信感を募らせるが、信じるしか道はない。


 気になることはあれど、急ぐに越したことはない。俺はそのままの勢いで走り続ける。


 ――「ここだよ。ミストたちの拠点にしている所は」


 「なぁ、ここって貴族家じゃないのか?」


 位は分からずとも爵位の紋章はある。それに近隣と比べても圧倒的に豪勢であり、綺羅びやかだ。公爵はあってもおかしくないが、何故こんなに目立ちたがりな貴族家に案内されたのか、理解していても納得は出来ない。


 「ミストは貴族だ。故に下手に手出しは不可能ということでより高い地位である神傑剣士の私に、国務として頼まれたのだ」


 「おいおい、他国の剣士がこの王国の貴族に関与していいのかよ」


 「そこは私が責任を取ろう。だから心配無用だ」


 「そうか」


 なーんて、全く気にしてないがこいつが責任を取るのなら甘えて暴れさせてもらう。リベニアの上下関係は気にしてすらいない。国王を敬う気がない俺には、この王国の中身までが知れているつもりなので、尊敬に値する人は存在しないと決めつけている。


 フィティーに比べて子供の俺は、国王に何か言われたら力で捻じ伏せるつもりだしな。まぁ、会うことすら無いだろうから杞憂だ。


 「どうやって入るんだ?」


 「入りはしない。まだ事を構える時ではないからな」


 「ならなんでここに来た?」


 「偵察だ。ミストがこの件の首謀者では無いことは分かっている。だからそこらへんの細かい部分を探るために調べるんだ。誰が出入りして誰と会って、何をするのかを」


 「……なら手伝う必要ないだろ」


 「教えてほしいか聞いた時に君が頷いたんだろう?」


 「……確かにな」


 あの時はただ見失ったことにパニックになってたので正しい判断が出来ていなかった。次からはこういうことがないように常に気を張って置かないとな。面倒が増えるのが自業自得なんて最悪だ。


 「俺はミストの居場所が分かったからもう十分だ。あんたは偵察を続けるんだろ?」


 「帰るのかい?」


 「もちろん」


 「協力してくれるのでは?」


 頷いたことは守るのが道理だろ?という目で俺を見てくる。その通りであっても、この男と2人きりは長ければ長いほど苦痛だ。が、俺もプライドってのが無駄に働く時があるらしい。それが今だった。


 「分かった分かった。どこで偵察するんだ」


 「助かる。場所はもちろんここだ。サウンドコレクトで異変があれば即座に動けばそれでいい」


 「了解」


 そしてすぐに俺はマークスと同時にサウンドコレクトを使用した。今ここは路地裏であるため、人通りは皆無だ。少し貴族家が見える程度。そこで邪魔をするものは何もなく、なんと、貴族家の中にも反応は何もなかった。


 「おい、誰も居ないぞ」


 「変だな。場所は合ってるはずだ。それに何も用事が無い時と、会議終わりは必ず戻るはずなんだが……」


 予想外の展開に、初めて動揺を見せた。


 「なら用事があるってことだろ」


 「かもしれない。一旦王城に戻ろうか」


 「ああ」


 そうして俺たちは完全に無駄にした時間を取り戻すために、いるかもしれない王城へ急いだ。

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