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第八十二話 リベニア最強剣士




 王城内に侵入しても何も思われないほどの人間。つまりは貴族か守護剣士以上の地位を持つ者。まぁ、気派の扱いや気配の消し方から普通の剣士とは思えなかったが。こちらも細心の注意をしながら気配を感じなければ悟られてしまうのは間違いない。


 俺はフィティーの部屋を出るとすぐに会議室へ向かう。他国の王城とはいえ、2ヶ月もあれば道は覚える。何度も行き来したこの場を迷うことなく目的地へと駆ける。もしかしたら、という思いとともに。


 そして時間もかからず、位置につく。会議室にいるのは20名ほどの剣士たち。やはり予想は的中したらしい。


 そこには2ヶ月前、ルミウの始末した呪い人を捕まえる集団を指揮したというミストらしき男がいた。確信は出来ない。名前と神託剣士としか知らないからだ。彼は神託剣士として責務はまっとうするようで、決められた会議には出席している。


 何位なのかまでは知らないが、招集されるほどには強いようだ。


 会議室には守護剣士が護衛として立っているので、強行突破は可能でも、正式な段取りで入ることは不可能だ。なら待つしか無い。こんなことなら交代は少し後で良かったな。


 ――30分後、ぞろぞろと会議を終えた神託剣士たちが疲れた様子で出てくる。話し合いをしただけのくせに、仕事しましたよ感を出されると何だかこの王国の底が知れるな。


 おっと、イライラをぶつけてしまった。


 ここで再び気配を探る。が、残念なことに見つけられない。席を外したと同時に何処かへ消えていったようだ。もしかして俺に気付いたかもしれない。そうなればただ無駄な時間を過ごしただけになり鬱憤が溜まるだけ。


 最悪じゃねぇか!


 すぐにその場から離れると、サウンドコレクトを放った。放たれた波は俺の目的を探すために振動を続ける。しかし返ってくることはない。つまりは射程圏内にその気配を持つ人はいないということ。


 これはもう完全に見失ったか。そう思い、俺は同じ神託剣士に話を聞くか、一か八か方角を決め、その方向へ向かって一心に探しに向かうかの2択を頭の中で展開する。


 その中で決めたのは神託剣士に聞くことだった。まだ希望はありそうだしな。俺はため息を1つ吐くとすぐに重たい体を動かす。


 そして、会議室前に屯する神託剣士をランダムに選ぼうとした時、俺は久しぶりに驚かされた。気配は完全に消して壁裏に隠れており、サウンドコレクトでも対象ではないとはいえ、全く反応はなかったのに俺の背後に人がいたのだ。


 「はっ?!」


 流石に声が出た。敵なら死を意味するのだから。


 「ん!?」


 すると相手も同じように驚く。俺の存在に気づいていなかったような反応。絶対に意図して俺の背後にいたくせに。


 「誰だ?」


 身構えながら返答を待つ。一瞬で勝負がつくかもしれない。


 「すまない、驚かせるつもりは無かった。私は――マークス・バーガン。この王国の神傑剣士第1座に就く者だ」


 「……第1座だと?」


 180cmはある長身に髭を生やした40手前の男性。いや、彼は男性と言えるのか不明瞭なほど気派がイカれている。読み取れないのだ。安定をしてないが故の正確性を欠く流。わざとか否か……。


 しかしレベル5だとはギリギリ読み取れた。あのレベル6をも制するこの王国のレベル5第1座。その通り何もかもが不思議、いや、不可思議だ。


 気持ち悪いな……。


 「君になら疑わずとも信じてもらえると思ったが、そんなこともないのかな?」


 「……いいや、本当だとは思うがそれよりも気になることがあっただけだ」


 「ほう、と言うと?」


 「あんたがいつ俺の背後に回って、何故背後に回ったのかだ」


 何もかも知っているような雰囲気。それに掌の上で踊らせているような不敵な笑み。どれもこれも受け付けない。戦い方も同じなら第1座というのは頷けるな。これじゃ相手にしたくもない。


 「それは君の気づく0.2秒前と、君と同じ目的で私もここにいたからだ」


 「同じ目的?」


 「呪い人を捕まえては殺す集団について探っているんじゃないのかい?だから私もここに居て君もいるのだと思っていたが」


 「……なぜそれを?」


 「気配を消して意識を神託剣士たちに割いていたら誰だって勘づくだろう?」


 「なるほど」


 言われてみれば納得するようなことだが、そもそも俺に気づくやつはいない。誰でもなんてあるはずがない。まだ初対面で知ることは名前と性別とレベル程度。しかし俺の勘は要注意人物として扱えと言っている。


 「そんなことより、君は急ぐべき時じゃないのかい?」


 「あんたが話しかけるから止まったんだろ」


 「ははっ、それもそうか。ならばお詫びに教えよう。彼の行き先を」


 「は?知ってるのか?」


 「神託剣士第20位ミスト・グローリアのことなら調べはついている。もちろん私も付いていくが、その上で協力をしてくれると嬉しい。国務で彼らを追っていてね。心強い味方が欲しいんだ」


 「……いいぞ」


 「助かる」


 これがフィティーに関係ないことなら即拒否をしていた。こんな変人と一緒なんて何があるか……面倒に面倒が重なったかもな。


 こうしてこの王国の第1座と共同作業となったわけだが、とりあえずは天と地がひっくり返ってもヒュースウィットの第1座よりよく思えることは無さそうだ。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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