第六十一話 リベニアの質と鍛錬開始
「とりあえず、シルヴィアはルミウ、ニアは俺とフィティーの専属ってことで良いだろ」
「オッケー」
思いもしない客人に4人全員が驚いたが、全く問題事になるようなことではなかったことに、ホッと一安心だ。俺にとっては問題事にカウント出来るけど。
「では、これからの皆さんの主な活動についてお伝えします。これからは私の指揮の元に活動することになりますが、それは肩書きだけです。なので、各々好きなことを好きな時にしてもらって構いませんので、私に許可を取る必要もございません。ですがその代わりに、イオナ様とルミウ様にはこの王国の守護を、ニア様とシルヴィア様にはそのサポートを行ってもらいます。出現する魔人への対処も含まれておりますので退屈はしないと思います」
「その事は理解した。その上でちょっと聞いていいか?」
「はい、何でしょうか」
「この王国の神傑剣士は1から12までレベル6はどれだけ存在してるんだ?」
「現在の神傑剣士のレベル6は第2座、第4座、第5座、第7座、第8座の合計5名だけです。その他の神傑剣士は全員レベル5です」
「そうか、ありがとう」
第2座の性格が関わっているか、もしくは本当に第1座に勝てないのか、どちらか知る由もないが、レベル6がレベル5より劣るなんて俺たちの王国では信じられない。
確かにレベル5はレベル6に勝つことは出来る。だが、神傑剣士ともなれば腕は王国上位12に入るほど長けたもの。そしてこの王国は魔人に常日頃襲われるという危機感もある。その上で真面目に国務や任務に就かない剣士もいないだろうから、マジのマジでレベル6でも勝てないかもしれない。
刀を交えたいと思うのが俺の気持ちだ。
ちなみに、この割合が他国では普通だ。ヒュースウィットがレベル6に恵まれ過ぎているだけで、王国にレベル6は5人も存在すれば安全だと言われる。
長い歴史の中で神傑剣士が全員レベル6だったのは、俺達の世代だけ。色々と恵まれた時代に生まれたらしい。
「続けますが、私の指導よりも皆さんは自分自身のやるべきことを優先してください。私が依頼したとはいえ、皆さんの真の目的を邪魔してまで御影の地へ向かおうとは思いませんので」
「そこは大丈夫だ。俺はそもそもフィティーの師匠としてこの王国に足を踏み入れたんだからな。しっかりフィティーをレベル6として成長させるのが今の俺の目的だ」
「……そう言っていただけると気が楽になります。本当にありがとうございます」
俺の最終目標が御影の地へ行き、帰ってくること。ならばその間に何個も試練があることは覚悟していた。それに、そんな簡単に行って帰ってくる、もしくは行って死ぬ、なんてつまらない冒険をするためにここに居るわけでもない。
だんだんと朗らかになるフィティーは見ていて癒やされる。きっと今の俺も無意識に口角を上げているに違いない。
閉ざされた心を解放したり、幸せを知らない人間を助けるのは、その身になったことがある俺からすればとても嬉しいこと。
救うって言ったらいいのかもな。
「私からの話は以上ですが、イオナ様以外に、何か質問のある方はいらっしゃいますか?」
3人ともに、無いと声に出して伝える。それに、分かりましたと答えるフィティー。ほぼ同い年の女性と話が出来、増しては友達のような関係性を築けるのだから内心では、今よりも倍以上の笑顔を見せてるだろうな。
それを見てたら自然とやる気湧いてくるわ。
「よっしゃ、それなら早速、刀握って鍛錬に励むか!」
「はい、お願いします」
いつやるかなんて、早いに越したことはない。今はそんなに御影の地へ行きたいと思ってはおらず、どちらかと言わずともフィティーを成長させて、あの権力に溺れた老いぼれ国王を見返すフィティーを見たいと、そう思っていた。
「刀は後でニアに隅々まで体を調べられてから製作するとして、今からは気派の扱い方を教える。まぁ言っても基本中の基本なんだが、それが出来る出来ないでレベル6には後々天と地ほどの差が出るからしっかり体に刻むんだぞ」
「分かりました。集中して取り組みます!」
グッと力強く握り拳を作る。そこにどれだけの思いが込められてるか、それは俺に図り知れるものではない。いつか、フィティーが数多くの人間を見返す時に、だんだんと理解するだろう。
「っとその前にルミウ、頼みたいことがある」
「ん?何?」
俺はルミウに近づき耳打ちをする。嫌がる素振りは全く見せないので、ツンデレのツンを見たい俺は物足りない気持ちを少し持つ。
「分かった。なるべく早く持ってくる」
「ああ、助かる」
耳打ちの内容は今後、フィティーを成長させるために活躍してくれるアイテムだ。この世界からは少し考えにくい、そんなマイナーなものだが、だからこそより質のある鍛錬が出来る。
「後、ニアにはオリジン刀を、シルヴィアには黒真刀をそれぞれ一本ずつ頼みたい。期間は出来るだけ早くだ。寝る時間を削るまでしなくていいからな」
「オッケー」
「了解です」
ヒュースウィットとリベニアの刀の材料は違う。いや、質が違う。どちらが俺の手に馴染むのか、それを知りたいがために2人を利用するのは良くないが、後で報酬をあげるとして目を瞑ってもらう。
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