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第四十七話 本領発揮




 俺が指示された場所に刀を下げて立ち、歓声もヒートアップしてきたとこで、リュートは俺の反対側で胸を張り、堂々とした腕組を披露する。


 絶対に敗北しないと知っているから余裕を見せている。が、驚いているのも多少感じる。なんせ今までイジメにイジメたレベル3の弱者に指名されたんだ、俺ならドMを極めし者の領域の指名かと思う。


 「よぉ、弱虫くん。何でこの場で俺を選んだんだぁ?もしかして勝てるかもしれないって思ってるんじゃねぇだろうなぁ?」


 少し高い目線を俺の目線に合わせるために腰を曲げる。


 いつまでこの挑発を続ければこいつは成長をするだろうか、何度も同じやり方でイジメれる精神も中々のものだ。ガキが。


 「勝てるって思ってないぞ、勝てるって()()()()()んだよ」


 今までの怯えながら反抗する俺ではない。今の俺は本当の俺だ。誰からも制限を掛けられていない。ならば、この瞬間から存分に解放していこうじゃないか。


 「言うねぇ。虚空が使えるからってそれだけで慢心してるのかよ」


 いやっ、それはお前だろ。こいつブーメラン投げるの好きだけど、返ってくるものとは思ってないのかよ。笑えてくるからやめてくれ!


 普段と違うのは話し方。それだけではただイキってるレベル3たしか思われない。だからリュートも、今の俺に何の恐怖も抱かない。


 「慢心……そう言われるなら俺は虚空無しで戦ってやっても良いぞ」


 「……ははっ……ははははっ!!お前おもしれぇこと言うじゃんかよ!」


 「いや、面白くないだろ。今笑ってるのお前だけだぞ?気色悪っ」


 「ゴミクズが……開始と同時に戦闘不能にしてやる」


 初めて面と向かって煽る。こんなにも気持ちいいものなのかと、リュートの話なんて耳にせず天を仰いでストレスが発散されるのを感じる。


 この気持ちを何度味わいたいと思い願ったことか……!


 「出来るといいな、ゴミクズくん」


 ゴミクズと言われる俺に負けたらリュートは何と呼ばれるべきだ?ゴミクズ以下ってどんな立場なのか勝った後に聞くとするか。


 俺らの会話なんて闘技場の誰にも聞こえない。悪口を言っても、わざと負けろと八百長しても気付かれない。だから俺も爆発させている。神傑剣士に聞かれても気にすることはなにもない。


 全て神傑剣士によって進行される一騎討ちに審判は存在しない。開始の合図は第1座から第12座が順番で行う。気派を読める剣士なら、遠くからでも準備完了か否か分かるので困ることもないのだ。


 俺らの担当はレントのようだ。


 「ほら、構えろよ。すぐ戦闘不能にしてやるんだろ?」


 右手は制服のポケットに突っ込み、左手は鞘を支えるだけ。誰がどう見ても準備万端ではないように見えるが、実はこれが俺の万端なのだ。


 「はっ、ゴミクズが。そんな敗北してぇなら戦闘不能じゃなくてぶっ殺してやらぁ」


 どんどん燃えてくれ。そしてその熱が冷めたとき、結果が楽しみだな。


 レントが左手を振り上げる。歓声を止め、静寂を作れという合図。それに国民は即座に応じる。瞬間移動させられたのかと錯覚するまとまりだ。


 左手が下げられると同時に銅羅が鳴らされ、俺たちの一騎討ちは始まる。俺とリュートは音、その他はレントの左腕全体に意識を割く。


 そして、ぶんっ!と下げられたようだ。ドォォンと守護剣士が低い音を俺らに響かせ、確かに耳で捉えた。


 「おらぁ!業火の太刀!!」


 以前よりも格段とレベルアップしているのが分かる。右足の踏み込みが、地が凹むほど力まれ、10mの間合いを詰められるスピードが倍に感じる。


 だが、感じれるのだ。俺にとっては速くはなかった。


 「相変わらずヌルいな、お前の熱は!」


 目視不可能の速さで抜刀し、左肩目掛けて振り下ろされる太刀筋を読み、片手でそれを往なすのではなく止める。熱は伝わるが、それは気派で流れを変えているので熱すぎるとまではいかない。


 余裕顔で受け止めた俺に、はぁ?と信じられないという面持ちのリュートが、目の前でデカイ顔を歯を食いしばることでもっとブサイクにしていた。


 「後5年鍛錬すれば、この刀に1mmの刃こぼれを作れたんだけどなー、惜しかった惜しかった」


 気派でコーティングした黒真刀。それはもう四星刀全ての長所を集めた刀と化する。オリジン刀が無ければこの世界最強だっただろう。


 「はぁっ、てめぇ何を……」


 偶然ではない、奇跡ではないと目で見て理解してるので認めざるを得ない。目の前にいるのはレベル3のゴミクズだ。それがレベル5の剣技をあっさりと余裕顔で止めた。信じ難いのを無理矢理信じさせられる気持ちは形容し難い。


 言葉に詰まってもその先の言葉が見つからないから、もうリュートから発せられることはなかった。


 やり返しだな!


 「見て分かる通り、俺の実力でお前の刀を受け止めた。ただそれだけのことだろ?それを理解出来ないのは、幼児退行してるお前の脳みそが悪いんじゃないのか」


 「……くっ!黙れぇ!!」


 日頃無意識に鍛錬しているからか、殺意を込めた連撃は止まることは知らない。それに業火の太刀よりほどではないが、近しく太刀筋がキレイだ。


 努力はしっかりと力に出来るタイプらしいが、それを知らないなんて宝の持ち腐れだな。


 盛り上がる国民に対して、満足気の表情を見せることのない神傑剣士。そんなに俺に期待しているのか、メンデなんて欠伸をしながらまだかまだかと待っている。


 あの怠惰野郎、終わったら絶対に感謝してもらうからな。


 つまらない連撃に付き合うのもそこまで。いい加減俺も憂さ晴らししたくなった。だから――ここからが俺の本気だ。

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