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第三十三話 第8座ボーリ・エイル




 「帰るなら私の話を聞いてから帰ってくれ」


 「……お前な、何回その開け方すれば気が済むんだよ。そろそろぶっ壊れるぞそのドア」


 「あぁ?知らねぇよ。壊れたらこのドアが悪いってことだろ!」


 「……手に負えないな」


 責任を取る気はなく、この登場に謝罪する気のないこの女。名をボーリ・エイル。神傑剣士第8座に座する29歳の天才剣士だ。異名は堕天の剣士。


 エイルは男勝りな性格で、基本単独行動を好む戦闘狂のような剣士。実力は言うまでもなく、オリジン刀を使うが最近は主に激甚刀でありとあらゆるものを破壊しまくってるバケモノだ。


 俺もあまり戦いたくはない相手の1人。


 だって満足するまで戦わせられるんだぞ?最長で18時間とか聞いたんだが、そんな戦ったら体力尽きて動けなくなるわ!


 そんなエイルは俺と同じ、気派に限界がない特異な体質を持つ。俺がジェルドとの戦闘で見せた気派の壁、あれを優に超える気派を扱える最強の気派使いである。


 11歳差は簡単に埋めれるわけもなく、気派の勝負でエイルに勝てたことは1度もない。


 悔しすぎな!


 「それでエイル、貴女が何故ここに?」


 「そうだったな、天才剣士2人がイチャイチャ国務をやってる時に私はデズモンドの居場所を突き止めに動いてたんだよ」


 「よく分かったな。俺とルミウはラブラブなんだぞ」


 「イオナ、死ぬ?」


 「あっ、誠に申し訳ありません」


 とてつもない殺意を向け刀に手を置くルミウ。今抜かれたら絶対に死ぬ。そう悟った俺は一旦落ち着く。


 流石のエイルも、デズモンドの居場所を突き止めたことよりもイチャイチャに反応されるとは思っていなかったようで、しどろもどろだった。


 そう!この第8座、バカであり意外と押しに弱い隠れ乙女である!


 癖強すぎだろ!神傑剣士の女性はよぉ!!


 「話を戻して、エイルの突き止めた場所についてだけど」


 「あ、あぁ。デズモンドの居場所だが、やつはルーフの真反対にある都市・シードに拠点を構えているみたいだ」


 「シード?これまたここから遠いな」


 ルーフの2倍は時間が掛かるシード。そこではあまりいい噂は聞かない。魔人が最も出現する都市であり、犯罪者も多く潜むと言われる、まさにプロムが拠点にするにもってこいの場だ。


 1度行ったことがあるが、その時は刀を盗まれた。初めてニアに製作してもらった刀だったから必死に取り返そうとしたが、素性を隠している俺に出来ることはなく見失ってしまった。


 突然の来訪者は嫌なことを思い出させるもんだな。それもエイルとか何もかもが完璧に繋がっているようだ。


 「だから、こっからは天才剣士の出番ってわけだ。私は出来るだけのことはやった。ホントは私が始末したいけど今回ばかりは我慢しないとだな」


 国務を裏からサポートする。それがまさに今、エイルがしてくれたこと。ルミウが調べ上げたことは全ての神傑剣士の耳に行き届く。だから共有も出来て、すれ違いもない。


 「天才剣士っていうのやめろよ。お前の方が天才だろ」


 気派はな。


 「それは当たり前だ!お前なんてボコボコに出来るからな。フリード卒業したら7座と8座が交換されてる未来が見えるぞ!」


 「はいはい、どうせ勝てないって。前自分で言ってただろ?お前に勝てる気がしないって」


 「あれはたまたま私の調子が悪かっただけだ。成長した私はもう負けねぇな!」


 お互い真剣ではなかったので確かなことは言えないが、刀を交えればどれほどの実力が隠されているかすぐに分かる。だからハッキリ言える。11名の神傑剣士に俺は負ける可能性もあると。


 「2人ともいいから。それは後にしてシードに向かう準備をしないと。1人で向かうわけじゃないんだから」


 「ルミウも付いてくるのか?」


 「私はイオナがデズモンドと戦闘中に幹部を相手にするから、1人では行かせないよ」


 「やっぱりお前ら2人アツアツなのか?」


 「もちろ――そんなわけ無いじゃないですか……ね?ルミウさん」


 もうエイルが聞き終えた段階で抜刀の準備を終わらせ後は抜くだけだった。


 あぶねぇ!マジで死ぬって。デズモンド処理よりも怖いし死ぬ確率あるわ。


 「君たちはもう少し神傑剣士としての威厳を叩き込まないとダメそうだね」


 「あっ……」


 流石に遠慮したい。ルミウの指導に耐えれる剣士を見たことがない。エイルも遠慮するぐらい厳しい。


 ちなみに、そんなルミウだが、エイルに3戦3勝としっかり力で捻じ伏せている。エイルも認める猛者であり、唯一負けたのが俺だけらしい。流石は1座。


 「はぁ、今度こそ私はお暇させてもらうよ。何かあったらフリードに出向くからよろしく」


 「了解」


 次はリュートをボコすことはない。ただテンランとお喋りする(ついで)に俺と念話をするだけだろう。


 「私の努力無駄にするなよ美人剣士!」


 「止めてエイル」


 静かにドアの先へ消えていく。


 殺意は無かったものの嫌がる素振りは見せた。本気で嫌がってないとこ、ポイント高い。


 「私も行くとしよう。またなイオナ」


 「ああ、またな」


 こうして見れば美人剣士なんだけど、どこで定着したのかあのカッコよさは……好きだから良いけど。


 「あっ、そうだエイル」


 「ん?なんだ?」


 「今日も美人だな」


 「なっ!……だ、黙れ!う、嬉しくないからな!」


 これを見とくだけで幸せになれる。まだ俺は18であり、子供と言われても変ではない歳だ。そんな俺にだから出来る技がこれだ。歳上キラーと呼んでくれ。


 別に可愛い顔してるわけでもないんだけどな!


 恥じらいを見せながら、頬を赤く染めながら退出するエイルを見送って俺も会議室を出るとする。もう夜中も夜中、こんな時間に昼間のテンションを出すのは良くないな。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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