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第三十二話 総括と国務終盤




 そしてしっかりご褒美を回収した俺は話を戻して国務へと切り替える。


 「そろそろ席に付いて話をしないと長引くだけだぞ」


 「……君はホントに可愛くない……」


 「男に可愛さはいらないんだよ」


 馬乗り状態のルミウを冷静にしてやる。これはネジを外した俺の仕事だ。しっかり第1座として戻してやらなければ。


 別にこのままでも良かったけどな。


 流石に国務に支障をきたすのはよろしくない。1秒でも早い解決が望まれる国務だ、じゃれ合いは後に回さなければな。


 そう、後に回すだけ。しっかり回収はする。


 「ふぅう……。それじゃ確認を色々とするからしっかり聞いててね」


 「了解」


 「まず、私の件から。書物で過去の事件について調べが付いたことは特に無かった。だから直接プロムと会って解決の糸口を見つけるしかないと判断した私は、短刀を製作する刀鍛冶を捕らえ拷問した。そしたら見事に依頼主を吐いてくれたよ」


 ルミウの拷問……ご愁傷さまです。


 「それで誰だった?」


 「ジェルド公爵だったよ」


 「……あーはいはい。なるほどね、俺にも分かってきたぞ」


 「だからジェルド公爵の裏を全て調べさせてもらった。接触したヒュースウィットの貴族から他国の貴族。ヒュースウィットの刀鍛冶と情報屋、ありとあらゆる可能性が考えられる者全てを調べ上げた。その結果名が出た。『デズモンド・バート』ってね」


 ジェルドを暗殺に向かった時、神託剣士の姿が無かったのはそういうことか。ルミウの指示によって裏を探っていたのだろう。いつ如何なる時でも先を行かれるのは不甲斐ない気持ちが芽生えるものだ。


 「なら、もう残りはデズモンドだけなのか?」


 「うん。私の方でその他は始末した。君に会うたびここに居るからずっと書物を漁っていたと思ってるだろうけど、そんなことは無かったよ。偶然タイミングが重なっただけで、意外と仕事してたんだ、私は」


 「運命ってことか?」


 「……私の失言だが君には黙ってもらいたいよ」


 「冗談冗談。今の話を聞いて正直驚きの連続だ。何から何までルミウがしてくれたから俺はスムーズに任務に当たれたんだからな。マジで感謝してるありがとな」


 「……はぁぁ、気疲れが凄いよ。君は変だ……」


 「それはどーも」


 俺を罵りつつも、顔が赤いのは秘密にしておく。声に出せば刀が抜かれる。


 照れやすい女性で気が強いのはツンデレの頂上だな。


 ちなみにルミウは170cmの身長を持ち、見た目に似合いすぎる顔とスタイルをしている。これぞ完璧と言わんばかりの容姿をしている。


 「こうなれば俺の説明は聞かなくても良いだろ?」


 ルミウの指示で動き、結果予想通りとなった。つまりルミウの掌の上なので分からないことは俺がどうやってジェルドを殺したか、ぐらいだ。


 これが神傑剣士、そしてその頂点に君臨する剣士。


 仕事を真面目にすればここまで普段の国務と違うのか、と変化に驚くこと今日5度目。


 「そうだね。苦戦もしなかっただろうから聞いても面白くない」


 「だな」


 お互いに未知から進められた国務も終盤へと近付き始めた。全てはルミウによる進行の元だが、結果として最速で解決への道を進んでいることには変わりないだろう。


 残すはプロムと確定されたデズモンドの処理だけ。


 しかし、よく考えればルミウの暗殺を俺が代わりにやっていたものだから、実質俺の関与なしで国務をやり遂げたってことだよな。


 ちょっぴり悔しさを噛み締める。


 「次の頼み事が多分、最後になると思う」


 「俺にデズモンドの処理を頼むのか?」


 「国王も言っていたが、君の学園生活で溜められたストレスは発散しなければ今後に支障をきたす。だから思いっきり刀を振ってほしいんだよ。それに君に託すのがより確実じゃない?」


 「だから、俺を信じ過ぎだって」


 「良いじゃない。君を信じ過ぎることで私たちは心の余裕を作れるんだから」


 「はぁぁ、それなら良いんだけど」


 照れ隠しのため息だ。信頼を寄せ合う仲間だから胸に響くというか、決意をしやすい。俺は仲間のために動くんだって決めたらその通りに体が動いてくれる。


 今は過去よりずっと恵まれた環境に居るようだ。


 「それじゃ、私はこれからデズモンドの居場所を探し出すからそれまで君は何もせず待ってて」


 「それだと申し訳ない気持ちが溢れて来るんだよな……」


 「仕方ない。君は初めての国務で、やり方を知らないんだから」


 「これまた貸1つか」


 「いや、貸しなんて作らなくていいよ。君にも私の国務を押し付けてるんだからプラマイゼロだよ」


 「そうか」


 進んで国務に取り組みたい気持ちは山々の山々なんだが、それ以上に失敗が許されない、遂行率100%の国務に参加しているんだ、これ以上の我儘は無理だな。


 「では、ここで失礼す――」


 「はーいちょっと待ったぁ!!」


 バコーン!と、ドアを開けるだけで20mは離れた俺らの居る場所まで、強風が届くほど強烈な登場をする。


 いきなりのことにルミウと俺は自然と抜刀の準備をしていた。何より油断していたのだから抜刀していてもおかしくないが、そうはならなかったのはきっと、だんだんと()()に慣れて来ているからだと理解した。


 こんなことするのはあいつしかいないよな……。


 ホントに常識が無いっていうか、自由気ままに行動するってか誰にも染められない神傑剣士だな。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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