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第三十一話 遂行報酬




 任務完了。


 思っていたより苦労する相手ではなかった。これも違和感と言えばそうなる。俺の実力が上回っていたのは知っているが、それでもあまりにも苦戦しなかった。


 素直に喜べもしない。これが調査不足故の気持ちかと、初めての国務の壁にぶつかる。


 一騎討ちだけなら国務として俺が最強なのだろうが、それ以外は全て最下位だな。歳も若く、人生経験もない俺が20を越える神傑剣士に肩を並べれるわけもない……か。


 もう、無理ぃ!!


 想像以上の国務と、実力不足をこの場にて証明させられる。


 今の俺は包丁を誰よりも上手く握れ、誰よりも上手く扱えるだけに過ぎない。その後、料理へと移行するとなると意味を成さず、作業が全く手につかない。


 慢心してたのは俺もだな。


 しっかりとその場にて反省をする。忘れないうちに頭に俺の欠点を入れる。そして体にも気派を使い染み込ませる。こうすることで今回の戦闘の経験を活かすことが出来る。


 流の掴み方をより効率良く出来ないか、感情のコントロールを正しく行い揺れを減らすためにはどうしたらいいか、と、今浮かべるだけでも相当な数ある。


 模擬戦でも申し込んで見るか?


 経験値を得るなら間違いなく神傑剣士に模擬戦を申し込むこと。しかし忙しいのでなかなか叶わない。


 平和になってくれよ……ヒュースウィット。


 我儘な願いを吐いたとこで俺は部屋を出る。出てすぐ右には新米守護剣士がいた。律儀なものだ。


 「少々時間が経ってしまい申し訳ない」


 「いえ、問題ございません」


 「この出来事は貴方の直属の神託剣士に報告してください。内容は、ジェルド公爵が何者かに暗殺された、そうお伝えください。私のことはもちろん隠して」


 暗殺とは言い難いほど騒がしくしてしまったが、近くに国民は居ない。それが唯一の良かったことだな。


 ルーフから少し離れた崖上にあるこの貴族家、普通ならあり得ない立地がこうも役に立つとは。自分の首を絞めたものだ。


 「畏まりました!」


 俺を疑うこともしない。それほど神傑剣士の印は信頼されている。


 俺に一礼し、背中を向け走って行ってしまった。こうやって見ると、俺が絶対に歳下なのに成長を見守りたいと思ってしまう俺は嫌なヤツに思えるのかもしれないな。


 嫌味ってやつだ。


 こうして俺の任務は終了となる。ここに来る前、ルミウから聞いた話では危険度(フェム)ということだったが、それ通りの任務だったのかは俺の経験不足により不明のまま。


 戦った勘で言えば危険度(クアトロ)ぐらいだったな。


 ――俺は死体をそのままに、王城へと帰還した。


 「相変わらず張り詰めてるな」


 更に山積みされた書物と見慣れた目の前に、ルミウの緊張感は消えていなかった。焦りは見られないので、危機が迫っていることもないのが分かる。


 ホッと一息つき席に付く。


 「おかえりイオナ」


 「ただいまルミウ」


 「……何だか気味が悪いよ。そうやって私の目を見ておかえりなんて……洗脳でもされたの?」


 辛辣女王の誕生だな。


 え?辛辣じゃないって?いや、俺の幼気なメンタルじゃ辛辣に含まれるんだよ!


 洗脳なんて見ればされてないことなんて分かるくせに、いじわるをするのがお好きなようで。こういうとこも好きなんだよなー。俺、やっぱりドMか?


 「キレイな顔には惹かれるのが当たり前だろ?今更何言ってんだよ」


 「……やっぱり君は変だ。これ以上関わると危険な匂いがする」


 「だから、ルミウが居なくなったら俺の関わる友が減るだろ?やめてくれよ」


 ルミウを追い詰めるのは止められない。ルミウは褒めれば褒めるほど可愛く、そして距離も縮まる。


 「だったら私がこれから国務に励めるようにお茶でも――」


 「はい、お茶。疲れてるんだろ?休憩しても良いんじゃないか」


 「……やっぱり今日の君は変だ!絶対に変!変だ変だ変だ!!」


 信じられないことの連続で頭のネジが飛んだらしい。ルミウあるあるの1つでこれで3桁行ったんじゃないかレベルに見ている。


 先読みしてルミウがお茶を欲しているのを知った俺はここに来る前に、ちょっくら寄り道をしてきたのた。そして今に至る。


 先読みは簡単。ルミウをこう褒めちぎれば照れ隠しにお茶を持ってきてと言うのはルミウ本人以外、神傑剣士全員が知っていることだ。だから褒める気でいればもう掌の上で踊ってくれる。


 可愛くねぇ!?顔はクールビューティだけど、性格は可愛くねぇ!?


 俺の心の中は満足している。


 「はいはい、落ち着けよルミウ・ワン。第1座がこんなんだと示しがつかないだろ」


 20歳はまだ全然若い。そんな女性が王国の顔として、象徴として、頂点として君臨しているんだ。日頃のストレスや耐えられないプレッシャーを無理に抑える行為は計り知れないものがある。


 だからたまに俺たちが発散させてやる。


 これがWin-Winの関係と言うやつだ!


 「だから君はやりづらい……」


 ゴクッとお茶を一気飲みする。相当溜まっていたようだ。こんなにも珍しい1面を見せてくれるなんて、普通じゃ考えられないな。今後良くないことでも起きなければいいが。


 フラグ立ててるわけじゃないからな?!まじで面倒なことだけは止めてくれよ!?


 「落ち着いたら俺からも話をするから。それまで仲良く休憩しようぜ。――ルミウの上に座っていいか?」


 「ダメ。君はもう18なんだよ。そんな子供じみたことはするもんじゃない」


 「誰だって美人の膝の上には乗りたいだろ」


 「……イオナぁ!!!」


 顔を真っ赤にして襲いかかる。避けることも全然出来るが、わざと回避しないのは俺へのご褒美だ。

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