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第二十六話 刀と最優の刀鍛冶




 「期限は決めてないけどなるべく早くがいいと思う。君もそうしたいだろうから」


 「明日学校が終わったらすぐ向かうよ。やり方は夜なら自由でいいんだよな?」


 「君が死ななければ何でもいいよ」


 「ははっ、了解」


 死なないことを誰よりも1番理解してるくせに。ツンデレだな。


 今日はもう夜遅くであり、久しぶりの戦闘に体力を持っていかれた。虚空も使ってしまったし神級剣技も使ってしまった。まだ剣技は使えるが万全ではない。なにより学校があるので登校は必須。皆勤賞ゲットに向けてな。


 「それじゃ帰るけど、ルミウも無理は絶対にするなよ?」


 「うん、分かってる。いつもありがとうイオナ」


 「ああ」


 俺は基本神傑剣士のことは名前で呼ぶが、ルミウのように「君」と呼んだりする剣士もいる。そんなルミウだが人を名前で呼ぶ時は機嫌が良く、気に入っている相手しか名前で呼ばないらしいのでそれを知る俺は今嬉しすぎて死ぬ寸前。


 優しく名前で呼んでくれるもんだからまたまた好きになりかけるだろ。さすがは神傑剣士人気No.1だな。イケオジメンデに勝てる唯一の神傑剣士だ。


 メンデはイケオジの立場が無くなれば何位に落ちるのか気になるな。今度それでイジってやるのもありかもな。


 なんてことを考えながら今日1日を終えた。夜遅く帰ってもテンランは起きていてご飯も作ってくれた。


 まじ神傑剣士の女性陣みんな好きになっちゃうんだが?


 ――翌日、学園から戻る際に俺は久しぶりにニアに引き止められていた。


 「先輩!」


 「ん?おぉ、ニア。久しぶりだなどうした?」


 ホントに久しぶり。最近はイジメられる時間が減少したため早く帰るようになり、その結果ニアとは会う機会がなかったのだ。


 フリードの2年、それも刀鍛冶なら俺たち剣士候補生と違って遅くまで残らされて授業や講義といったものを聞かされる。俺なら耐えられず逃げ出すレベルの拘束。


 「先輩のオリジン刀、整備し終わったので持ってきました」


 「そっか、頼んでたな」


 オリジン刀。それは四星刀と呼ばれる、この世界で一般的な【黒真刀(こくしんとう)】【刹那刀(せつなとう)】【久遠刀(くおんとう)】【激甚刀(げきじんとう)】の他に専属刀鍛冶によって作られる唯一無二の自分にしか扱えない刀だ。


 刹那刀は素早さ重視の壊れやすく威力も小さい、でもどの刀よりも扱いやすい刀。刀身が短い。


 久遠刀は耐久性重視で壊れにくいが威力はそこそこ。扱いやすさは平均的な刀。刀身が長い。


 激甚刀は一撃がとても重く力のある剣士でなければ扱いにくい刀。刀身は短い。


 「おぉ、めちゃくちゃ良く出来てるじゃないか!」


 俺はオリジン刀を好んで使う剣士だ。そのため良く整備に出すのはオリジン刀になるのだが、ニアはレベル6の俺にでも扱える刀を持ってくる。天才なのは重々承知しているが、天才として括れる以上の才能を持っている気がする。


 「ホントですか?嬉しいです!」


 あら、可愛い笑顔だこと。


 こんな美少女で秀才のニアを侮辱したあの男を俺は許さない。と、再び過去の嫌な記憶が蘇る。忘れたくても忘れられないのが憎しみというものだ。いや、憎しみとまではいかないか。


 所詮は弱者による能力値の測定ができないことによる過小評価。イジメをするやつはレベルが高けれど扱う才能は追いつかない。


 「また整備だしたら頼むよ」


 美少女に触れる機会は少ないんだ。頭を撫でておこう。


 えへへと喜ぶニアはルミウとは違った良さがある。歳上と歳下、んー俺ってどっち派なんだろうな。


 「先輩、1つ聞いても良いですか?」


 満足したのか、笑顔からスンッと落ち着いた表情に戻った。


 「うん、良いよ」


 「先輩はフリードを卒業したらどうするんですか?」


 「フリードを卒業したら……か」


 ホントならもう決まってる。国を出て冒険に出掛けると。そしてその際には神傑剣士として地位を確立させていることも。


 これをニアにも伝えられないのは嘘を付くということだから乗り気ではないが仕方がない。


 「守護剣士にでもなって、上に上に貪欲に成り上がって行こうかな」


 ありふれた答え。きっと何人もフリードの3年に同じ考えをしたやつはいる。特に秀でた才はないから守護剣士にでもなって安定を取ろうかな、なんて思うだろう。それと同じだ。


 「そうですか……なら私も先輩の専属刀鍛冶として同じ道を追います!1年遅れてですが、きっと先輩のいる場所に!」


 おいおいおいおい!めちゃくちゃ良い子じゃないですか!いや、知ってたけどね?それでもこれほど良い子と思える発言をしてくれたことに俺泣けるぐらい嬉しい!


 口に出したいが、それも卒業前、神傑剣士として名乗れる時まで我慢だ。


 「そうか。ニアなら俺の隣なんて簡単に来れるさ。だから待ってる。今からな」


 そう、今この瞬間からだ。たとえ俺が1年先に旅に出掛けたとして追いつけないことはない。ついてくるのなら俺は拒否らない。


 守れる自信があるから?いや違うな。ニアがついてきたいって本気で思ってるからだ。なら俺も生半可な気持ちでその気持ちを無下にしない。覚悟を決めた人間はその時から芯が固まってる。それを俺は知ってる。シャルティ・ニアがどれほどの覚悟を持って追い付くと言ったのかが。


 「はい!待っててください!」


 今日は元気なニアを見れて良かった気がする。あ、これがルミウのご加護か?それならめちゃくちゃありがたかった。


 「では、私はこれから講義があるので」


 「ああ、頑張れよ」


 「またね!イオナ先輩!」


 あー、ルミウの次はニアに名前を呼ばれるか。良いことあり過ぎてこの先怖いな。


 満点の笑顔を見せたあとニアは俺に背を向け走って行ってしまった。俺もそれに応えるようにニアに背を向けた。

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