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第二百四十一話 新たな




 忍を襲う理由……やはり見当もつかない。元は隠密を心がけ、王国にすら姿を見せない幻とも言える存在が、突然襲われるとなると、絞られはするが確定はしない。


 今、4ヶ月の期間を経て精霊種というバカげた集団を取り憑かせようと躍起な王国たちが、今になって襲撃……依り代か?


 「忍でも、サントゥアルの領地に居たんでしょ?なら、元々敵になる予定だし、見過ごして良いんじゃないの?」


 「いいや、稀有で優秀で、いずれヒュースウィットに尽力してもらおうと思ってた存在で、忍とは友好関係を築いてた。だから失われるのは勿体ないんだよ」


 ヒュースウィットといえど、完全に犯罪がないなんてことはない。比にならない犯罪は二桁は行われてるし、5000万もの民の問題を、全て解決出来るわけもない。だから忍を密かに勧誘することを考えていた。


 「お前、本当に魔人の血が入ってんのか?」


 「半分()()な。メンデ、お前にも分けてやろうか?」


 「混血にはなりたくねーから遠慮する」


 忌み嫌われる魔人に、腐っても神傑剣士が成り下がるわけもなく、断固拒否だ。しかし、そんな唾棄するべき存在である俺に対して、優しく寄り添ってくれるのはやはりメンデらしい。


 「あっそ。取り敢えず、少し計画が狂ったのは否めない。忍が襲われたのであれば、それだけ危機は迫ってることになる。依り代にされたならもっとな。だから、大会が終われば即座に避難へ移る。それぞれの区域を担当し、神託剣士を動かして避難を迅速丁寧に行うから、その準備と覚悟をしてくれ」


 「することは何かあるか?」


 「今、ここからこれ以上誰かが抜けるのは良くない。だから、今から、とはいかないけど、終わってから俺が国民に対して話をする間に動き出せるよう指示するのは必要だな」


 「了解。なら私がその指示を伝えに行くよ。神託剣士に先回りしてもらえばいい?その方が、それぞれの神傑剣士たちが指示しなくても動けるでしょ?」


 「そうだな。頼んだ、ルミウ」


 「うん」


 この闘技場に居る国民以外は、外を見れば明らかに違和感を覚える数の剣士が、住宅街を囲んでいる、若しくは歩き回っているだろう。


 これから始まるのは、そんな違和感や不思議で拭えるほど、易しくもない殺し合いだ。国民にはそれを背負う必要はない。全ては神傑、いや、俺とカグヤが背負うべき憎悪の魂。


 この先、俺とカグヤが死ぬか生きるか、それによって国民の安否も左右される。つまり、5000万と1800万を背負っていると言っても過言じゃない。


 ったく……どうなるんだろうな。


 大会はそれでも続いた。他国が我が王国を壊滅させようと企んでいることを知らず、ただただ盛り上がって。その傍ら、全容を知る者は表情に輝きはなく、ただ、優勝する者がこの王国を救ってくれと、そう懇願するばかりだった。


 2回戦、3回戦、4回戦、準々決勝、準決勝、決勝と続き、ついに最後の試合、これに勝てば第12座に座れる猛者となる、最大の盛り上がりを見せる勝負。そこに立つのは、フィティー・ドルドベルクと、フィティーに決勝まで当たらないくじ引き運の強かった、現フリードの副理事長ダウティ・ウェインだ。


 「ウェインって、まだテンランの下に居たんだな」


 「逃げ出さないからね。神傑剣士()のお願いは絶対だし」


 「その上で、最後、手が届きそうなとこで負けるのか。結構悲しい人生歩んでるんだな」


 流石に同情する。ウェインのことは、2度話した程度で、性格を熟知してることはないが、激務に追われる辛さは共感出来る。


 圧倒的に不利な現状。名はフィティーよりも知られていて、神託剣士の一桁席なので、それなりに人気はあるのに、これまでそんなウェインを超す猛者を倒してきたフィティーに、オーディエンスは味方していた。


 「さぁ、私たちは仕事に取り掛かる準備だよ」


 「最後は俺だけで終わらせるから、残りの暇人たちは離れていいぞ」


 「あぁーこれからぁ、またぁ、激務かぁぁぁ」


 「気合入れれば、少しはその気怠げさも抜けるだろ」


 「戦闘じゃないなら意味ないしぃぃ」


 と言っても、しっかりと任務は果たすレント。


 「それじゃ、任せたよ、イオナくん」


 「はいよ」


 ノーベは唯一俺を「イオナくん」と呼ぶ。優しさがあって、根っこから善人なのだと知っているが、いつも違和感を覚えて、悪巧みをしているのではないかと考えてしまう。気持ちを調べても、考えを調べても、何もかも善人だけど、何故か疑ってしまう。


 そうして、友達0人になり、フィールドで戦い続ける2人よりも、俺以外が退席したことに首を傾げる闘技場内の国民たち。注目を浴びるのは好きではないが、こればかりは仕方ない。


 「ルミウ・ワンの後継者、フィティー・ドルドベルク、か。中々似合ってる」


 最年少神傑剣士として名を連ねた時に、圧倒的な力で闘技場を喧騒に包んだルミウ。それを再び目にしているようで、過去の記憶とはいえ、()()のことは、まだ鮮明に覚えているんだと思わず笑ってしまう。


 鮮血の代わりに火花が散り、決着までそう遠くない時間経過のもと、フィティーの刀はウェインの刀を両断して決着をつけた。その瞬間に誕生するのは、ヒュースウィット建国以来、唯一の王族神傑剣士、そして唯一の他国王族の神傑剣士。


 「ふっ。そうなるか」

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