表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

240/258

第二百四十話 異変




 「王都の復興にも時間は必要だし、それだけこれから激務が待ってるぞ」


 「別に、それは良いんだよ。星座が変わらないことが、悩みなんだから」


 もしかしたら、ブニウより先、第6座以上がランクダウンすることだって考えられる。もし、戦争を勝ち抜いて新たな神傑剣士を選抜するのなら、きっとそれは確実に近い。


 とはいえ、3王国共に、神傑剣士で対抗するだろうから、それだけ神傑剣士が死ぬということでもある。猛者が死ぬなら、星座も失われはしないだろう。


 そんな話をしている間にも、フィールド内では激しい戦闘が行われている。俺たちの喋り声なんて、喧騒でかき消されてしまうほど盛り上がっている。


 「蓋世心技、使えるやついねーのかよ」


 「選抜したこいつらに聞けよ。1回目に入れてんだから、それは把握済みだろ?」


 「んじゃ、ルミウからレントまでにレベル6入れたって人ー」


 神傑剣士とは思えぬ、溶けた姿勢で威厳も気品も欠片も見せないエイルは、怠惰を気にせず聞いた。


 「4人だ。私が全員を確認したところ、たった4人だけだったな」


 「うおっ、居たのかよ」


 それに答えたのはカグヤ。神傑剣士だけが入り、座ることを許された空間に、唯一許された存在。壁際の柱に背を掛け、鷹揚とした雰囲気を醸し出して、人間を唾棄するように言った。


 「私が生まれた王国、まぁ、今ではこの王国なんだが、ここも廃れたな。昔はレベル6なんて神託にも多く居たぞ。今になってはイオナとフィティー除いてたったの14人、か。笑えるな」


 「仕方ないよ。昔存在した、歴戦の猛者たちは全員血を継がずに死んだんだから。今では私のリュンヌの血が最強であり唯一。気にするなら、派閥争いに君が首を突っ込めば良かったのに」


 ルミウの言うことは正しいのかもしれない。かつてカグヤの存在した世界。カグヤが、現ヒュースウィット王国の剣士だった頃、世界が統制されずに他国からの領土争いが激しかった頃、歴史に名を刻む猛者が多く死んだと聞く。


 書物に残された消えた剣技や、消えた天才。その者らが生きていたならば、きっと今頃俺たちは、全面戦争に畏怖することはなかっただろう。それだけの実力者ばかりを集めれたら、どれだけ抑止力になるか。


 これもまた、運命とか言われるんだろうけどな。


 宿命を果たすために、自分より強い存在を設けない。故に最強として、精霊種という紛い物に対抗することは必然的となる。これが俺たち、創世剣士団(ヴェロシェレア)への呪いなんだろうな。


 「お前に、過去のことを知る由もない。だから好き勝手言われても何とも思わない。だが、知らないくせに口を出すな。たらればを語るな」


 カグヤにとっての過去、それは王国のことではない。迫害され、追い出された創世剣術士として、先に死んだ2人を冒涜するようなことは、無知のままでは許し難いこと。過去を語るなとは、思い出させるな、ということでもある。


 「まぁ、所詮お前も人間。少しは使えるようになったが、それでも不完全。高くを求めはしないさ」


 「あんまりギスギスするなよ。せっかく大会開いてるんだから。最後の晩餐的な感じで、少しは楽しんでくれよな」


 「すまないな」


 意外とおとなしく言うことを聞いてくれるのは、我が子を想う気持ちが強いからか。親的な立場にあるカグヤは、少しばかりそう思わせる一面が強い。


 カグヤとルミウの言い合いが止んだとこで、フィールドでは決着が。おそらくレベル6が勝ち上がっていく中で、レベル5同士の接戦は見ていて楽しい。


 だが、危機迫る今、大会を開けてる事自体が奇跡なのだ。そしてその今、俺たちに精霊種たちによる口火がつけられた。


 「――うっ!」


 「……なるほど?」


 3つ横。第4座に座るシウムが苦しそうに胸を掴んだ。同時に俺も、その違和感に気づく。


 「どうしたの?」


 一瞬の苦しみ。シウムは息荒くなったまま、それから解放されて、ルミウの心配の言葉に対して言う。


 「予想大的中……かな。黒奇石を採掘しに行った時に、ヤイバココロ村の村長に短刀を渡したんだ。そしてその短刀が破壊された。つまり、何かしらの問題が起こったってこと。しかもそれ、遠く離れた私の気派にも干渉してきたから、結構な手練れだよ」


 「この感じだと、嫌な予感しかないな。カグヤ、頼み事だ」


 「何?」


 「シウムを抱えてヤイバココロ村に全力疾走で向かってくれ。5時間あれば着くだろうから、どうなってるのか確認して、隠密に済ませて報告しに帰ってきてくれ」


 カグヤの走力は、神傑剣士の何十倍も高い。急いで1日は必要な片道を、遅くとも5時間で着くほど、足は回る。


 「分かった。行くぞ、ちびっこ」


 「シウムだよ」


 「どうでもいいから、早く掴まれ。落ちても助けに行かないから、速さに文句言うなよ?」


 「分かってる」


 「んじゃ行ってくる」


 「まだ潜んでる可能性もあるから、隠密にな」


 「ああ」


 扉を豪快に開け、次の瞬間には気配もろとも消えていた。


 「何が起きたんだ?」


 「忍って知ってるだろ?そいつらが生活している村に、おそらくサントゥアルのやつらが襲撃をした。俺が訪問した時、こっそり村に短刀を置いてたんだ。結界って意味で、忍を守るために。そしたらその短刀に反応があった。多分、忍ってバレたな」


 しかしなんでだ?忍を襲う理由なんて皆無だろ。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ