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第二百三十二話 発見




 あと何度、イオナの凄さに驚き、感嘆する人間が現れるだろうか。それをあと何回見れるだろうか。全面戦争で生き残れたなら、私はそれをカウントしたいものだ。


 「分かりました。では、早速向かわれますか?」


 「ああ。頼んだ」


 「はい!」


 返事に籠もる意志は確かだった。フィティーとも会って、固有能力を調べたという。その時に何かを感じ取ったのだろう。固有能力を測定する人間は、決まって感性が豊かで察知能力に長けていると言われる。


 善人の役職とも言われ、神に選ばれし人として優秀な人間だけがその能力を調べられる。シャナリーもその1人だと、まるで権化かのように信じてしまう。


 早速身支度を初め、私を信じて軽装で良いのだと5分で着替えを済ませると、護身用の短刀を握り、私の目の前に立った。


 「刀は持たないのか?」


 「私は刀鍛冶なので、専属の剣士がいない以上、同じ実力も出せませんから」


 相性の良い剣士の刀だけを振れるのが刀鍛冶。だから2人で1つなのだが、こうして選ばれない人も多く存在する。学院に通えれば間違いなく専属はつく。しかし、圧倒的な刀鍛冶の数に対して、剣士は少ないため、どうしても人数的に一般人になる刀鍛冶も多い。


 「そうか。まあ、私がなんとかしよう。後ろから離れずに付いていく。だから安心して先に進んでくれ」


 「はい。ありがとうございます」


 こうして私たちは、フィティーを探すための第一歩をやっと踏み出した。予想では殺されてないのだと考えている。理由としては利用価値があるからだ。洗脳だって可能とするこの世界で、精霊種とかいう未知のバケモノにその力を吹き込もうとする可能性もある。


 他にも王族唯一の生き残りであり、レベル6の猛者剣士。対抗するにはそれなりの猛者でしか無理なため、死ぬこと覚悟で戦う必要がある。魔人を連れ帰ったと知るやつらならば、少しでも戦力は残したいだろう。


 何よりも、殺したとこでメリットはない。ヒュースウィットやヴァーガンにそれがバレれば、計画に狂いが生まれるのは確実。ただでさえ、交易を減らして情報を渡さないように対策をして怪しまれているのだから、大胆にはいかない。


 まぁ、全てヴァーガン王国から聞いているため、計画を立てているのは筒抜けだが。それほどの内容を聞いて、ワルフを殺さなかったのは、吹聴させるためなのかもしれないが、第1座を殺すなんて、宣戦布告をするようなデメリットを抱えたくなかったのが1番大きいだろう。確実に4ヶ月後に全面戦争が始まるのだから、それだけ敏感なのだ。


 迂闊に手は出してこないだろうけどな。


 牢獄に向かうまでにも、面倒を解決するために考える。最近は常日頃考えて、怠惰のないように働いている。慣れるまで大変苦労したが、今は少しずつ片付け始めれている。


 「着きました、ここです」


 歩き出して30分。王城に近い青果店からでも中々の時間経過なのは、地下への道が思ったより長かったから。苦労するものだ、地下への入口なんて。


 「門……か。開け方は?」


 聳え立つ私の5倍はある門。


 「鍵があるのでそれを使います」


 「お前を連れてきて大正解だな」


 特別な役職の人間だけが持たされる鍵。王国に信頼されたから持たされた鍵を、まさか他国のために使うとは。シャナリーも信じるべき国を見定めたのだろうか。


 扉に対して小さな鍵穴に、手のひらサイズの鍵を差し込む。くるっと回して解錠すると、うるさくもギイィと響く鋭い音が鼓膜を刺激した。


 「うぅ、久しぶりだとうるさいですね」


 「これなら破壊した方がまだ静かだったな」


 そう思えるほど聞きたくない音だった。しかし、開かれたのは良かった。これでフィティーが捕まったか判断出来る。


 「先へ急ごう。もしかしたら食事をしていないかもしれないから」


 「分かりました。ですが、流石に牢獄の鍵は持ってないので壊してもらうしかないですよ」


 「問題ない。壊すのは専売特許だ」


 そのために激甚刀を鞘に入れているのだから。久しぶりにストレス発散として、他国の何かを破壊出来るのだと、待ち遠しくて手が震える。


 「フィティー!居るか!助けに来たぞ!」


 フィティーの気派を辿るには、それなりに濃くないと無理だ。イオナのようにバカげたやつなら、思う人間を自由に見つけ出せるが、残念ながら私はそんな天才ではない。


 力づくで原始的なやり方しかない。それでも、ルミウにボコボコにされるのは嫌だから、必死に声を出して探す。何度も呼んで、耳を澄まして音波を捉えるように。そうすること1分ほどだった。


 「……ここ……」


 「そこか!」


 初めて聞くが、確実に弱っているのは分かった。今にも死にそうな、栄養が足りてないか細い声。私はそれを聞いて、場所すらも特定した。特異体質であるため、全力で向かう。疲れない、稀有な力に感謝しながら。


 「見つけた。シャナリー、ここだ!」


 周りに多くの犯罪者がいて、ザワザワと騒ぎ出す。喧騒となるそれは、どれもこれも脱獄させろという醜いもの。私は聞く耳持たず、それらを知らないと無視した。


 「お前がフィティーか?」


 「……はい」


 一国の王とは思えない見た目に、これはやはり今後ヒュースウィットが襲われることは確実のようなものになった。ここまでして、我が王国を潰そうとするのだ。全面戦争は免れないらしい。

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