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第二百二十八話 反旗




 ――「それで?私が王座から離れていた間の王国を任されてこの結果?」


 リベニア王国現女王。王族の血を引き継ぐ唯一の存在であるが故に、私はこの王国を統べる最高権力者となった。父が亡くなってから3ヶ月。そして、私が御影の地へ向かって帰ってくるまでの期間、私がその間譲歩した国王の座を担った――ラーク・トーレムという大貴族に問うた。


 「も、申し訳ございません」


 ラークのしたこと。それは、リベニアの国民に向けて、大貴族の中から新たな王座を継ぐものを決めること。つまり、私が死んだことを確定し、行った愚行ということ。いや、生きてたとして、私から王座を剥奪する気で起こしたのかもしれない。


 「結局王座に選ばれたのはラーク、貴方だね?」


 「……はい」


 「それで、王として貴方が立ち続けた日数は今日で4日。その間の国政は?」


 「……放棄しておりました」


 ラークは王として君臨すると、その他の仕事は全て臣下に任せた。王としての威厳も何もなく、ただ最大権力者として王座に座りたかっただけのように。


 「貴方の目的は何?お金?地位?」


 「……特には」


 「それは答えにならないよ。何かしらの理由があって、貴方は王座に座った。その理由を教えてと言っているんだよ」


 「…………」


 黙り込む。無意味に多忙な王族になろうとするバカは大貴族にはいない。何かしらの計画の上で、国を動かす権限を持ったはず。言い逃れはさせない。膝をつき、頭を下げたまま、ラークはやっと口を開く。


 「……王国の支配です」


 「王国の支配?」


 「……恐れながら女王陛下――」


 空気感が一瞬にして変化した。そして次の瞬間。


 「手遅れでございます」


 顔を上げて私と睥睨する。同時に、謁見の間にて、扉がダンッ!と強く開かれる。光が私の目を遮り、そこに何があるのか見えなくする。明順応し、次第に見え始めるそこ。私は呆気にとられた。


 ラークは立ち、その威圧感を我がものだと証明するように言う。


 「これより女王陛下を地下牢にて監禁いたします。私たちの考えるこの先の未来に、()()()()()、貴女は必要ないんです」


 「……何を」


 「分かりませんか?私たちの願いは、バルガン国王の背負っていたもの。これまで長年追いかけた、最底辺から、最上位の王国へと変貌を遂げるのですよ。そのために必要なこと、それが【契約】なのですから」


 「なっ!?まさか!!」


 「おっと、これ以上はいけません。私たちの計画もまだ完璧ではありません。ですので、遂行されるまで王座は私が引き継がせてもらいます。そして、統べる絶対的忠誠心を持った――神傑剣士たちは、私が代わりに指揮いたしましょう」


 謁見の間にゾロゾロと入る12名の剣士。既に欠けた2つの星座は、繰り上げられることで補われた様子。第3座、第4座がそれぞれ序列を新たに刻んでローブを身に纏っていた。


 くそ……ブニウ様を帰すのは得策ではなかったかな。


 「貴方たちは、王国に反旗を翻すというの?!答えなさい!シビム・ラフィン!」


 現在第1座の紋章を胸に刻む青年だ。


 「王国にではなく貴女に、ですよ、フィティー女王。俺たちが求めるのは力であり、この世で楽に生きる方法。同じ思想を抱いたバルガン国王を殺めた遠因である貴女には、おとなしく捕まってもらうしかないでしょう」


 「そのためなら人間をやめるというの?」


 「いいえ。人間のまま、魔人を超えた力を手にするのです」


 やはりそうだ。確定ではないが、おそらく精霊種だ。魔人が殲滅されたのはつい最近。昔から追い続けていた元国王の配下ならば、契約を知っていてもおかしくはない。


 「あり得ない……」


 「女王陛下。貴女は強くなられた。しかし、今からこの王国を1人の力で大きくするのは不可能でしょう。全ての王国の中で最弱であり、特別なものは何も持たない。ならば、是が非でも這い上がりたいのですよ。分かっていただけますかな?」


 「ラーク……」


 かつては見放された私を慰めてくれたこともあった。善人だと記憶しているが、そんな人ですら果ててしまうとは。これも精霊種の力なのだろうか。


 「さぁ、神傑剣士よ。我が王国の汚点を捕まえ、地下牢に放り込むが良い」


 「「「了解」」」


 他力本願。こんな形で私も王族としての座を降りることになるとは。流石に我が王国の剣士に、刀を向けることは出来ない。殺すことは出来ても、12名の王国最強を殺してしまえば、その時はどの道王国は潰れてしまう。魔人の襲撃は皆無でも、精霊種が居るのなら、可能性は少しでも残したいのだから。


 「後悔するよ。貴方たちには、最上位の王国を築くことは不可能。近いうちにそれを実力と言葉を以て証明される。その時に、死を目の前にしても私は手助けはしない。良いね?」


 決して上にはいけない。ヒュースウィット王国には、バケモノが潜んでいるから。この世界を創り、平和を保つと言われる存在と、この世界の力の均衡を崩し、新たな世界を創る神のような力を与えられた存在。想像なんかでは勝てず、理想郷でしか勝てない2人が、大きく聳え立つだろうからね。


 「構いません。私は負けずに新たな力を手に入れる。それが悪でも、王国の民のために絶対に」


 「ふふっ。子供だね。やってみなよ。私の左目は、貴方たちの敗北を示唆しているけどね」

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