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第二百二十四話 シウム・フォース




 「一塊だけ貰うことって出来ないんですか?」


 申し訳無いけれど、こればかりは必要なもの。イオナ先輩が最強であり王国を救うための鍵なのだ。


 「一塊……それでも俺たち全員が暮らす3ヶ月の金銭になる。厳しいな」


 「そうですか……」


 お互いに命が懸かっている。どちらかと言えば、忍の人たちが大きく被害はあるのだろう。少ない人たちで生きるために黒奇石を売る。本当は景観や引き継いできたものを守るために、採掘したくないのだろうが、それを堪えてでも生きなければと必死。


 「なら、私が何とかしよっか。神傑剣士だし、出来ない事はないからね」


 「そう言って、空回りしないでね?」


 「大丈夫大丈夫。ゴノカミさん、黒奇石を守るのは生活のためだよね?生きるために必要だから守ってるんだよね?」


 何よりも心強い存在。シウム様を同行させてくれたイオナ先輩には、戻ったら感謝しなければ。もしかしたらこの未来を見ていたのかもしれない。カグヤは御影の地だけで、時間操作を可能とする。ならばその上位互換を扱えてもおかしくはない。どこまでも最強に相応しい人だ。


 「ああ。そうだが」


 「だったらヒュースウィットが生活を保証するよ!」


 「ヒュースウィット王国が?しかし、他国が干渉するのは……」


 「可能だよ。この王国はイオナとルミルミに守られたと言っても過言じゃない。無償で王国を援助したんだし、その上で何かしらの不満を述べ、許可をしないのなら、私が崩壊の時と同じようにこの王国を潰すから」


 笑顔の奥に、優しさはなかった。文句を言うならば実力で示せと。


 シウム様に関する情報で1つ、信じがたいことがあったのを思い出す。それは、誰よりも力での序列を重んじるという、この世の理に沿った思想を強く持つことだ。


 こうしてキャッキャと女の子のように言動するシウム様だが、力が全てだと考える人だと言うのだ。イオナ先輩が神傑剣士の星座序列第7座に座ること以外、実力での序列の違いは認めないのだという。


 誰も彼も、イオナ先輩にだけ甘いのちょっと面白い。


 「いいのー?私知らないよ?1人で最初から最後までまとめろって、国王陛下に言われても」


 「大丈夫大丈夫。最悪優しい優しいテンランとノーベに手伝ってもらうから!」


 「本当に良いのか?」


 「うん。その代わり、黒奇石は少し多めに貰うけどね」


 「えっ、いいんですか?」


 「今回の目的はイオナの分だけだけど、黒奇石を生活のために使わないのなら、ここを盗賊から守った恩として、四塊くらいは持ち帰っても大丈夫でしょ!」


 「それ、私たちに刀作らせるって言ってるようなもんじゃん。最低。激務じゃんこれからぁぁぁ!!」


 シルヴィアの嘆き。それは私にも降りかかる激務だった。神傑剣士にも1人ずつ刀鍛冶が存在するけど、きっとシルヴィアと私は特に発注が多いだろう。腕は確かなものだと、いつの間にか広まっているので、それらは避けられない。


 「ね?いいよね?ミカヅチさん」


 「ああ。それを約束してくれるのなら、黒奇石は少し残してもらうだけで十分だ」


 「はーい、交渉成立!少し贅沢出来るほどのお金を毎月1日に私の部下に運ばせるから、それは来月からよろしく。もし1日に辿り着かない時があれば、その時はこれを使って」


 言いながら内ポケットから短刀にしては小さい、鋭利なものを渡す。


 「これは?」


 「えっ、知らない?これは短刀だけど、私の気派が込められてるから、これを破壊すると私に短刀が破壊されたことが伝わるの。よく非常事態の時に渡すから、覚えとくといいよ。破壊すると私が駆けつけるから、いたずらに使わないでよ?」


 「もちろんだ。助かる」


 「ニーナ、知ってた?」


 「神傑剣士の専属なので当たり前。もしかしてニア知らなかったの?」


 「恥ずかしながら」


 イオナ先輩の専属は今年で5年目。しかし、神傑剣士としては2年目で、そんなに共に過ごしたことはない。だから、隠密に携わることもなかったので、知らなくて当然だと思ってる。


 「まぁ、そのうち慣れるよ。私たちの中でも、秘密のことは多くあるからね。説明してるときりがないし」


 神傑剣士同士で、国務に関する秘密は多いという。人間関係に関しては全くなくて、共有されていたりする。特にルミウのことは多くの神傑剣士に知られてるのだとか。


 「それじゃ、採掘に行こうか。ゴノカミさんありがとねー」


 「こちらこそ、助かる」


 軽く手を振り、交渉成立した私たちはその場を離れる。向かうは洞窟の中。なるべく早く帰国したいため、早足になるのは仕方ない。そしてゴノカミさんから離れ、誰も周りにいないことを確かめるとシウム様は言う。


 「多分この村危ないかな。嫌な予感するよ」


 「嫌な予感ですか?」


 「うん。私読みが鋭いんだけど、この村の未来が見えないんだよね。未来予知とかカグヤみたいなこと出来ないけど、感じる。近いうちにこの村に何か起こる」


 「怖いこと言うね。当たるからやめてよ」


 「ルミルミかイオナを連れてきてササッと解決した方がいいようなことが起きそう。うぅ!嫌だ嫌だ」


 第六感というやつか。神傑剣士なら、何が揃っていて、長けていてもおかしくはない。第4座という地位は、実力で上り詰めたのだから。きっと何かは起こるのだろう。

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