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第二百二十三話 再び




 イオナ先輩に頼まれ、刀鍛冶としての役目を果たすために、私はニーナと、今回がはじめましてのヒュースウィット王国神傑剣士第4座――シウム・フォース様とサントゥアル王国へ来ていた。


 王都を抜け、用事があるのは最北の村だ。頼まれたのは、黒奇石であり、ニーナが言うに緑奇石の採掘だ。創世剣術士として、刀の耐久度も上げたいとのことで、私たちが派遣されたのだ。2人では危険があるので、イオナ先輩が話しやすさナンバーワンという、シウム様を同行させてくれた。


 「――ここがヤイバゴゴロ村かー。なんていうか、めちゃくちゃ簡素だね」


 「数少ないって言ってたし、普通じゃない?」


 「知られない村としてなら、イメージ通りかな。でもこんな僻地も僻地で、よく忍も生活出来るよね。私なら無理無理」


 「お嬢様には分からないでしょ」


 「シルヴィアちゃんもニアちゃんも、ここに住めって言われたら住めるの?」


 「私は住めませんね。王都の生活に慣れてしまったので」


 イオナ先輩が神傑剣士である以上、私も同じほどの優遇はされる。といっても、神傑剣士として姿を公表し、その後からリベニアへ向かったので、王都内の豪邸に住むことはあまりなかった。


 「私はイオナがいるかいないかで、住めるか住めないかが決まるから」


 「ホント、イオナ大好きだよねぇ。あの最強さんには魅力あるけど、私には手に余るから憚られるよ」


 「シウム様にもイオナ先輩は計り知れないんですか?」


 「絶対知れないよ。第4座として、この座が小さく思えるほどイオナの力は凄まじいからね。私じゃどうしようもできなーい。足元にも及ばないんだから」


 「ボコボコにされてたもんね。いつだっけ?2年半前?」


 「お遊び同士なのに、力の差があって負けたやつね。あれ以降イオナに挑むことなくなったけど、今は逆に戦いたいよ。戻ったら誘ってみようかな」


 多分、私の知る女性剣士で唯一負けず嫌いではない剣士。それがシウム様だ。よく耳にするのは、自由人で神出鬼没。その性格から、どんなことにも自分を貫いて曲げないらしく、楽しむことを最優先に生きているという。


 悪い方向にも捉えられることだけど、神傑剣士の仲間には尊敬されているのだと、イオナ先輩から教えてもらった。場の雰囲気を考えられないようで、実は考えれるというギャップもあったり。やはり人に好かれる才能も、神傑剣士には揃っているのだと、改めて思った。


 「よっと、村長さん探そうか」


 窪んだ地に建物を揃えた村。シウム様は軽々と降りて向かった。私たちも続くが、当たり前のように軽快には行かない。レベル6であり神傑剣士。到底真似は出来ない。


 そうしてやっとのことで村の門前に来る。


 「やっほー!ちょっとこの村に用事があって来たんだけど、誰かいるかなー!」


 イオナ先輩とルミウに続いて若いシウム様。神傑剣士に就いて早4年であり、現在24歳。歳相応の元気漲る声音で、可愛らしさも伝えるように呼びかける。すると、門の反対からこちらへ言葉が返ってくる。


 「誰だ?何用でここに来た?」


 「あっ、この声、多分村長だよ」


 「おっけー。――私はヒュースウィット王国の神傑剣士!村長さんとお話しにきたんだけど!」


 「ヒュースウィット王国の神傑剣士……了解した、今門を開ける」


 「どもー!」


 本当は黒奇石だけど、話もすることは間違いではない。ここの黒奇石は大切なもの。それを知るから、身勝手に最初から要求しない。お巫山戯好きそうで、実はしっかり者。やはりギャップが良い。


 私たちは門が開けられるのを待ち、次第に開かれる門の先には、1人の男性が立っていた。その男性は私たち、いや、シウム様とニーナを見て確信する。


 「遠路はるばるようこそ我が村へ。お初にお目にかかる。俺の名はミカヅチ・ゴノカミと申す。おっ?シルヴィアさん、だったな?久しぶりだ」


 「久しぶりー」


 「神傑剣士殿、俺に何の話か、歩きながらでもいいか?」


 「うん。いいよーん」


 「ではどうぞ、我が村へ」


 案内されて進む。広くもないから、歩き疲れることもない。


 「それで、話とは?」


 「端的に言うけど、この先の洞窟に黒奇石があるでしょ?珍しくて数少ない。それを少し採掘させてくれないかなって思ってさ」


 「なるほどその件で……」


 急に唸って足を止める。考え込むように下を見て、人を見る目に長けてない私にも、何かしらの問題が発生したことは理解した。


 「どうかしたんですか?」


 「つい最近なんだが、この王国国王の命令により、半分ほどその黒奇石を採掘されたのだ。これ以上採掘されては、俺たちの生活が困難になるのだよ」


 「王国の命令で、世界有数の稀有な黒奇石を採掘……これまで採掘されたことってあったの?」


 「いいや、今回が初めてだ」


 「なるほどねぇ。色んな線があるね。まず、サントゥアルは復興にお金が必要だったから仕方なく採掘したか、次に大貴族たちの悪辣な考えによる盗掘。最後にそれを欲する剣士が存在する。少ない情報だと、探れないからこれくらいしか言えないけどねぇー」


 怪しさは残る。サントゥアルは現在世界で最もお金のない王国だ。ならば、途轍もなく高く売れる黒奇石は、重宝されるのは当たり前。可能性が高いのは復興のためだろうけど、良くない雰囲気はある。

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