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第二百二十一話 先へ




 「それは本当?嘘で煽てようとしてるんじゃないの?」


 「いいや?それこそお前ならよく分かるんじゃないか?思い返してみろ。イオナが守ると言ったものは全て守られただろ?」


 絶対的な発言。守ると言ったら守る。これを守らなかったことは人生で1度だってないのがイオナだ。駆られて駆られて、憎悪に取り憑かれても尚、残り続けた大切な人を守るための思い。魔人として、理を外れた存在。


 ルミウは下を見て思い返した。多分イオナじゃなければ考えようともしなかっただろう。自分でも、私の言うことを信じたいからと、イオナが大切にしていることを確認したいのだと、躍起になるように思い出す。


 「……そうかもしれない」


 「本当に思い返すとは、やはり恋する人間は気持ち悪くて嫌いだ」


 「おばさんにはもう、人を想うほどの精神性はないだろうから残念だね」


 「そういうお前も、一生結ばれない関係に酔ってるだけだ。残念だな」


 「いいや?私は結ばれるよ。イオナに感情がなくても、私が迫り続ければイオナはきっと頷くだろうし」


 「自信だけは無駄にあるんだな」


 間違いではない。イオナは押されることにもどうでもいいという気持ちしか持たないが、こいつ、ルミウにだけは別だ。シルヴィアやニアに抱く大切な気持ちを遥かに上回る、私にも計り知れない想いが持たれている。


 特別な何かが。


 「無駄でも、生きる以上やる価値はある」


 「ふんっ。確かにな」


 半分は人間の血が入ってるのだから、それも当然だろう。もしかしたら後天的に感情が生まれるかもしれない。それは可能性としては高い。


 「そんなことよりも、お前はこの先が見えてるのか?どうやって私たちに追いつくのか」


 恋愛話は飽きた。行動原理を知れただけで良かったが、無意味にルミウの恋心なんかに触れるとは、私も人間としてまだ心は残ってたらしい。


 「いいや、具体的には見えてないよ。取り敢えず君に師匠として私に剣技を教えてもらう。ラランが使っていたように、我流剣術は教えることが出来るんだろうし」


 「よくそんなちっぽけな覚悟で付いてくることを決めたな」


 「ちっぽけじゃない。君たちの力が未知だから何も言えないんだよ。計画を立てようにも、私は私の知る最大値まで力を持ってるつもりだから、その先を知る君たちのことは何も知らない」


 「だが我流剣術が存在することは知っていただろう?早くも鍛えていても良かっただろうに」


 ラランが我流剣術を放った際、即座に対応していた。それを見るに、間違いなく我流剣術については知っていた。今だって使い方も知っていると私には伝わっている。


 「無理だよ。私は一刀流と二刀流を使えるリュンヌの剣士。そしてレベル6なんだよ?数多くの剣技を磨き上げて、やっとスタートラインに立てるっていうのに、まだ21の私じゃ不可能だよ」


 「なるほどな。そうだった、お前が人間だと忘れていた」


 ラランは歳にして150後半の老いぼれだった。確か24年前に我流剣術を使えるようになったと言っていたから、それだけの長い間二刀流として剣技を極める必要があったということ。


 無理だな。21年じゃ、到底辿り着けない。ルミウという才能持ちでも難しい領域とは、この世界もバカげているな。


 「ならば早速、イオナに隠れて特訓を始めるか。まぁ、隠れても意味はないだろうがな」


 「早ければ早いほど良いからね。よろしくお願いするよ、カグヤ」


 「改まるな、気持ち悪い」


 人間からの感謝は受け取りたくないが、ルミウのは受け取っていいかもしれない。気分を害さない、穏やかな人間。流石はリュンヌの末裔。リュンヌという男にも、出会いたかったと思うほどに、人を惹き付ける何かを持っている。


 「教えるのはいいが、お前が我流剣術を覚えるというのは、レベル1がレベル6になる3倍は酷だぞ。それを耐えられるか?」


 「耐えられないって言ったら、私はここで諦めたことになる。付いていくのだと、第1座として、王国最強として決めたのなら、それを全うするために尽力するよ」


 「そうか。今はまだそんな覚悟で十分だ。いずれ分かるさ、どれだけ死を感じて酷なのかを」


 以前フィティーに教えたという、死を以て成長させるという方法。イオナも本能的に私の教えを引き継いでいたのだと、聞いた時は心底嬉しかった。


 それを今度は私が師匠として、ルミウという負け知らずの女に叩き込む。神傑剣士は死を知らない。だから成長は止まる。しかし、1度堰き止め、溜めに溜めたこれまでの経験を一気に打ち破ると、それはもう途轍もない力となる。


 「死を前にする……まさか私がその立場になるなんてね」


 「久しぶりの師匠だ。お前をボコしてスカッとするか」


 「厳しいのには慣れてるから、大丈夫だよ」


 「どうだろうな。感覚的な死を、人はあまり恐れない。だけどな、痛みを伴う死は誰でも恐れる。つまり、お前は今からそれを味わうってことだ。今は余裕でも、お前は今後、私と対面した時のように絶望するぞ。その覚悟もしとくんだな」


 「忠告ありがとう。死ぬ気で待ってるよ」


 どこまで耐えれるか楽しみだ。傷つけても壊れない玩具のようで、戦闘狂の性が出てくる。殺しはしないけど、イオナに認められたその才能を、とことん味あわせてもらう。


 同じ、最強を背負うものとして。

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