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第二百五話 実力差は歴然




 何故確信したように言えるのか。まるでイオナを知っているかのように。仲間が殺されてもなんとも思わない様子も変だ。もしかしたら、私たちを殺すために数でイオナを足止めしているのか。


 様々な考えが過る。生まれてはじめての絶対的な死を前に、私は時間稼ぎすら、何の策も思いつかない。だから、イオナのことを考える。唯一の生きる可能性のことを。


 「しかし、我ながら言っていて思うが、お前たちも悲しいな。特にリュンヌの末裔よ」


 「……何が言いたい?」


 「自分で考えろ。私にしか分からなくていいのだから、わざわざ答えてやることもない。もし、生き残れたなら、その時に仲良くしながら教えてやるが」


 そう言うと、カグヤは一瞬で気配を消した。姿はそこにある。まだ見える。でも、そこに立つのはただの木のように、生気もなければ気派もない。


 何かを仕掛けてくると本能的に悟った。でも、意味不明な状況に何をされるかなんて予測も出来なかった。屍が立っているだけの目下のカグヤ。ここから何が起こるかの未来をどうすれば見れるというのだ。


 「フィティー!」


 咄嗟に叫んだ。未来を見れるのは、フィティーも同じだったから。可能性にしか頼れない今、私は未来視に未来視で対応する当たり前しか思いつかない。


 「無理!先が……先が見えない!」


 しかしカグヤは、フィティーの異能力ですら凌駕した。それはそうだ。だって、この地を統括する魔人なのだから。フィティーに異能力として授けた張本人なのだから。使えなくすることだって出来る。何よりも、カグヤの下位互換の力なのだから。


 「くっ!シルヴィア、ニア、背中から離れるなよ?」


 戦えるのはフィティーと私だけ。守れる自信は皆無だ。


 殺伐とした空気感が体を襲う。それに意識を割かれた瞬間だった。


 「――まず1回」


 「「!?」」


 気づけば背後に立つカグヤ。イオナ並みの瞬間移動。時間を操作出来る異能力に頼ったのか、その精度は計り知れない。焦って冷や汗が止まらない。ボグマスの時もそうだった。私だけ目に見えない速さでの移動についていけず、二分の一で助かった。これで死ぬのは2度目だっただろう。


 「今のでお前たちは全員死んだ。次は対応出来るか?」


 今度は消える。気配がないから気派の中でも察知出来ない。視線だけを右往左往させる。死から逃れるには、必死に抗うしかなかった。でも。


 「これで2回目。私のこの動きは初見殺しとか言われてな、それ以降3回目で刀を抜くことにしている。次、対応出来ないと死ぬぞ?頑張って足掻け。お前たちのような猛者は初めてだから楽しませてくれ、リュンヌの末裔と私の玩具よ」


 「クソっ!」


 「ルミウ様……どうしたら」


 必ず背後に来る。分かっていても、人間だから絶対に背後が存在する。時間も止められて来るのだから、凌ぎようがないじゃないか。


 フィティーの心配に答えることは出来なかった。集中しなければ死ぬのだから。今まで誰も戻ってこなかった理由が今分かった。七星魔人が相手でもだが、このカグヤという理不尽な存在が何よりもここから人間を逃さないのだと。


 「これは……死ぬかな……」


 やり残したことはたくさんある。生きて帰ると約束もした。それを無下にして死体すら見られずに死ぬのか。それは嫌だ。死ぬならせめてイオナの前で、そして神傑剣士の前で死にたい。こんな敵地で死ぬなんて、絶対に嫌だ。


 目を閉じて微かな風の揺らぎを感じる。物が動く以上、風も生まれる。微風でも確かに。


 「蓋世心技・滅」


 「見事」


 サッと姿を現したカグヤは、またしても私の背後だった。しかし、私は背後へ剣技を放った。時間をどれだけ止めたとしても、その攻撃自体を消せるわけじゃない。


 先に背後へ滅を放つことで、莫大な気派の攻撃が未来のカグヤを攻撃する。止められた時間の先を読むのだ。簡単じゃない。けどこれで戦える。だってカグヤには――。


 「背後に回る癖があるから。だろ?」


 「なっ!」


 そうだ。思えばカグヤに知られるのだった。


 「見事にわざと大きく見せた癖に嵌って、私の思い通りに動いてくれたな。本当に見事だ」


 「チッ!そういう見事だったのか」


 「お前を褒めるわけがないだろう。自画自賛しただけだ」


 全力で、かつてないほど集中した。それでも余裕のカグヤ。差が広すぎる。埋めれるのか。どうも私にはイオナとの差に感じて踏み出せない。怖気づいてしまっているよう。


 「しかし、3度目で生きてるのはお前たちが初めてだ。それは長い歴史の中で誇れる事実だ」


 「手を抜いていただろ」


 「それでもだ。私は強すぎてな。今もまだ2割で動き回っている。それを凌げた者はお前たちが最初、いや、お前が最初だ、リュンヌの末裔」


 あり得ない。今、2割と言ったのか?イオナの7割とほぼ同レベルだったのに。それでも2割?バカげている。どんなやつを相手にしてるというんだ。


 刀は2本抜いて、リュンヌの剣士としてここに立っている。イオナにも追いつけるほどの力。それを軽々しく凌駕しているのは、そのバカげた力が理由か。


 私の頭の中は更に混乱した。どうすれば勝てるのかの策を、もう考えることは出来なかった。それほど、目の前に立つ魔人の頂点が高すぎる。息をすれば詰まるように苦しい。イオナが来ても、倒せるのか?

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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