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第二百四話 カグヤ




 「イオナ、大丈夫かな?」


 一瞬にして目の前からイオナが消えてからずっとこの調子のシルヴィア。意味不明な力により、私たちはイオナの居る場所から飛ばされた。きっとここに来た時に働いた力と同じだろう。


 「大丈夫。イオナが逃したんだから、そう簡単に死なないよ」


 「でも、ルミウでもどうしようもない状況だったんでしょ?結構ヤバくない?天と地ほどの差があっても、限界あるだろうし」


 「イオナなら何とかなるよ。全力を出せば、数にも対抗出来るかもしれないし。私たちは帰ってくるのを待つだけ。フィティー、ここら一帯の情報を教えてくれる?」


 「うん。半径1kmには魔人は居ないよ。取り敢えずは安心」


 「ありがとう」


 こうして冷静に対応している私だが、多分ここにいる4人の中で1番落ち着きはない。どれだけイオナを信じていても、イオナが1人で勝てるとは思えない。七星魔人から足に攻撃を受けていたし、それなら4人に一気に攻められたら死ぬ可能性もある。


 あぁ……どうしよう。


 混乱は増すばかり。覚悟はしていたが、こうして私たちを守るために逃がすのは、少しばかり寂しい。もっと実力があれば、きっと一緒に戦えたのに。


 「そんなに深く考えるな。ルミウ・リュンヌ・ワン」


 「誰だ!?」


 私の脳内に声が響く前に気配は感じた。一言でいうと圧倒的。勝ちの見えない絶対的な頂点。それが私に話しかけたのだと、即座に理解した。そして本能的に私の両手は刀を持っていた。


 「初めてお前の顔を見るが、それなりに美しいな。流石はリュンヌの末裔といったとこか。羨ましい限りだ」


 「お前は……」


 ほぼ服という服を纏わず、露出する肌はとにかく白い。真っ白であり、私の髪色とほぼ変わらない。なのに、対抗するように真っ黒の双眸をしていて、左の目には赤い線で書かれたような数字の4が刻まれている。


 身長は私と同じくらい。私に嫌味を言っているのかと思うほどに美しい顔。彼女が、イオナが呼んだカグヤという存在なのだと、私は勝手に理解した。


 「……貴女……は……」


 フィティーが言葉を詰まらせる。狼狽が激しく、体の震えが止まらない。それに対して、カグヤはゆっくりと視点移動して気づく。


 「久しいな、フィティー・ドルドベルク。何年ぶりだろうな。私が唯一逃した人間の子」


 一目見た時から気づいていたのか。お互いに再会したというのに、嬉しさの欠片もない。


 「あれからよく、呪いを無視して強くなったものだ。これもシーボ・イオナとかいう最強のおかげか?羨ましいな。そしてシルヴィア・ニーナとシャルティ・ニア。最強の刀を製作する刀鍛冶。お前たちは本当に羨ましく妬ましい」


 「お前……何者だ」


 「私はカグヤ。この御影の地の約1割を統括する魔人の頂点だ。そして、お前たちをシーボ・イオナという最強から引き剥がす存在でもある」


 「引き剥がす……どういうことだ」


 「私はお前たちに興味はない。シーボ・イオナに用事があるからここに来た。だから、必要ない紛い物は殺す。それだけだ。内容なんて聞こうとするなよ?どうせ意味がないんだから。死人に記憶の保持は不可能だろ?」


 不敵な笑みと共に言った言葉は、言霊として殺意が込められていた。絶対に殺すんだと、お前たちは生きて返さないと、そう言われている気がしてトリハダが立つ。


 「では、そろそろ時間もなくなる。始めるか」


 「待って!」


 カグヤが刀を抜くと同時にフィティーがそれを一旦静止させた。


 「なんだ?」


 「1つ聞きたいことが」


 震えは止まらず汗も吹き出している。これを時間稼ぎとするならば賢く勇敢な行動だ。私も何も考えられなくなって、ついにイオナの安否すらも記憶から消えていた。


 「それくらいは聞いてやろう。言ってみろ」


 「なんで私を逃したの?あの時、私にこの地のことを教えて逃したの?」


 「この未来が確定するからだ」


 少しの間もなかった。聞かれることが分かっていたかのような反応速度。私に「深く考えるな」と言って来たことから、おそらく人の心が読めるのだろう。心底厄介だと思う。苦手な相手だ。勝ちが見えないのだから尚更。


 「未来が?」


 「ああ。私はこの地でのみ、時間を操作出来る。ここでお前たちが疲れないのは、私の善意で体の時間だけを止めているからだが、時間操作はそれ以上に万能だ。ありとあらゆる物体を好きなとこまで飛ばせるし、未来も見える。私はその力を使ってお前の未来を覗いた。そしたらなんと、生かせば私の願いを叶えてくれる未来を持っていた。だから五体満足で逃した。ただそれだけの理由だ」


 「……つまり、ここに来ることを未来視していたと?」


 「そういうことだ」


 私の願い。これが何を指すかなんて知る由もないが、そのために殺されるのだけは分かる。そして、勝ち目がないことも。今までどんな敵でも見ただけで負けを確信することはなかった。だから今、私は震えている。


 「もういいだろう。そろそろシーボ・イオナもここに来る。その前に殺さなければ、私の生死が危ぶまれる」


 「イオナが?まさか生きてるの?」


 「想い人だからと、そう心配するな。あいつは魔人13万を滅殺してくる。次々と仲間の反応が途絶えているからな。お前たちも頑張って、助けが来るまで持ちこたえれれば良いがな」

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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