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第二百三話 無意味な策




 シルヴィアの解体話に、いつもと変わらず対応すると、その瞬間に目の前から4人とも消えた。おそらくイェンに使われた、カグヤの特異な能力だろう。瞬間移動なんて、そんな気持ち悪い異能力、使われて嬉しくはない。


 「確かに、全員がこの魔人から襲われる範囲内に移動したんだろうな?」


 「あの御方に間違いはない」


 「そうか。だったら、思う存分暴れられるな」


 4人に見られないなら、それだけ戦いやすくなる。それが俺だ。


 「よっしゃぁ、いつでもいいぞ。()()()13万で勝てると思ってここに来たバカからでもいいし、勝算なくて引きこもりのカグヤに死ねと命令されたやつからでもいいぞ。かかってこい。誰に刀を向けたか丁寧に優しく脳裏に刻んでやるから」


 13万。これで俺を殺せるなんて思ってないだろう。少なすぎる。カグヤはおそらく、俺がどうゼビアを倒したかの情報を得ているから、ここに居るやつらでは勝てないと思っても立たせてるのだろう。どんな意図があるか分からないが、取り敢えず戦う道は避けられないだろう。


 俺はレベリングオーバーを発動する。勝ち負けは俺の中では決まっているため、死ぬ気で戦うなんてことはない。ただ、無傷で勝てるかの心配をするだけ。


 「くっ!貴様!どこまであの御方を侮辱する!」


 「教えてやろうか?死ぬまでだ」


 「ゴミクズめ!蓋世心技・虚!!」


 「久しぶりに言われたな、その言葉。でも蓋世心技じゃ、俺は倒せない」


 刀を振り上げたイェンに人差し指を向けて、左へと向かせるように曲げた。するとイェンは、目にも留まらぬ速さで左の木々へと強烈な衝突を繰り返し飛んでいく。


 「イェン!」


 後ろから叫ぶ七星魔人の声。名は知らないが、体躯的にメンデに似ている。


 「魔人でも気派は存在する。その時点で負けだ。圧倒的な差がある俺たちなんだから、どうあがいても絶望しかないぞ。次は誰だ?オススメするのは、13万で一気に俺に攻撃することだが」


 俺は一騎討ちじゃなくても最強だ。隣に並ぶ剣士を見たことがない。ルミウだってそうだ。本気を出してしまえばいつも隣には、諦める剣士ばかりだった。決して誰も、同じ領域に立ってはくれない。だから俺は更に上を行く。1人を知ったから、もう戻れないから、常に上を行く。


 俺の今立つ場所は静寂が包んだ。七星魔人が呆気なく飛ばされた現実を見ては、知性を持つ魔人に勝ち目は無いのだから。ひしひしと伝わる俺の放つ気派。それにガタガタ震えだす魔人も居た。


 「てめぇ!」


 「落ち着いて、エドゥ。ここはもう私たちで一気に攻めるしかないよ」


 「……だが!」


 「今は最善を考えて」


 「……分かった」


 「うん。聞け、私たちが攻撃を開始したら、それに続いてお前たちもやつに攻撃を仕掛けろ!」


 「「「おおぉ!!!」」」


 魔人13万の声は尋常じゃないほど大きい。気合いの入る良い声だ。俺にもその力が伝わるようで、ワクワクと高まる感情は、どうも相性が良いらしい。俺までサポートしてくれるのは、魔人でも予想外だったかもしれない。


 「盛り上がってるな。嫌いじゃないけど、好きでもないな」


 「あっそ、どうでもいいけどね!我流剣術・無我羅刹(むがらせつ)


 「我流剣術・煉獄烈火(れんごくれっか)


 「蓋世心技・紅」


 残る七星魔人が一斉に剣技を放つ。その後ろにはピタッとくっつく魔人たち。上に飛ぶしか逃げ道はなく、そんな面白くないことを求めない俺は受ける気でいた。


 我流剣術士がここにも2人。相当な手練だったのだろう。かつての歴史を覗けるのであれば、本当の名を知りたいものだ。


 そんなことを待つ余裕で思っていると、敵は目下にまで迫っていた。音速を超える移動を可能とする七星魔人。わざと走って来てるのには何かしらの意図があるのか。考えるのはやはり苦手だと、つくづく頭の悪さを、恥ずかしながらも周囲に吐露してる気分だ。


 「俺も好かれたもんだな。どうしてこうも猛者と謳われるやつらばっかり俺の前に現れるんだろうな。スキルの底上げかよ。僥倖でもなんでもないし」


 屍に刀を振り続けるのは好きじゃない。なるべく早く終わらせて、4人と合流したい。今は俺のテリトリーも拡大出来なくて、出来たとしても、ここの魔人たちに阻害されて状況を掴めなくなる。


 だから、早く終わらせたい。


 「広範囲に最大級の技を。極心技・叢雲(むらくも)(つるぎ)


 蓋世心技と同じ剣技まで引き上げた叢雲の剣。俺の作ったテリトリーに入る者を、空から悉く斬撃を飛ばす剣技。テリトリー内に莫大な気派を込め、俺が刀を振ると同時に、いくつもの数えられない斬撃がそれらを襲う。侵入者として俺が意識内で思った者は、決して体を斬撃が貫通する前に逃げることは出来ない。必中の絶対技だ。


 しかし、それを当たってもなお、進み続ける猛者も存在する。俺の背後と左右から迫る七星魔人だ。体には傷はない。全てを刀で往なしてここまで来たらしい。けれど、残念ながらこれは必中。必ず当たるのだ。


 それぞれが我流剣術や蓋世心技を構えて近づくが、それだけ。内側に来れば来るほど、気派は強くなる。選ばれし猛者が来ても、殺せるほど。


 左手を3人の中心に見せる。広げた手を、静かに曲げた。


 動きが止まる3人の魔人たち。テリトリーでは不可能はない。それも御影の地。ここでは、気派の消費が無いのだから。


 身動きの取れない七星魔人。魔人の頂点に立つ者たちがこの姿。喋ることすら許されず、悉く降る斬撃は悉く魔人を貫いた。

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