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第二百二話 突然のこと




 フィティーの左目を頼って、これから先に向かって動き出すことを決めた俺たちは、既にラランの死体から離れていた。目指す具体的な先はないが、それでもここに来た以上は是が非でも進まなければならない。無策なのはきついが仕方ない。


 「暇だな。何か面白いこと起きないのかよ」


 「暇なのは、戦闘後の私たちからすれば嬉しいけどね」


 「俺もその感性に浸りたい」


 戦闘なんて言えるほど戦ってない俺は、まだ御影の地に来た実感がなかった。接戦を強いられる猛者も出会わないし、押されることもない。全て1対1なので、苦戦でも相手に集中出来るから、望むのは俺対複数だ。


 そう思った時だった。寸分違わず。


 「――は?」


 「――え?」


 フィティーとルミウが同じタイミングで溢した一文字。その意味を俺は理解した。


 「どうしたの?」


 分からないシルヴィアは問う。何も感じないから、2人の思う気持ちに共感も出来ない。だが、これは共感なんてしたくないことで、正直2人で済んだことを良かったと思っていた。


 「……これが御影の地ってことか」


 常に広大なテリトリーを展開していたから、侵入者には気づく。どんなに遠くても、一歩踏み入れれば、間違いなく気づく。なのに、なのにだ。すぐそこに魔人が立っている。それも俺たち5人を囲むように。


 数は確定しない。そのテリトリーを埋め尽くしているから、最大が分からない。これが未知。


 「桁違い過ぎだろ。魔人の数どれだけ居るんだよ」


 「これ……どうするの?流石に私でもどうしようか策は出ないよ」


 「何々?何があったの?」


 「魔人に囲まれてる。数は俺の知れる範囲で5万は居る」


 「私の1kmの範囲内には13万だよ」


 「えぇ?!13万?!それホントなの?!」


 聞いて驚き叫ぶニア。姿は見えないが、近づくのを感じるから、もう間もなく姿を現すだろう。不穏な空気は漂うが、天候が変わることはない。天候は、魔人の、その時の最善を演出するための道具なのかもしれない。


 「13万か。俺のせいか?これ」


 「あるかもね」


 だったら暇とか言わない。流石に桁がおかしい。俺たちを狙ってだろうが、それほどしないと勝てないと判断したのか。だったら買いかぶられ過ぎててムカつく。


 「ニアとシルヴィアを守るぞ。2人は背中に隠れてろ」


 「分かりました」


 「了解」


 囲むようにトライアングルで迫る魔人を待つ。圧倒的な気派を放つ魔人先頭に、その集団を取りまとめて。それぞれの東西南北から一体ずつの猛者の気配を感じるから、七星魔人が率いているのだろう。ボグマスの気配はない。何をしているのやら。


 そしてやっと、その禍々しい姿を見せた。


 「どうもどうも、この度は遠路はるばるこの地へお越しいただきありがとうございます。私は七星魔人――イェンと申します。只今より、貴方たちを殺せとの命令に従い、否応なしに攻撃させてもらいます」


 「会って早々物騒だな。話し合いってのをする気はないのか?」


 「ありません」


 「なるほど」


 覚悟が決まっていた。どうしても背けない命令に、最期まで忠実に従順に従うのだと、強く感じた。曲げない、いや、曲げられないほど崇拝するあの御方。精神支配の能力を持っていたりするのかもな。


 俺には崇拝する意味が分からないから、何とも感じないし思えない。


 「どうするの?」


 「……選択するしかないだろうな」


 流石に13万を3人で戦うのはハードすぎる。ここで選択するのは、全員の死か、全員の生。明らかに1つしか残されていなかった。あまり口での解決は得意ではないのだが。


 「イェンと言ったか?この大軍勢を率いるトップの魔人。お前に頼みがある」


 「だか……いえ、何でしょう?」


 話はしないと言ったことを反駁しようとしたのか、しかし叶わず受け入れる。


 「狙いは俺なんだろ?4人を一旦ここから離脱させてくれないか?」


 「イオナ、何を!」


 「不可能です」


 焦るルミウに対して、冷静なイェン。どちらも想定内だった。


 「そうか。なら――カグヤ!俺を見ているんだろ?ここで4人を逃さないと、ここで俺はイェンに対抗せずに死ぬ。それが嫌ならばイェンに承諾させろ」


 「――何故お前があの御方の名を!!?」


 「教えるわけねーだろ」


 実はこの御影の地へ入った瞬間に知った。名が天啓のように降りてきて、それが魔人の頂点の名前だと、そうしか思えないように確信した。不可思議すぎて、夢の中かと思ったが、隣にニアが居たのを確認してから現実だと信じた。


 「どうする?」


 「それは――」


 遮られて瞬間移動のように消えてしまった。と思ったらすぐにその場に姿を現す。瞬きの間に消えたような感覚で、全く意味が分からなかった。


 「良いだろう。とのことだ」


 「カグヤは意外と人見知りなのか?出てこないなんて、ビビリなのかもな」


 「貴様!」


 「あっ、動けないだろうからキレても意味ないぞ」


 既に体の自由は奪えるようにしている。少なくともイェンには負けないことが決まった瞬間だ。


 「ってことだから、今度は俺が1人で別れることになる。合流は後々するから、その時まで待ってろ」


 「でも、13万は君でも無理じゃないの?」


 「俺は最強だ。13万でも生き抜くさ」


 ただ、人が居ると邪魔になるだけ。本当なら一緒でもいいが、なるべく1人の方が何も気にすることなく全力を発揮出来る。


 「信じてます」


 「死ぬなら解体しやすいように目の前でお願い。それまで死なないでよ?」


 「はいはい」

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