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第二十話 初めては良くない事の連続




 まだ明るいので国民の顔が見える。そして安心したと同時に加速する。体力はできるだけ温存するが、移動の距離がとてつもないため今回は少し無理をする。


 夜ってあんまり好きじゃないんだよね。盗賊とか出てくるらしくてその度に相手にしないといけないから出てこないでって祈るばかりだわ。


 良く暗殺に出かけるルミウに聞く。移動の際盗賊を見つけたら嫌でも拘束、無理なら殺さなければいけないらしい。だいたい拘束で済むんだが、たまーにレベル5の猛者が居るので仕方なくザシュっと逝かせるらしい。


 キレイでカッコいい顔だからサイコパス味が増してるんだよな。まぁその顔めちゃくちゃ好きなんだけど。


 任務から現を抜かしながらもしっかりと目的地には近づいている。移動時間は最速より遅めの45分。移動だけ、しかもダッシュで45分なんてルミウに迷惑かけてなかったら絶対に受けてないぐらい大変な移動だ。


 文句を言いたくても、会議室で書物を読みまくっては頭に入れて、たまにウトウトするルミウを想像すると言えなくなる。可愛いと思うより任務にやる気が出るのは少なからずいつもよりかは真面目だから。


 「よっしゃぁ!学園でのストレス発散だぁぁ!」


 王都ジュスクードから離れたため俺の声は誰にも聞こえない。久しぶりに大声で言葉を発せた。それだけで多少はストレス発散にはなる。


 ストレス溜め込まないタイプで良かった。いや、容量が大きすぎるというのが正しいな。俺だけをどれだけボコしても殺してやるとまでは行かないから生まれ持った器のデカさにありがたみを感じる。


 もしかしてこれが運命ってやつ?それなら寛大な心と剣技の才能を持って生まれたプラスとイジメられることと親に捨てられ、日常生活が上手く行かなかったことでマイナス。


 これでプラマイゼロだからな!神は人間を平等に作ると言われるがホントにそうか?俺良いことないんだけど。


 剣技の才能があっても今は使えないし……変わるのかこれから……。


 こうやって自分の未来を心配するが、実際安泰だとは思っている。剣技はこれからもう少しすれば公の前で使えるし、俺をイジメるやつもいなくなる。そしてなにより国外へ旅に行けるんだ。これ以上待ち望んでいたことは何もない。


 今走っているうちからワクワクしてくる。早く2ヶ月半経過しないかなって。


 そんな思いとともに俺はルーフに向かった。


 ――「思ったより暗くてラッキー」


 体内時計によると19時を過ぎた時間帯。あたりは移動し始めた頃より10倍は明かりが届いていなかった。暗くて街頭が少しと、家の明かりが多く。その奥に目を通すと一際大きく、まさに貴族!といえる豪邸が建っている。


 「どんなおバカさんが住んでるかな」


 木の上から降り、再び走り出す。まだ体力は9割は残っている。これだけあれば虚空を使うとなっても40mは出せる。使わないのがベストだから使用はなるべく控えるが。


 街並みはキレイ。しっかりと整備された道や家はいつ見ても王国がどれだけ栄えているかを示していた。


 しかし、ここで不思議なことに気づく。それは街の住人が誰1人として外を歩いていないのだ。ありえない。ルーフは王国でも有数の商業都市だ、人口もそれなりに多いのになぜ1人も見えないのか。家の中に籠もっているならそれこそ意図的なものだから逆に怪しい。


 聞いてみれば音もない。明かりだけが灯されている。まさに全員の時間が止められたかのようだ。俺が止められてるのかと1度確認してみるぐらいに違和感があった。


 めんどくせぇ……。


 足を止め1軒を存在感を無にして覗く。


 が、そこには老人夫婦が仲睦まじくご飯を食べているだけで何も気に掛かることはない。ホッとするがまだ1軒だけ、他の家も覗いてみる。


 ――それでも何もおかしな点は見当たらない。2軒3軒と覗くがそれも変わらない。


 俺の感じ間違いなのか……それにしては19時に人が外にいないのはなぜだ……。


 任務は暗殺だか、気になることをそのままにできない俺は最終手段を取ることにした。こんな時間に訪問なんて申し訳ない。


 先の老人夫婦の家をノックする。しばらくして2人仲良く扉を開いた。


 「すみません。お尋ねしたいことがあるのですが」


 「あぁ、いいけど、外は危ないから家の中で話そうか」


 一瞬俺を見て驚く表情を見せた。その後あたりを見渡してすぐに入れてくれた。やはり何かあるかもしれない。


 俺を怪しむこともなく入れたことも、確かに怪しくはないけど知らないガキを入れるのはよろしくないですよ。


 木製のイスに腰を下ろす。固くないのはクッションが置かれているからだ。それからおばあさんはお茶を注いで持ってきてくれた。色々と親切にしていただけて嬉しい。


 家の中には特に気になるものは置いていない。それが逆に気になるが。


 「それで、君はこんな夜に、それもフィート様が19時以降の外出を禁止さているのになぜ外に?」


 先に話し始めたおじいさんは俺が何もかも聞きたかったことを話してくれた。


 手間が省けて助かる。


 「俺はルーフの人間ではありません。王都ジュスクードの人間で旅をして来たので知らなかったんです」


 「そうだったのか、珍しいねジュスクードから。――それじゃ今度は私が答える番だ。なんでも聞いてくれ」


 ニッコリ微笑むおじいさんの顔はなんだかほっこりした気持ちを誘った。


 「ここに来て人気(ひとけ)が無いことに気づいて、それが不自然だったので気になったんです。でも理由を今知れました。なので別のことを聞かせてください」


 「うん、いいよ」


 「では――なぜ、このおばあさんの淹れたお茶に毒を混ぜたんですか?」

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