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第百九十五話 異能力




 「無駄だよ。君たちには無尽万象を受け止めれる時間はそう長くない。遅かれ早かれ死んでしまう。そして、私が直接君たちを殺しに行こうとすれば、造作もなく殺せる。出来れば無尽万象だけで死んでくれたら嬉しいけど。もう死んでくれないかな。ここからどう策を弄すれば勝てるか、検討もつかないでしょ?」


 次から次に斬撃を飛ばしているというのに、全く終わる気配はない。気派による強化の斬撃なのだろうが、それにしては無限に続き過ぎる。確かに御影の地では気派は減らない。けどそれは同時に、自分の最大出力も変わらないということ。


 私の全力でガードする気派を悉く破壊するのだから、元の質はラランが上なのだろう。信じられない。固有能力を持ちながらも、魔人に堕ちた屍に勝てないとは。


 「私は最強のとこへ行かないといけない。でも接近して君たちの愚策にハマりたいとも思わない。だから勝ちの見えない剣術を前に、もう屈してくれないかな?」


 もう屈する寸前だ。今はもう手前でただ屯してるだけ。でも、耐えないといけない。死ぬ気はないし、何よりも勝負に勝ちたい、勝たなければならないから。


 「嫌だね。力でねじ伏せろよ。そうしないと、俺たちは倒れない」


 絶対に。今はまだ耐えれる剣技。だから受け止められないほどの剣技が来ない限り、死ぬことは絶対にない。


 「そう。なら、そうするしかないね。傷は負いたくなかったけど、いつまでも耐えられると困る。忍耐力だけは褒められたものだよ」


 斬撃の速さと威力が上がる。視覚で判断するには難しいほど。私は即座に感覚を頼りにし、目を閉じた。生命体である以上、存在感は誰にでもある。それを気取ることに重きを置くのだ。


 しかしその瞬間だった。背後にその凶悪で邪悪で悪辣な存在を感じたのは。


 「くっ!」


 ミスったと思った。視界を閉ざして感覚へ移行する瞬間。それは一瞬だとしても、この場で最大の隙だ。それを見逃さなかったラランは、目を閉じたのを確認すると私の背後へ回った。対応が遅れる背後に。


 「さようなら、偽りの最強さん」


 絶対に間に合わない。未だ振り向く私の目には、振り向き終えると死を迎えるのが本能的に分かった。今まで感じたことのない最期を目下にした死。恐怖を感じた。


 「蓋世心技・剣」


 「――はっ!」


 突如聞こえた声。私に迫る刀を風圧で横にずらし、ラランの剣技でもなんでもないその突きは空を切った。誰の剣技か、それは響く声音で分かった。


 「マジ……?なんで……」


 予想外過ぎてラランも驚きの様子。その先に見える1人の剣士がしたのだと、どうしても信じれないらしい。私は出来た隙を見逃さず、ラランから距離をとって、無尽万象の攻撃範囲から逃れる。


 「危なかったね」


 「助かった、ありがとうフィティー」


 同じく無尽万象を耐え抜いた、リベニア最強の剣士。私とほぼ同格まで育ったその力は、この戦場でも遺憾なく発揮する。驚きだ。私でも血を流したのに、フィティーには流れていないのだから。


 「私の左目で、ラランの動きは先読み出来るから、多分サポートは出来る」


 「そうか。どこまで読める?」


 「5秒先の未来かな。集中すればそこまでいける」


 「凄いな」


 それはもう未来予知能力だ。御影の地で強化されただろう異能力は、察知能力に長けた人工的な力と合わさって更に万能な力を発揮している。


 これならもしかしたら……。


 「本当はイオナが見つけてくれるまで戦闘を続けるつもりだったが、そんな必要も無くなった。俺に策がある。合わせてくれるか?」


 「もちろん。未来が分かるからね」


 「いつでも蓋世心技を使えるようにしててくれ」


 「了解」


 二刀流も見せた。死ぬかもしれないとも思った。なら、これ以上何を隠そうか。最強の名を背負った剣士の、最強を見せよう。イオナが認め、イオナにも勝てる可能性のある、私の底の実力を。


 「まだ何か策があるの?諦めない根性だけは据わってるね」


 「そうだな。死にたくないから当たり前だ」


 ホルダーから刹那刀を取り出す。右手のオリジン刀を左手に持ちながら、右手で刹那刀の柄を逆手に持つ。


 「だから、俺も自分の名に恥じないよう、引き継いだ名と共にお前を殺す」


 陽炎の剣士といわれた所以。人間が出せる限界の気派を超え、殺気と共に漏れ揺れる。体全体を丸く包むそれらは、剣技を弾く。耐えられる力量は決まってる。けど、ラランはエアーバーストを持つ私よりも、更に上の気派を扱える魔人ではない。だから、打ち破られない。


 「蓋世心技・滅」


 その刹那刀を全力で、予備動作なしに投げる。音速でラランへ向かう刹那刀は、カタカタと揺れながらも、僅かな距離を詰めていく。


 「邪魔。無意味」


 それを余裕の表情で弾き飛ばし、何事もなかったかのように火花を散らせた。が、その時には私とフィティーは、ラランの前から消えていた。


 「……面倒だな……これだから人間は……」


 隠密に長けているから、私は気取られない。フィティーは存在感こそあれど、気配の消し方をその異能力で高めているためバレない。少しずつ、両側から距離を詰める。


 「我流剣術・無尽万象」


 開けた森の中に円形の広場。そこに立つラランは、左右に剣技を飛ばす。次々と木々はなぎ倒され、威力は静まることを知らない。

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