第十九話 国務任務代行
「書物の内容って一体どんなものだ?」
聞くべきはそこ。書物の内容を悪用して殺したのなら、どういったものかを先に知っておくことが鍵になる。別に知らなくても勝てるがこの王国では特に、絶対はないのだ。
「剣技。それもレベル5を極めた者にしか扱えない剣技だよ」
「ふーん。レベル5を極めた者にしか扱えない……か。別に大したこと無さそうだけど、調べたとこではどこまでの危険度が?」
「4ってとこだね」
4とはヒュースウィット王国における危険度を示したもの。最大が7まであり、対応できる剣士の部類もされている。
4ならランキング付けはされていないが上位守護剣士でも対応可能。そこまで難しくない任務のようだ。
「でも今後6まで上がる可能性があるからそこは頭に入れておいて」
「へぇ、了解」
6は上位神託剣士か神傑剣士だけにしか対応不可の危険度。最近はあまり聞かないが、勘で近々聞きそうな気がする。今聞かされてるのも含めて。
「暗殺したらそのまま帰宅で良いのか?」
「構わないよ。後始末はしなくていい。公に知られてくれれば抑止力にもなるから」
殺して帰るだけだがこれがまた大変なのだ。一対一にできるのならいいが……。基本何があっても俺はバレてはいけない。しかし例外があって、これから殺す人間に対してはバレてもいいことになっている。
とはいえ隠れることが苦手な俺には貴族家に侵入して暗殺なんて虚空無しでは不可能だ。ルミウなんてほとんど暗殺の任務でそれを難なく遂行するから尊敬をしている。しかも虚空は使わない。
天才ってやべぇ。
「了解。よし、これから行こうかな」
早めに終わらせて早めに帰宅する。
そしてルミウを手伝う。もうここ最近ルミウルミウって俺ルミウ好きみたいだな。そう思うだけで国民の男たちから視線で殺されそうだ。ルミウを取るなって。うー怖い怖い。
「明日でもいいのに」
「めんどうは後回しにしないタイプだからな」
ホルダーを確認する。使用する刀を確認するためだ。いつも3本収めているがちょうど1本、黒真刀をニアに渡しているので現在は2本だ。二刀流ではないので1本で足りるが予備は必要だ。
「あ、フィート男爵はプロムなのか?」
ふと気になった。俺らに国務として探らせている内容とルミウに任されたこの国務。暗殺とはいえ関係していないこともなさそうだった。
「私が調べたとこでは可能性は低いかな。でも確定じゃないし低いだけ。そこも頭に入れておくといいかもね」
「聞かなければ良かったな。なんか当たりそうなんだけど」
「そうなったら私より君が担当で良かったと心底そう思うよ。どうせ失敗しないんだからいいでしょ?」
「これでケガして帰ってきたら、最悪の国務だったって心底そう思うよ」
神傑剣士の任務達成率はこれまで100%だ。誰1人として失敗はしていない。
ちなみに国務と任務は少し違う。国務は直接国王に任される国の表の運営を捗らせることに対して使う。任務は直接国王に任されることもあれば、同じ神傑剣士に任されることもあり依頼主が居れば成立し、主に国の裏の運営を捗らせることに対して使う言葉だ。
国務は国民に内容を知られるのでルミウのように暗殺を任される剣士は表では嘘を付いている例外の1つだ。
国民にルミウの国務は貴族の統制を任されていることになっている。上手い具合に嘘ではないが、統制のやり方を聞かれたら困るだろうな。
「よし、テンランにはこのこと伝えててくれ。朝には戻ってくるし学園にもしっかり通うって」
「うん、分かった。しっかり伝えるよ」
「ありがとう」
怯える男たちに圧を加えてやる。ビビる様が面白くて癖になりそうだ。
どんな未来であれこの2人が死なない未来はない。俺の顔を見てルミウと会話するとこをしっかり見た。つまり俺が神傑剣士だとバレ、同時に公に知られてる11の顔と一致しないことから第7座ということもバレた。
そして2人は敵だ。さようならだな。帰ってきたとき居なくなってたらそういうことだろう。
まじでドンマイ。俺も殺したくて殺してるわけじゃないんだ。敵になったお前たちが悪いんだからな!
王城にはまだ陽の光が届く。身バレ防止のためじっくりと見回ったことはないのでいつか見てみたいと思う。2ヶ月半後の一騎討ちで勝ったその後になるだろう。
3ヶ月と言っていたのがもう2週間前なのかと時の流れを早く感じ取る。そうなったのもおそらく国務のおかげだな。
「よし、今日は制服を着たまま戦うか」
初めて任される国務にワクワクしている。だから普段着て活動しない制服を着るなんてバカなことをしようとしている。でもまぁどうせ戦う時にはバレるんだ。最初から神傑剣士とバラすのもありだろう。
カッコいいことに憧れる年齢の俺は、思い描くことを思い通りにできるほど力を持っている。
だからカッコつけたってありだよな。周りからは絶対に引かれるけど。
こんな言ってるけど何年後かに思い出したら恥ずかしくて土に潜りそうだ。
そんな俺だが実力を鼻にかけることはしない。悪用もしない。それだけは絶対だ。神傑剣士はこの国の象徴。そんな存在が国民を陥れることはあってはいけない。
俺は王城を出るとすぐに抜刀。忠誠と遂行を国民に誓いすぐさま王城を後にした。
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