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第百六十二話 疲れに違和感




 実力が全て、と、まとめていうと語弊がある。正確には人をも制する力がこの世界では全て。剣士として長けていたとて、知略の結果死ぬのならそれは剣技世界でも敗北であり、理通りに負けとなる。


 結局その場に勝者として立っていたら勝ち。そんな世界だからこそ、俺は強者で居られる。この世界で最も強いものは、剣士だから。


 「俺からの話は以上になる。お前たちの再建に興味はないし、紛い物を入れ込む気もないだろうから、ここらでお暇させてもらう」


 邪魔なら消え失せる。サントゥアルに関与し過ぎると、難癖つける輩しかいないこの貴族たちに、なんと言われるか。力を見せつけたことで、何かで押されることはないだろうが、賢くない俺には対応は難しい。


 だからと言ってルミウやラザホに知恵を借りても申し訳ない。同罪にしてまでも、解決したいとも思わないしな。


 しっかりと自分の契約内容を伝えて、これから先、あの老いぼれたちが確実に残りの民を導くことを信じる。一応助けたという点では、最後まで守ってやりたいとは思う。が、それでは5000万の善人王国(ヒュースウィット)の方が疎かになる可能性がある。


 増えるなー面倒が。


 「俺はこれから支援物資の確認に移る。お前は?」


 「何も。そこらの見回りにでも行こうかなって。特別することもないし、鍛練っていっても出来る環境と情勢でもないからな」


 「それもそうだな。そんじゃ、俺はここで」


 「ああ」


 救援という形で来たラザホは、嫌でもサントゥアルの手助けをする必要がある。それもまた違った意味では契約だ。無償で助けることが、どれだけ多忙なものか。


 神傑剣士の力としては、これらを容易に動かせるほど権力はあるということ。凄まじく、だからこそ使う人はそんなにいない。


 依頼したのは俺みたいなものだし、手伝うか……?


 復興してくれれば、俺の名は後世に残るだろうか。魔人を撃退した他国の剣士として。いや、それを許すほど、優しさと力に溺れない貴族ではないか。


 心のケアも身体ケアも出来ない俺には、亡くなった家族に慟哭する人たちを慰めることも、致命傷を負って瀕死な人を助けることも、もちろん出来ない。


 崩壊した家を建て直すことだって器用さはない。刀を抜けば有力であり、最大の力を持つ。だが抜けない状態、状況では無力。笑えるほど情けない。


 これなら頭を良くするために真面目にフリードに通ってれば良かったと、今更ながらなことを思う。戦略をはじめとした、基礎知識。それらを得れれば、今よりは少し強くなれていたかもしれない。


 「……何を考えてるんだろうな」


 疲れているからか。戦闘以外では疲れない俺が、精神的にも肉体的にも疲れることは考えにくい。思い違いか、若しくは似た何かが勘違いされているか。


 とにかくボグマスと出会ってから、謎に……いや、まぁ、疲れを少しずつ感じている。何とかしなければ、とは思わない。魔人は攻めてこないし、この状況で犯罪を犯す者はヒュースウィットの剣士たちの抑止力で無いから。


 何よりも疲れの理由はいずれ消えるだろうから。


 「元気無さそうだね。心の底からの愛の包容とキス、ついでに初めてもあげようか?」


 「……シルヴィア」


 そんな俺を見つけるのはルミウの仕事だったのだが、今日は珍しくシルヴィアとばったり出会った。いつもの調子で、暇さえあれば近寄ってくる。


 魔人にも恐れられそうな笑みと、先を読めない行動。そもそも気派が読めないという、俺の中の例外でも特別例外な存在。


 「珍しいじゃん。どした?」


 「ボグマスが思ったより弱かったから幻滅してな。魔人の中でも猛者って言ってたから警戒はしてたんだけど、全然弱かった。だからムカついて、その結果今に至るってわけ」


 御影の地では本来の力を出せると聞いて安堵したが、それでもあの場で10割、本気を出していればあっさりと決着はつくはずだった。


 それが信じられず、今は少し見えた御影の地での結末が、残念に感じて気負いしてるってとこ。彼らの全力が俺を凌駕してくれるなら楽しむ理由は出来る。いつから魔人の殲滅から猛者と戦いたいと思うようになっただろう。


 「イオナにしか言えないことだね。相変わらず敵なしか」


 「シルヴィアを除けばな」


 「いやん。夜の敵ってこと?」


 この性格は波があまりないから助かる。元気を貰えるし、いつも通りってルーティンが出来るから、気分転換に最適。


 「違うなら忘れてほしいんだけど、俺の睡眠時間に何かしてるか?」


 夜の敵という言葉から、最近俺の10分という睡眠時間で、毎回口周りが舐められたように濡れ、服がシワだらけになっていることがある。


 基本全員が睡眠している時間で俺もベッドに入るので、可能性がとしては俺の唾液と寝相の悪さなのだと思っている。だが、以前同じことがあったがために、疑っている。


 「イオナの寝る時間を調べて、その時間に起きて欲を満たしてるよー。それがイオナの言う、何かしてる、ならしてる」


 「……やっぱりか。毎回起きたら口の中と周りに違和感あるから止めてくれ」


 「三大欲求は大切なんだよ。処理しないと」


 解体されないだけましなのかもしれない。不快なのは若干。慣れればそこまで気にすることはない。ただ洗面所に起床して最速で向かう程度だ。

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