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第百五十話 救援要請




 「――ってことらしいけど、誰が救援に向かうの?」


 統制はやはり第10座。お姉さんの役割は担ってしまうのが定めらしい。


 イオナが紋章を渡し、大貴族ディクスが門番に伝言と救援要請をしたその日、真っ先にそのことを耳にしたシュビラルト国王は、再び神集(ユリフォン)にてヒュースウィットの神傑剣士を集結させた。顔ぶれも星座も変わらない。未だ約束は破られていない。


 円卓を囲むのは第1座、第6座、第7座を除く9名の剣士、そして1名の国王。3人も神傑剣士が抜けたのにも関わらず、多忙となることはなく、神託剣士ですら暇を持て余すほどの安寧には、聞けばイオナも驚きのレベル。


 そんな最強剣士団は救援要請について、真剣に、いや、いつも通り緩めに話し合いを進めていた。


 「誰がって言ってもな。正直この時期は誰も忙しくねーし、誰が行っても結局は変わらないだろ」


 早朝なわけがないというのに、昼間から欠伸をしてはその怠惰の片鱗を見せる第2座メンデ・トゥーリ。


 「ジジイ。お前のその低脳だと支給品とかの配分がごっちゃになって逆に問題を増やすだけだろ?お前は行けないランキング第1位なんだよ」


 「はいはい、30になったばかりのババアは、色気もなく神傑剣士の座が伴侶とか言い出すほどにイカれてんだから黙ってろよ」


 第8座ボーリ・エイルは2ヶ月前、30という節目の歳を迎えた。メンデとは1つ違いである。喧嘩はいつになっても絶えない。


 「私は?私が行こっか!最近暇してたし、ルミウとイオナにも会えるんでしょ?魔人も居るかもしれないし、久しぶりにはしゃげるかも!」


 この中での最年少。シウム・フォース。空気の読めないゴリ押しの元気は、かつてルミウ・ワンを呆れさせた上で若干気落ちさせるほどだった。今では落ち着いたようだが、それでもパワフルな女の子感を拭えない。


 「君にはやるべきことが残ってるだろう?それも神傑剣士唯一」


 「国務でしょ?面倒だからやりたくなーい」


 国王も、唯一この性格に負け、許したくないほどの手負いっぷり。注意に正面から性格を貫き通して勝つとか、ある意味神傑剣士として相応しい。


 「妥当なのはノーベ、ファイス、ハッシ、私、ダムスの5人だと思う。そもそも救援要請の細かな内容によって人が変わるからね。もし戦闘要員ならノーベとファイス、サントゥアルの国民に対しての物資要員ならハッシ、私、ダムス」


 「魔人がまだ残ってるならこうして曖昧に救援要請は出さないと思うから、多分物資に関して、若しくはプラスでサントゥアルの国民を助けるってとこでしょ」


 テンランの考えにダムスは答える。第11座ダムス・レブン。天誅の剣士という異名を持ち、主に犯罪組織を排除するための国務を任される。27歳だ。


 「確かに。イオナくんたちなら魔人は倒してるだろうし、流石に魔人とて、サントゥアルを御影の地にする考えはないだろうからね。今は多分引いて、壊滅させた王国はそのままだと思う」


 「お前らなんで勝手に俺たち省いて話進めてんだよ」


 「そうだそうだ!」


 「なんで私も選択肢に含まれてねーんだ!テンラン!」


 「……うるさい。それが原因なんだよ。黙っててほしいものだね。あくまでもこれはサントゥアルの国民を助けるための指揮官選択。日頃から神託剣士の指導を怠る君たちに任せられるわけがない」


 トリオを静めるのは苦労する。テンランとて、魔人と戦うだけならこの3人も選択肢に入れていた。だが、考えることとは国民をどうするか。


 ヒュースウィットに引き入れてもありだが、それはサントゥアル国民として頷き難い。それに、そのまま国家を放置することもよろしくない。再建となるが、それらを可能とするほど生きていることを願う。


 選ばれなかった中で唯一静かに見つめる、何もかも気だるそうなレント。早く終わらないかとこの場を見つめる保護者的立場である。


 「私的には誰でも構わないと思うがね。1人1人それなりに苦難を乗り越える力を持つ剣士たち。誰が向かおうと、君たちが最強コンビと慕う2人には喜ばれるべきことだと思う」


 長年、このメンバーならばメンデが神傑剣士として就いた時から知る国王だからこそ、誰よりも才能について知る。天才として認めるから、人を選ばずとも任務を達成するのだと。


 それに、最強と名高い2人を信じるから、誰でもいいが答えになる。何も懸念点はないのだと、笑顔で会議を見守るシュビラルト国王。


 「ランダムにクジでも引いて決めるか?俺らじゃ決まらないし、全員の投票なら自分に入れて意味を成さないだろうからな。どうせ、あいつらに会いたいからって不正をすることも見えてるし、運に引かれた者が勝ちで」


 「メンデにしては珍しく面白いこと言うじゃない」


 「老いぼれは体を使うことより頭を使うことにシフトチェンジしたのか。中々いい案だなぁ」


 「こいつホントに飽きねーな」


 こうして決められた救援要請に応える人。ヒュースウィットからは守護剣士800名、神託剣士10名ほどの民が救援に向かう。その指揮官となるのが、神傑剣士となるわけだ。


 主に食料。その他生活用品を支給するということには決められている。サントゥアルは崩壊寸前とはいえ、国民は王城を除けばまだ大勢残っている。到底満足するほどの物資は運べないが、それでも少しは落ち着くだろう。

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