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第百三十九話 リベニアの今後




 翌日、落ち着きを取り戻し、日常生活に戻って来た俺たちは、新たにこれからの目的について話し合うことになった。そのためにいつものメンバーに加えてブニウも参加している。


 「話は聞いてる通り、サントゥアル王国が崩壊寸前まで魔人に追い込まれたってことだが、俺はそれが御影の地への大きな手がかりになると思っている。だから俺はルミウとシルヴィアを連れて5ヶ月程度の調査に新たに向う。その間、リベニアの防衛と調査はブニウとニアとフィティーに任せようと思う」


 「それまた急な話だね」


 動き出しが早いと、フィティーはその碧く先を見越す異能を持つような、異様な双眸を向けてくる。実際は白黒の眼にしては、異能のような能力を持っているが。


 「早ければ早いほど最近のサントゥアルについて知れるし、未だに魔人が残っている可能性もある。ならば早いに越したことはない」


 「私はリベニアの王族で、王の失墜を確認してる以上は他国へ出向くことは無理。ブニウ様も、既にリベニアの神傑剣士の代わりとしてこの場にいる。でもニアは置いて行かなくても良いんじゃない?」


 「私は構わないよ。フィティーの刀を製作可能なのも、ブニウ様の刀を製作可能なのも私だけだから、ついて行くより残る方が得策だと思う」


 先天性の固有能力を持つからこそ担える仕事。唯一無二の強制的に相性抜群にする力は、どこに居ても必要となる宝物だ。それは専属の刀鍛冶が居ない時や初めて刀を握る人にとっては重要視される。


 それを知るからこそ、自分が選ばれなかった意味を考え、残ることに反対せず頷く。悪いことをしたと思うことは多少あれど、最善の判断であることは否めない。


 「だそうだ。ブニウも1人で来たようだからその点に於いては助かるだろ。そもそも神傑剣士が刀を折ることは稀だから、気にするほどのことではないのも確かだろ」


 「まぁね」


 物は何であれ劣化する。しかしそれは使い手によって期限を決められる。1年でも2年でも、刀鍛冶の才能と相性が合えばさらに。


 折ることは剣士として恥じること。刀鍛冶は自分の最高のパフォーマンスを引き出す相棒。何1つとして悪くはない。それを折るほど実力不足の己が全て悪い。


 まぁ、神傑剣士になってから今まで同じ神傑剣士の刀が折れるのは1度しか見たことないけどな。


 「2人の準備が整い次第向かうことにする。その他のリベニアの問題については、フィティーの指示に従うのが妥当だ。一応伝えるが、ここの国王は魔人と裏で繋がってたらしい。繋がる理由と経緯は聞いてないが、確かなことなのは変わりない。だからそれらを踏まえて、国王の命令には必ず背け。そして正しいと思う自分の判断に身を委ねる方が賢い選択だぞ」


 「なるほど。だから昨日はあそこに居たのか」


 「予想はついてたけど、本当とはね。中々面白いからここに残って調査ってのもありだったかも」


 もちろん神傑剣士は驚く様子もない。予想的中や予想外の出来事が起きたり、何であれ、人前で驚くことは滅多にないのは当たり前。だが、普通の人間なら国王が魔人と繋がりを持つとなれば、信じられないと思うのが当たり前らしい。


 左側に座るルミウとブニウは考え事をするように眉を寄せるが、右側に座るフィティーとニアとシルヴィアは何を言ってるのか分かってない様子。


 目を細めて眉を寄せ、顔を顰める姿は全員が同じ。それぞれ黒と黄金と赤の髪から艶を放ち、少し動かせばフワッと香りを運びそうな、それほど美しい三色だった。


 「3人はそこらへんの話はブニウから改めて聞いてくれ。今は俺たちのするべきことを優先して実行する。情報によればサントゥアルが襲撃されたのが2日前。ならばまだ全壊までは到達してないはずだ。悠長にしてられるほど余裕はないからな」


 「……それはいいけど、面倒が増えたような気がする」


 「王女としては面倒だな。国王が実は敵でした、なんて国民に聞かせられる話でもないし。だから今からでも国について知ることは必要になる。今は生かしてるが、いつかは殺さなければならない相手だ。遅かれ早かれ王座に就くのはフィティー、お前だぞ」


 今までも何度かフィティーが王座に就くことについては話を繰り返してきた。その度に心の中では、私でいいのかと悩むような懸念点を抱いていた様子。


 実際好かれているとは言い難いこのリベニアでの立ち位置が、一瞬にして変わることなんてありえないだろう。それを覆すことは、平民が王座に就くほど難しい。だがそれは、なんの成果も無く、王族としての肩書だけがあるのならばだ。


 それをひっくり返すのならどうするか。そんなの、名を響かせれば良いだけだ。


 「現国王の悪事をばら撒いて衰退させ、そこから剣士としての才能を磨いたことを証明する場を設けるなんてのもいいと思うぞ。もちろんその他のやり方だっていくらでもある。だが少なくとも今は、好きなやり方でなくてもこの王国を変えるべきだと俺は思う」


 悪事を働くことはいつかはバレる。公に出ないのは権力故だろうな。


 「結局、御影の地で証明云々よりも先に片付けないといけないってことね。別にいつであろうと構わなかったけど、その話が本当なら早い方がいいのは同じ意見かな」


 「ホント、問題だらけだね。この王国を逆に気に入ったよ」


 全ては国王の成り行きからか。不幸に包まれるこの王国も、ルミウの言うように、逆に気に入った。

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