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第百二十五話 訪問者




 リュートとマークスを始末した俺は、ルミウとともにニアとシルヴィアを目覚めさせてから王城内へ急いだ。途中で今回の件について色々と話したが、まだ俺が隠し事をしていることを気にしているようで、キリッとした目を尖らせて拗ねていた。


 リュートに関しては当然の報いであり、最期に相応しい死に様だった。結局は魔人とはいえど、俺の8割以下で死へ誘えるなら少しは安心だ。正直、8割と全力の差は天と地だからな。


 気になるのはマークスだ。おそらく長年魔人として生きてきたのだろうが、それでも俺の前では死を覚悟するほどに弱かった。俺はそこまで力を持つ者だとは思わないが、勘違いしてしまうほどには手応えがなかった。


 言われれば、8割でマークスと対峙した際、本気というものを出していないようにも思えた。死を選んだとは言いにくいが、それでもそう思わないと慢心してしまいそうだ。


 そこで俺は1つ思った。もしかすると、御影の地を出ればそれだけ力を制限されるのではないかと。一理あるとは思っている。恐れられる魔人という存在が、魔人の中でもトップレベルの強さを誇るだろうマークスが、こんな呆気ないとは思えない。


 ならなんでここに来たかってことだよな。俺の力量を測るためなら死を選んでまで来ることでもないだろうに。まぁ、魔人側の気持ちなんて分かりたいとも思わないけどな。


 そんなこんなで、俺たちは王城前までやって来た。門の前に4人揃って立っているが、ここからでも分かる。騒動は沈静化されたのだと。騒ぎ立てる様子は無いし、周辺に人がだんだんと戻って来ているとこを見るに確実だろう。


 「ホント、傷が無くて良かった」


 安堵する俺は、改めて2人に傷が無かったことを不幸中の幸いだと思う。あいつらなら少しぐらい痛めつけることもあるとは思っていた。俺の性格を知っていたのかもしれない。キレたら手に負えなくなると。


 「イオナこそ」


 ベタッと腕に絡みつくシルヴィア。それとは反対に、ルミウに背負われて疲れた様子のニア。どちらも安心する顔が見れて幸せだ。


 「流石ですよね。先輩は戦ったっていうのに傷無く生きてるんですから。相手が魔人だなんて信じられないですよ」


 「運が味方してくれただけだ。2人が無事なのもな」


 あいつらが善意で生かしてやったとは思えない。だが、それなりにリュートは人としての残り物を持っていたのかもしれない。殺人だなんて、本当はやりたくなかったってな。


 なんにせよあいつのしたことは結果的に死を生んだ。それを分かって人間をやめて、別の動く屍となって生まれ変わった。なら仕方ない。


 4人全員が無事で帰ってきたことに一息ついていると、中から今まで1人で何もかもを耐えてきただろうフィティーが、疲れを感じさせない顔で出てくる。


 「おかえり、4人とも」


 「ああ。ただいま」


 フィティーも無事であり、王城内で戦闘は無かったようだ。見たところ荒れているところもなく、逃げ惑う人たちによって倒された王城内のオブジェクトも、今ではすっかり直っていた。


 「早速だけど、みんなも知るお客様も来てるから、会いに行こう」


 「お客様?」


 「うん。私も驚いたけど、それは会ってからのお楽しみっていうことで」


 「……嫌な予感しかしないな」


 その予想は的中するものだ。何度もこの感覚を味わってきて、ハズレたことは全く無かった。俺に害のあることではないのだろうが、それでもこの気持ちになるということはそういうこと。


 「とりあえず付いてきて」


 どうせ遅かれ早かれ会うことになるなら早めに済ませておく方がいい。悪いことでないならなおさら。


 俺らは言われるがままにフィティーに付いていく。気配的に誰とは特定出来なくても、そこには相当な猛者がいるのだと確信はしていた。おそらく神傑剣士だろう。ならば知る相手となると、限られてくる。


 これで神傑剣士じゃありませんでした、なんて言われたら今すぐ神傑剣士に入れ替わりを求めた方がいいだろうな。


 そして付いていくこと2分程度。俺たちは入国時よく使っていた客間に案内される。久しぶりに来たが、ここでは色々とお世話になったものだ。


 フィティーの話を聞いたのは全てフィティーの自室。だが、剣技の基本や気派の基本、立ち回り方などの知識的に入れておいた方がいいことは、なぜかここで行っていた。


 俺らを客人として扱っていたので問題こそなかったものの、そもそもこの客間が客間としての意味を成してないようで、使われることはほとんどなかったらしい。


 意味ねーじゃん。


 そしてついに、その客間の扉を開く。すると俺はその対象を目にして、すぐに忠告する。


 「シルヴィア、離れた方が身のためだぞ」


 俺の腕にガシッと掴んだまま離れようとしないシルヴィア。別にそれはいつものことで、この時は火事場の馬鹿力並みに永遠と力が強まるので離すことも出来ない。


 なら何が問題か、それは当然俺らを待つと言われる客人に見られることだった。まだ視界に入れていないほど刹那の空間。ルミウもそれに気づいたか、目を若干細めると俺を見てくる。


 これに関しては俺は全く悪くないし、何をしてそんなに睨まれるように見られるのか理解に苦しむ。


 ルミウの背中から誰かと覗こうとするニアの姿は愛おしい。が、その相手を目にすると口を開いて言葉を失う。これでも治った方なんだが、やはりヒュースウィットの神傑剣士は偉大なだけあり、驚くのは当たり前だった。

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