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第百二十四話 気になること




 増えた屍はどれもこれも手応えが無かったかのように不満気。苦戦をすることもなければ、楽しそうに戦えるほど強かったわけでも無かったのだろうか。なんにせよ、悉く鋒で受け止めるなんて、未来が見えてないと出来ないことを容易にやったのだから驚かざるを得ない。


 いや、未来が見えていたとしても、そこをどう受け止めるかなんて確実なとこでないといけないため、どれほど天才的で驚異的だったか伝わってくる。


 これが我らが誇る最強の存在。結局は8割なんてどこで出したのかすら分からなかったが、改めて身を以て証明されたその実力に、追いつけないと知らされたのはいい収穫だったかもしれない。


 そんなイオナはすっかり元通りになって、私に話しかける。


 「こいつらはここに置いておく。フィティーのとこに戻って状況確認と、このことを伝えるぞ」


 切り替えの速さも相当なもので、冷酷さなんて当たり前のように消えており、少し笑顔すら見せた気がした。もしかしたらこの笑顔は、いい意味を成してないかもしれないが。


 まぁ、少しくらいはそんな気持ちでいいと思うけどね。


 「分かった」


 「2人はまだ起きないのか?多分マークスが倒れたなら、その分早く起きると思うんだが」


 「ん?どういうこと?」


 「マークスの気派で気を失わせられたようなものだからな。目立った外傷はないし、気を失う要因になることは気派以外に考えられないんだ。波長を真逆にずらして送り込んだんだろ。そうすれば流れ込む分だけで気を失うなんて簡単だからな」


 なるほど。だからイオナはあれほどまでに憤りを顕にしていたのか。正直リュートよりも敵意を高めて殺しにかかるのは不思議だったが、2人を気絶させていたと知っていたなら、それは納得だ。


 ということは、リュートに出会った時からマークスがそこに居たのは知っていたということ。そして要因がマークスであることも。


 ……全てを知った上での戦闘か。私には気づくことすら出来なかった。本当の天才とはこういうことを言うんだろう。


 「顔に水でもかければ起きるだろ」


 そう言って噴水に向かおうとする。力技で解決しようとするそのめんどくささと、対応の悪さはいつでもバカとしか思えないのが変だ。本当の姿であるだろうから余計に。


 戦闘中は賢くなるってことか、それともなにか条件があると賢くなるのか。分からなくても、イオナは才能があることには変わりない。


 「私が起こす。波長を気持ちいい程度に戻すよ」


 「流石はエアーバースト。どこでもスペシャリストだな」


 「まぁね」


 褒められるといい気持ちだ。私は単純な女ではないが、素直にイオナから褒められると気持ちが昂る。ライバルに認められるのは成長へ繋がると言うしね。


 「そうだ。8割って言ってたけど、本当に8割だしたの?」


 起きるまでの間に気になることは聞いておく。時間は有限であるため、有効活用しなければならない。今ならなおさら。


 「もちろん。相手が弱いと、見てる方もそれは感じないだろうから、8割に見えなかったのも仕方ない。ルミウとなら全然8割で戦うぞ」


 「遠慮する。実力差を確定したくないからね」


 あれが弱いと言えるのはきっと一握り。魔人に苦戦するのが当たり前の世界で、それを超える珍しいタイプの猛者魔人を弱いなんて、言う人が違えば冗談と受け取っていた。


 「そうだな。正直俺もそれはある。だから今まで7割弱で戦ってたしな。他人の成長には僅差が必要だからな。誰かのために自分を偽ることは良くやることだ」


 「でも結局こうなったから、全力でも良いんじゃない?」


 最大のライバルが足元程度の実力しかないのなら、もう意味はない。全力で相手と戦っても、それが及ぼすことは私の成長ではなく、敵の殲滅。


 優しさ故に私を気遣ってくれていたようだが、まさかこんなにも差があるなんて。この世界は面白いものだ。


 「俺が全力を出したらホントに面白くなくなるぞ。それに、御影の地でしか出さないって決めてるからな。ってか俺がここで全力を出す相手が出てきたら、それはそれで問題だけどな」


 「確かにね。でも本気を見てみたいとは思うよ」


 「そうだな。後少しってところだ。フィティーもそれなりに強くなってるしな」


 御影の地へ行くため、鍛える期間もそろそろ無くなってきた。それほどまでに力をつけるフィティーは、この王国を背負えるほどに強い。何年後かはここも変わってるだろう。


 「ところで、リュートとマークスに最期言ったことってなに?よく聞こえなくてさ、同じことだとは思うんだけど」


 今までで1番気になること。剣技や力をどれほどまでだしたのかよりも、何故耳元で囁くほど小さな声で伝えたのかが気になる。絶望へと誘うならば2人はもっと顔を歪めただろうが、私の見る限りは笑って死んでいった。


 ならばそうさせるほどの言葉を言ったはず。いいことを伝えたのか、絶望すぎて笑うしかなかったのか、どちらにせよ気になりすぎる。


 「ルミウに聞こえないように言ったんだ。だからそれを聞かれたら良くないことだな」


 「……隠し事ってこと?」


 「おいおい、そんな拗ねるようにメンヘラ化するなよ」


 「してない。でも君が隠し事なんて今までで前例がないから」


 「なら今回が初だな。どうせいつか知ることになるんだから、そんなに急いで聞くことでもないぞ。それに、悪いことじゃないしな」


 それは分かってる。でも今日のイオナなら不思議なことが起こっても不思議に思わない。だからこそ、余計に気になるんだ。

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