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第百十三話 王城襲撃




 ウェルネスを倒し、フィティーの成長に繋げる機会として上手く立ち回ることが出来たと言える今日。私たちは揃って王城に戻っていた。


 マークスは再び行方不明。本当に1人で行動するのが好きな変人なのだと、改めて分からされる行動だ。今どこにいるのかすらも分かってない。


 王城付近に来たのだが、私たちが出掛ける前よりも、どこか王城内が騒がしいように見えた。外からであり、中がどれだけのものかは目で見なければ把握出来ないが、曖昧にでもこの騒がしさは普通ではなかった。


 とにかく確認が必要だろうということで、私たちは疲れを少し体に残したまま走って王城内へ入る。


 そして中に来て分かった。これは何かから逃げているのだと。悲鳴も聞こえるし、ところどころ壁や天井が破壊されているとこを見るに並の剣士ではないだろう。


 「これ……何があったんだ?俺たちがウェルネスを倒しに行ったタイミングを狙ったわけでもないよな……」


 珍しく、考えるように今の状況を整理しようとするイオナ。普段、私に情報処理を任せるからこそ、余計にこの状況に対する心配度が伝わる。


 王城内は仕事の関係で数多くの人間がいる。中には神託剣士だっているというのに、それでもどうにか出来ないというのなら、それ以上の力を持つ者がそこにはいるということ。


 それらを知るために、フィティーは落ち着いた様子で近くを走る男性を捕まえる。ここで焦りを見せないのは王女として素晴らしいことだ。


 「あの、これは一体どういうことですか?何故逃げるように走るのです?」


 男性は今にも逃げ出したかった。1秒でも早く。だから振り払おうとした腕には相当な力が込められていた。が、それを微動だにせず、鍛え込まれた18の女性とは思えぬ力でフィティーは離さない。


 男性は答える方が早く解決出来ると考えを改めると、すぐに口を開いた。


 「魔人が現れたんです!それも強力な!」


 「魔人……どこに?」


 魔人が存在すると耳にすると、イオナはその瞬間にサウンドコレクトを放つ。ここに来て捉えた微かな気派を頼りに、どこにそいつが居るかを確認する。この時の判断は私よりも早い。


 フィティーも魔人と聞いても動揺を見せない。少なからずこの王国に何かのプラスな気持ちはあるだろうが、それを遥かに上回る負の感情で相殺しているのだろうか。


 「私が最後に耳にした場所は……確か刀鍛冶の工房でした!」


 刀鍛冶の工房…………これは……大変なことかもしれない。


 それを聞いた瞬間に1つの気配が消える。そしてフィティーはそれに気づかず、まだ男性を離さない。


 「誰か対応に向かった剣士は?」


 「今のところは誰も向かっていないそうです!」


 「怪我人は?」


 「それは私の耳には入っていないので、なんとも言えませんが、多分工房の1番近くにいた私が無事なら全員無事かと!」


 「そうですか」


 ホッと確定していなくとも安堵の表情を見せる。この王国の王族として、国民が無事なことを国民から聞けるのは嬉しいことだ。


 それにしても情報は集まらないものだ。逃げているなら今もなおその場に留まり続けているとも限らないし、強力というのなら目で見て、もしくは聞いて、判断出来る材料があったということ。


 魔人とは久しぶりだ。喋る魔人も居ると言っていたが、本当なのか確かめれる時が来たか。


 「フィティー、もう聞くことはないから彼を早く離してあげて」


 「あっ、うん。――情報をありがとうございました」


 一礼して感謝を伝えると、男性は止められた時間を取り戻すためか、全力も全力でその場を駆けて行ってしまった。どこに行っても守ってくれる人がいないなら、私たちの横に居れば安心なのに。


 「あれっ、イオナは?」


 こちらに意識を割くことも出来ないほど、この状況に焦りを感じていたのだろう。


 「彼から工房に魔人が居ると聞いてすぐに工房に向かったよ」


 「そっか。なら私たちも急ごう」


 「そうだね」


 それにしても誰も相手にしないとは、この王国はどうやって平和が保たれてきたのだろうか。魔人が王城に侵入すること自体あり得ないが、それでも戦わないのは剣士として許されることではない。


 それが日常茶飯事でもあるまいし、魔人の対応ぐらい、魔人がどの王国よりも攻めてくる王国としてしっかり果たしてほしいものだ。


 この王国の剣士に呆れながらも、一歩ずつ確実に工房へ近づく。急いでいるので疲れた体には少ししんどいかも。これを一瞬で消えたかのように移動する体力と速さと、思いは、やはり最強らしい。


 魔人が何かの目的で工房を狙ったのならば、それはどうしようもないことを引き起こす火種だ。そして工房に居るだろうシルヴィアとニアに何かあれば、それはもう襲った魔人は絶対に生きることは許されないだろう。


 私は心の中でなにもない事を願いながら向かう。そうでもしないと、その場に着いた時にもしもがあれば、きっとその時は地獄を見ることになるのだから。


 そして向かった工房。フィティーも工房には2人が居ることは知っているため、必死に走っては息絶え絶えの様子。そんなフィティーと同時に着くと、そこには広間よりも荒れに荒れた部屋が広がっており、そのど真ん中に無言で立ち、何か紙のようなものを持っているイオナが居た。

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