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第百八話 始めよう




 ルミウ様に憧れて私も挑発をしてみる。ザーカスの性格上そういうのに耐性はなく、基本は見下す立場に慣れているからこそムカつきが人並み以上だ。


 「俺の相手をフィティーが?はははっ!笑わせるなよ。どれだけ俺をなめれば気が済むんだ――絶対にぶっ殺してやる」


 「相手にならないと思っているの?最終的に私が負けたとしても、それは計算済み。私は貴方を練習台にしたいだけだから」


 「練習台だと?」


 「私も剣士としてこの王国のために成長を遂げ、国民を守れるようになりたいから、そうさせてもらうんだよ」


 私はイオナと出会って変わった。当初は諦めかけていたことも、シュビラルト国王からヒュースウィット王国に最強の剣士がいると聞いてから、私は希望を持った。


 それから高みを目指して鍛錬の日々。何を言われようと挫けずにあの日出会った。そして毎日が日常とは変わり果て、覚悟も改めた。この王国を世界で初の――下剋上で王座を狙うと。


 「私は貴方と違って命を懸けてこの場にいる。だから貴方も命を懸けて戦って」


 成長のためには死を目の前にしなければならない。なら煽って煽って目の前が見えなくなるほど怒りに満ち溢れさせることで、私には絶対的な死が襲うだろう。


 負ける確率が高いのに、何故かワクワクする。変人なのかもしれない。


 「命を懸ける?そんな必要はないほど弱いだろ。見れば分かる。でもそんなに死にたいなら相手してやるよ」


 「良かったね。練習台がノリ気で」


 「うん。ルミウ様も気にしないで12人を相手にしてね」


 「もちろんだ」


 どこまでもネタを見つけて煽るルミウ様は少し子供のよう。でもそういうところが、ストレスのはけ口になっているかもしれない。イオナに何言われてもストレスに感じてないのは、そういうことなんだろうけど。


 ザーカスは抜刀し、いつでも来いと準備万端をアピールする。周りの剣士もそれぞれが構える。そんな中でルミウ様は刃先を1人ずつ向けていき何かを確認するように呟いていた。


 「0.0.0.0……」


 「何してるの?」


 「相手の私に対する勝率を測定したんだよ。もれなく全員可能性は無い。死への片道切符をプレゼントだね」


 「……怖いね」


 真面目な顔して遊び始めるのはルミウ様らしいが、遊ぶという点においてはイオナに似ている。強過ぎるあまり退屈しのぎを考えることには長けてしまった人らしいことだ。


 可能性がないと言われ、多くの剣士は怒りを顕にする。そしてそれが最高潮に達したとき、私たちの刀は抜かれた。


 「お前ら、楽しみはとっておかなくていいからな。俺は俺で楽しく遊んでやるから」


 「代わりに私の遊び相手になってくれるなんて優しいね」


 右手を左に下げた刀に添えるだけ。ホント、そういうとこはイオナと同じなのだから可愛いとこもあるものだ。


 「行け!お前ら!」


 ザーカスが声を張り上げ、今から戦闘が始まる。そう思われたが、一旦それが無に返されることが起きた。


 ドンッ!と天井から激しく何かがぶつかる音がすると、そこからボロボロと木が崩れ落ちる。するとそこから1人の敵と思われる剣士が途轍もないスピードで落ちてくる。地面に体が接触した時、剣士は既に息はしていなかった。


 すると出来た穴からその原因を作った人が顔を見せる。


 「ウィーッス。あれ、まだ始まって無かったのか?それならすまん、邪魔したな」


 空気の読めないとこは相変わらず。イオナが楽しそうに私たちを覗く。


 「お前は……クソッ!お前ら早く殺れ!」


 明らかにルミウ様を見る目と違い、絶望感を身に纏ったように一瞬震えたザーカス。第六感が捉えたようだ。あの世界最強の実力を。


 焦ったザーカスは手下を即座に動かす。行き先は全てルミウ様。これで退屈しのぎになればいいが。私は集中する相手を変える。


 イオナには喋る暇もなく、背後から次々に刀が向けられる。それを簡単に笑いながら弾き返すのだから見ていて気持ちがいい。もう遊びに入ったのだろう。これで助けが来るのは確実かな。


 「私たちも始めようか。殺し合いを」


 「俺らの目的が殺されに来てくれるなんてな。今日は安売りしてて良かった」


 「彼に怯んでたくせに、無かったことのように元気になってさ。恥ずかしいね」


 「ガキは口数多くて困るな。まずは腕一本飛ばすか!」


 「止めれるものなら!」


 始まる気を読み、私は左目に意識を割く。右目で動きを捉えるよりも、圧倒的に左目の方が効率的で確実。先読みが出来て、間違いもないのだから頼っても問題はない。


 むしろ今まで目に頼らず感覚で刀を握っていた癖があり、ザーカスよりも第六感は研ぎ澄まされ触覚も覚醒している。空間把握能力は誰よりも長けている私の長所だ。


 「極心技・珠玉灼熱(しゅぎょくしゃくねつ)


 上位火級剣技だ。炎を刀に纏わせるとそれを刀身の先に集め斬撃として飛ばす。私は主に風級剣技を使うため、珠玉灼熱は使えないが、防御は出来る。


 その場から動かず、高速に動かされる刀から次々と放たれる炎は、どれも往なすには細かなコントロールが必要になる。


 炎を刀だけで受け止めることは不可能。気派を纏うのが普通のであるため、私も練った気派でそれらを全て完璧なポイントで受け止める。


 喉や頭部、右腕を狙って放たれるとこは単調とはいえ正確性のあり、凌ぐには腕を顔の前で上下させる必要のある考えられた攻撃だ。

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